日韓関係:日本が韓国の「苦痛」に共感すれば解決するか?

 

今月8月は6日と9日の原爆投下の日と、15日の終戦記念日があるということで、太平洋戦争について振り返る機会が多い。
ということで東京新聞がこんな社説を載せている。(2020年8月11日)

<戦後75年>日本と韓国 歴史の「影」を忘れない

どこの国だって叩けば埃(ほこり)が出てくるもんだ。

アフリカの黒人をさらって奴隷にして売りさばいた。
他国に軍隊をおくって、民間人の物や命うばった。

そんな歴史の影や闇はほとんどの国が持っているけど、同時に光や誇りも大切にしないといけない。
そのふたつをどう両立させるかは現代的で世界的な問題だ。

 

 

東京新聞の社説は日韓の歴史に焦点を当てて、おもに日本政府の態度を問題視する。
いま日韓の間で最大の外交問題となっている元徴用工問題について、日本政府は「一九六五年の協定で解決済み」として韓国側で解決するよう訴えているけれど、それに対し東京新聞はこう主張する。

「法律や協定を理由に突き放す前に、当時の苦痛に共感する姿勢を示していれば、状況は変わっていたかもしれません。」

これと下の文章から、この社説で強調したいことが見えてるだろう。

・過去の経緯に立てば、日本がまず歴史に謙虚になる必要があります。

・足を踏んだ人は、踏まれた人の痛みが分からないといわれます。戦後七十五年が過ぎても、歴史をめぐってまた相手の足を踏むような行為をしていないか。立ち止まって考えたいものです。

「足を踏んだ」というのは、日本が朝鮮半島を統治していたことを指す。
これは日本=加害者、韓国=被害者という設定だから、日本がまず歴史に謙虚になる必要がある。
「踏まれた人の痛みが分からない」日本は韓国側が味わった苦痛に共感する姿勢を示せ、と東京新聞は言う。

 

なるほどなるほど。
ではそのやり方で、この問題はどうやって解決できるのか?

日テレニュース24(8/11)

韓国・釜山の日本総領事館前に設置されている慰安婦を象徴する少女像について、地元自治体が設置を事実上、合法化しました。日本側は撤回を求めましたが、受け入れられていません。

慰安婦象徴の少女像“合法化”韓国・釜山

 

「事実上、合法化しました」というのは、これまでは違法だったことの裏返し。
この慰安婦像の設置は韓国の国内法で違法だったにもかかわらず、国民感情には合っていたから「反日無罪」が適用されて、違法状態が韓国の政府や自治体から黙認されてきたのだ。

日本なら情より法が優先されて、像が撤去されるけど韓国では違う。
法律を理由に突き放す前に、当時の苦痛に共感する姿勢を示すことが優先されるから、違法に像を設置しても、そのあとに法を変えるか作るかして「合法」にしてしまうのだ。
国民情緒に沿った行為なら、あとからどうにでもできる。

韓国側は今回まさにそれをしたから、日本の総領事は「ウィーン条約に反するもので、日韓関係を著しく損なう」と慰安婦像の許可の取り消しを求めたけど、地元政府はそれを突っぱねる。

 

この像の設置は国際法(ウィーン条約)に違反することは韓国政府も暗に認めていて、韓国外務省は「外国公館の保護と関連した国際儀礼を考慮すべき」とコメントした。
でも口で言うだけで、実際にはこの像を黙認している。

結果として、「再び日韓関係の火種になる可能性が出ています」と日テレニュースは指摘する。
韓国側に共感するなら、この像の設置を認めることになるけど、やっぱり日本にはそれができない。

 

 

慰安婦問題については日韓両政府が話し合いを重ねて、2015年に最終的・不可逆的な解決を確認した。
この歴史には日本と韓国が謙虚にならないといけないはず。
もしどちらかがこれを破ると、ケンカの火種になるのはもはや必然。

それに釜山の件に関しては、「足を踏んだ人は、踏まれた人の痛みが分からない」というのは日本のセリフだ。
総領事館前に慰安婦像を設置するのは、国際儀礼を無視した非礼な行為であることは韓国政府も認めるところで、そんな侮辱を受けながら毎日仕事をしている日本人のことを考えてほしい。

「戦後七十五年が過ぎても、歴史をめぐって相手の足を踏むような行為をしていないか。立ち止まって考えたいものです」と韓国にも言ってくれ。

 

そもそも日本が韓国側の苦痛に共感する姿勢を示したから、慰安婦合意を結んで、10億円の支援金を渡して安倍首相が心からのお詫びの気持ちを表明したのだ。
でもそれを受け取って数年すると、韓国政府は慰安婦財団を解散して合意を実質的に破棄してしまう。
約束を守らない相手に共感していたらキリがない。

なんだかんだで日本が韓国側にズルズルゆずっていたから、「動くゴールポスト」なんて言葉が生まれた。

韓国が約束・宣言・合意・条約を、勝手に変更または無視して決定事項を履行せず、日本に追加要求をする状況を意味する時に使っている

ムービング・ゴールポスト

 

昨年末(11月末)に日本経済新聞がおこなった世論調査によると、日韓関係について「日本が譲歩するぐらいなら関係改善を急ぐ必要はない」と答えた人が約70%、「日本が譲歩することもやむを得ない」は21%だった。
いまの日本人の多くが共感より約束を重視している。
これまでの日韓関係を見て、あいまいで情緒的はアプローチはもう効果がないと気づいたのだろう。
やっぱり日韓両国が法律や協定を守らなかったら問題は解決しないのだ。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

韓国の「謝罪したドイツに日本は見習え」論のでたらめさ

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。