【敵は友に】過去を引きずらないアメリカ人の良いところ

 

もうすぐ、あの激戦の慰霊式がおこなわれる。

毎日新聞の記事(2020年10月20日)

硫黄島で24日、日米慰霊式 日本兵2万1900人、米兵6800人戦死

太平洋戦争末期におこなわれた硫黄島の戦いは空前絶後のレベルで、日本軍では約2万2千人、アメリカ軍は約7千人が犠牲となった。
これは米軍が第二次世界大戦で最も大きな人的損害をだした戦闘のひとつで、この戦いに勝った日は「アメリカ海兵隊記念日」に制定された。

数ある慰霊式のなかでもこの式典が特に注目される理由は、当時は敵として殺し合った日米が凄惨な歴史を完全に過去のものとして、いまは対等な立場で一緒に犠牲者を追悼する世界的にもめずらしい慰霊式だから。

1985年(昭和60年)2月19日、硫黄島において、日米双方の元軍人・退役軍人ら400名による合同慰霊祭が行われた。かつて敵として戦った双方の参加者たちは互いに歩み寄り、抱き合って涙を流したという。

硫黄島の戦い

 

硫黄島に立つ慰霊碑には日本語と英語でこう書かれている。

「我々同志は死生を越えて、勇気と名誉とを以て戦った事を銘記すると共に、硫黄島での我々の犠牲を常に心に留め、且つ決して之れを繰り返す事のないように祈る次第である。」

コロナのせいで規模は縮小されるものの、戦いが終わって75年後のことしも24日に日米合同の慰霊式がおこなわれる。
この島では遺骨収集が進んでいなくて幽霊が出るとよく聞いたけど、もうそろそろ成仏してくれただろうか。

 

以下、硫黄島の戦いのようす

 

 

 

 

敗戦濃厚のなか士気を高めるために、栗林中将が配布した『敢闘ノ誓』のビラ。

 

『硫黄島の星条旗』をかたどった合衆国海兵隊戦争記念碑

 

数年前に京都旅行をしたとき、宿で沖縄の在日米軍基地に勤務するアメリカの軍人と知り合った。
そのアメリカ人が言うには、いまほとんどの米軍軍人は太平洋戦争で戦った日本軍に対して敬意を持っていて、その証拠に旭日旗のデザインは日米友好のシンボルになっている。
敵が使っていた物を自分も使ったり身に着けたりするのは、アメリカ人にとっては敬意を示す意味があるという。

全力で戦ったあと、かつての敵は友になったという少年ジャンプ的な展開。

話を聞いていて、アメリカ人には過去や恨みをいつまでも引きずらず、どこかで断ち切ってリスタートするさわやかさがあるように思った。

 

京都で会ったアメリカ人が沖縄の米軍基地で、旭日旗デザインの栓抜きを買ったということで、後日こんな写真を送ってくれた。
鷹は米軍のシンボル。

 

戦争当時、フィリピンにいたジャーナリストで石川欣一(きんいち)という人がいる。
1944年12月にアメリカ軍がフィリピンに上陸するとルソン島の山中に逃げた石川は、1945年8月15日の降伏を受けて米軍に投降し、その後捕虜となって米軍の収容所に入れられた。

そこでは戦勝国となったアメリカ人が日本兵に対し、絶対に「ジャップ」という侮辱語を使わず、いつも「ジャパニーズ」と日本人に配慮して接していたことが石川氏には不思議だったという。
収容所でいろんなアメリカ人と付き合って、石川氏はこう感じた。

米国民のわが国に対する憎悪の念は相当に強いものと思わねばならぬ。だが米国人は執念深く怨みを持ち続けるような人々ではない。いつかは戦争のことも忘れるであろう。

「比島投降記 ある新聞記者の見た敗戦 石川 欣一」

 

これは本当にその通りで、アメリカ人のすごく良いところだ。
個人としては恨みを持っている人もいるだろうけど、国として日本に反省や謝罪を要求することはない。

 

 

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2 件のコメント

  • もちろん、過去をむやみと引きずらない、戦いを終えれば相手を友とみなす、そんな米国人のすぐれたところもあるのですが。
    米国社会で地道に努力し、活躍・貢献している日系移民たちのおかげでもありますよね。
    1992年のロサンゼルス暴動では、黒人が攻撃したのは韓国人たちの商店でした。また、日系人よりもはるかに多いと考えられる中国系アメリカ人は、いまだに、日系人ほどには尊重されるに至っていない気がします。チャイナタウンに基盤を置いているチャイニーズ・マフィアの暗躍もしばしば映画のネタになったりもします。
    だけど、日系アメリカ人に対する非難は聞いたことがありません。日系アメリカ人は米国内でも高い地位を占めている人が多く、アメリカ社会の中でも尊敬に値する民族として一般には知られています。
    そのような彼らの努力が巡り巡って、日本人に対する好感度を上げる大きな要因にもなっているのだろうと私は考えます。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。