ぜい沢は悪か?日本と欧米社会の「平等・契約」意識の違い

 

兵庫県の井戸敏三知事が公用車をレクサスから、2千万円超えのセンチュリーに変更したことで日本全土から批判の声が上がっている。
「そこまでの高級車が必要なのか」という声に対し、「一面的な報道が横行し、遺憾だ」と不快感を示した知事は、事態を鎮火させたいのかもっと炎上させたいのか。

マスコミ報道を見ると、大王製紙の元会長・井川意高氏が「県知事がセンチュリーに乗る必要はない。総理大臣であってもセンチュリーに乗る必要はない。なぜなら公務員は公僕。国民の税金を自分の見栄や快適性とか屁理屈述べて乗る必要はない」と不快感を示しているから、知事にはかなりの逆風が吹いている。

ネットの反発も大体これと同じだ。

・ま、いらんな
・どうしてプリウスじゃいけないんですか?って聞いてみたい
・大阪は荷物もたくさん積めるようにアルファードなんだろ?
それでよくね?
・今年一番どうでもいい話
・このスレをみて日本て本当に貧乏になったんだなと感じた
・他県や首相に文句を言う知事ほど 自分には甘い
・コロナで民間がヒイヒイ言ってる時に最高級高級車に買い替える度胸のよさ
この知事ギャンブラーだな

元東京都知事の舛添要一氏は移動中に会議ができるよう、真ん中にテーブルを置いたワンボックスを公用車にしたという。

知事には公用車をアップグレードさせたメリットを、

「性能が良くないと。特に兵庫県みたいに山あり平野ありで、しかも広大な県土を抱えているところで、走っていても滅多に壊れないような車でないと困る」

と説明するのだけど、でもこれならレクサスでもいいのでは?
天皇陛下がお乗りになる車(御料車)がセンチュリーなのだから、地方知事が“同格”でなくてもいい。

ちなみに広島でも、県議会議長の公用車として9月にセンチュリーを購入した(1830万円)ことに批判が殺到した。
広島の知事ならマツダ車に乗ればよかったのに。

 

立場や目的は違うけれど、モノを大事にされていた昭和天皇の愛車は型落ちのインテグラだった。

 

知事のプライベート車が年代物ならワンチャンあるかも。

 

これが欧米だったら、こんな炎上騒ぎにはなっていなかったと思う。
いまちょうどSNSで、日本の学校教育を知ってる外国人にその「短所」について意見を聞いていて、一部を取り出すとこんな感じだ。

・There is less push for individual thinking, and more for fact-memorisation
個人の意見や考え方を育てることより、事実を暗記することへの要求が強い。

・生徒が自分の意見を先生に言う機会がないのはマイナス面だ。

・Trying to mold everyone into the shame shape
教師は子供たちを同じ型にはめようとする。

生徒みんなが同じような価値観を持っていて、とても均質的な空間だと「異分子」が目立つからこれを排除しようとする動きが現れるから、日本の学校ではいじめがよく発生すると指摘する外国人は多い。
でも、短所はひっくり返すと長所になる。
こうした日本の教育が協調性や集団としての力につながっているのも確かで、みんなが協力して運動会や文化祭をつくり上げるのを日本の文化や強さだという声もよく聞く。

評論家の山本七平氏が日本の企業について説明している下の内容は、学校やいろんな組織にも当てはまる。

優良企業にいきますと確かに「礼楽」がきちんとしている、面白いことです。非常に礼儀正しい。(中略)社長以下末端に至るまでが、一つの情感的な一体感を持っている。日本の組織は実は「礼楽」でだけ成り立っているので、契約で成り立っているのではないわけです。

「日本型リーダーの条件  (講談社文庫)  山本七平」

 

「礼楽」のくわしい意味は辞書で調べてもらうとして、ここではひとつの例を挙げよう。
部下が上司に「まじかー!これオレがやるのー?」と礼を欠いた言葉づかいをすれば「情感的な一体感」がなくなって(これが礼楽の消失)、日本の組織は機能しなくなるのは日本人なら分かるはず。
生徒が先生に違う意見を言うのも、「一体感」がなくなるから学校ではほとんど歓迎されない。

欧米の企業では、社員一人ひとりが会社と契約によって結びついているから、社内の一体感や愛社精神は重視されず、契約にない業務は平気で断るし、まわりが残っていても自分の仕事が終わればさっさと帰る。

話がそれたけど、日本人の価値観では「情感的な一体感」がとても大事にされるから、トップがぜい沢をするとこれが崩れて組織がうまく機能しなくなる。
政治家がこれをすると民心が離れてしまうから、そうなると「一面的な報道が横行し、遺憾だ」と怒っても逆に反発されるだけ。

もちろん外国でもそんな面はあるけど、日本人は「上級国民」の派手な生活には特に厳しい。
欧米のセレブの発想だと、ふだんは好きなだけお金を使っていて、たまにとんでもない額の寄付をしたり無償でチャリティー活動をする。(日本ではチャリティーに報酬が出ることがある)

だから昭和天皇が庶民以下の車に乗っていたとか、明治天皇はどんなに寒い日でも暖房は火鉢ひとつしか使わなかった、といった話を聞くと国民は親しみや平等などの一体感を感じるから日本全体がうまくいく。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。