世界と平和の理由を知らない日本人・軍隊(自衛隊)について

 

海外旅行が大好きで、この20年の間に26ぐらいの国や地域に旅行した。
すると知人・友人からよくこんなことを聞かれる。

「日本と外国ではどうちがう?」
「日本人と外国人の考え方や価値観のちがいって?」

これを話すと3日はかかると思う。
日本と外国のちがいなんて山盛りあるんだが、最も大きなちがいのひとつは「軍隊についての考え方や見方」だ。
前の記事でも書いたけど、韓国の社会では軍人はとても大切な存在だとみなされている。
だからロッテリアでも、「軍人割引」なんてものがある(今もあるかは知らない)。

なんで韓国では軍隊が尊重されているのか?
軍隊は、国を守るという「神聖な義務」をおこなっているから。

そのことは韓国の憲法に明記されている。

国軍は、国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とし、その政治的中立性は遵守される」とされ(第五条)、さらに「すべての国民は、法律の定めるところにより、国防の義務を負う」という条項(第三九条一項)をもっている

(「市民」とは誰か 佐伯啓思)

 

「国を守るために戦う」ということは、軍隊だけがすることではない。

この憲法には「すべての国民は、法律の定めるところにより、国防の義務を負う」と書いてある。

だから、韓国には徴兵制がある。

すべての韓国の成人男性には、一定期間軍隊に所属し国防の義務を遂行する「兵役」義務が課せられています。

徴兵制~韓国の軍隊制度

 

韓国の成人男性なら、だいたい2年間は軍隊に入らないといけない。
女性は軍隊に入らなくてもいい。

友だちの韓国人の女の子は、小学生のときに授業で韓国軍の兵士に感謝の手紙を書いたという。
「韓国軍の兵士のみなさん、国を守ってくれてありがとうございます」といった内容だったらしい。
日本でこれを学校の授業でおこなったら、どれほどの騒ぎになるか?
想像もできない。

 

 

日本と韓国の歴史認識のちがいから、韓国嫌いな人がいる。

でも、命がけで国を守っている人たちを素直に認めて、社会全体で大切にしていることについては、日本も見るべきものがあると思う。
とはいっても、「学校の授業で、自衛隊へ感謝の手紙を書け」ということでは決してない。

 

ちなみに最近ではスウェーデンが徴兵制を復活させることを決め、18歳の男女が兵役に就くことになった。

AFPの記事(2017年3月3日)

スウェーデン徴兵制復活 ロシアの脅威に対応、女性も対象

女性も徴兵されるとは!

 

北朝鮮との国境で、北朝鮮軍の兵士とにらみ合っている韓国軍の兵士。

ここで立っている間、この兵士は汗をふくことも禁止されている。

「一秒でも油断してはいけないんです。彼らは韓国を守るために、全身全霊をそそがないといけなんです」

韓国人のガイドがそんなことを話していた。

 

 

前に、イギリス人と「日本の皇室とイギリスの王室のちがい」について話をしていた。

そのときに「これは、決定的にちがうな」と思ったことは、イギリスでは王子が軍隊に入ることになっていること。

日本の皇太子が自衛隊に入隊するなんて、考えられない。
イギリスでは、王妃がチャリティー活動をして王子は軍隊に入って軍人になることが、当たりまえのことになっている。

 

じっさい、ダイアナ妃は熱心にチャリティーをしていて、夫のチャールズ皇太子はイギリス軍の軍人になって国のために働いていた。

イギリス人の友人に言わせると、「どちらも同じぐらい大切なことです」という。
「チャリティー活動と軍人としての活動には、おなじぐらいの価値がある」

 

日本の社会でこんな言葉を言ったら、どんな反応が返ってくるだろう?

ボクが話を聞いたアメリカ人・タイ人・フィリピン人は、このイギリス人の考え方に賛成していた。
というか、それを常識だと考えていた。

 

画像は、「タビリッチ」というブログから。

ロンドンの観光スポット!セント・ポール大聖堂、シャード、ロンドン塔、タワーブリッジ、バッキンガムの衛兵交代式

すばらしい写真がたくさんあります。
ぜひ見てみてください。

 

「軍人」を英語にすると、「serviceman(サービスマン)」になる。

•a serviceperson
•〈男性〉 a serviceman
•〈女性〉 a servicewoman

(研究社 新和英中辞典での「軍人」の英訳)

 

軍人(サービスマン)とは、「国のために奉仕する人」という意味になるらしい。
ちなみに、ボランティア活動の「ボランティア」という言葉は、「志願兵」という意味だった。
いまでもその意味はある。

 

高校で世界史を習った人なら、古代ローマの市民権について学んだはず。

紀元前1世紀にマリウスが改革をするまで、市民としての権利を手に入れるためには国のために戦うという国防の義務を果たす必要があった。

共和政ローマではローマ市民権を持つ市民が義務としての兵役が課せられており、以下の基準に従って各々が兵役に就いた。

(ウィキペディア)

 

この時代、奴隷には市民権がなかったけれど、国のために戦うという義務もなかった。

「国防の義務をおうものだけが、市民になることができる」

この考え方は、今のヨーロッパにも残っているように思う。

 

 

「陸上自衛隊が来たら、婦女暴行が起こる」

宮古島の市議がこんな言葉をフェイスブックに投稿したことで、大問題になっている。

くわしくは、宮古毎日新聞の記事を見てほしい。

「陸自来たら婦女暴行起こる」

 

この言葉が事実でも適切でもない。
それは言うまでもない。
だけど、これはこの議員だけの責任ではない。

この議員に、「陸上自衛隊が来たら、婦女暴行が起こる」と思わせるような空気が日本の社会にあることが、もっと大きな問題だと思う。

 

そんなことを思ったのは、最近このブログにこんなコメントがきたから。

戦地で朝鮮人と性交していた日本兵が、靖国神社で「英霊」として祀られている、おぞましさに、世界は日本のグロテスクさを感じているのが、本当でしょう。

 

この言葉を書いた人間には、「陸上自衛隊が来たら、婦女暴行が起こる」と書いた市議に通じるものがあると思う。

無知と事実誤認と偏見にもとづいた、自衛隊や軍隊への差別意識があるのではないか?
上のコメントは、この記事にあります。
関心がある人はのぞいてください。

世界が驚いた日本の美!天皇陛下とサウジアラビア王族の面会

 

 

「彼らは、一秒でも油断してはいけないんです。韓国を守るために全身全霊をそそがないといけないから」

先ほど、そんな韓国人ガイドの言葉を書いた。

帰りのバスのなかで、別のガイドがツアーの客にむかってこんなことを言っていた。

「私はここに来るたびにいつも、韓国の平和はあたり前のものではないと気づかされます。韓国軍の兵士が365日24時間守っていてくれるから、私たちは楽しく日々をすごくことができるのです。でもこれは韓国だけではありません。あなたたちの国でも、きっとおなじはずです」

この言葉を聞いたいろいろな国籍の人たちは、みなが拍手で応えていた。

 

 

では、日本はどうなのか?

自衛隊の人たちのおかげで、日本が平和に保たれている。
災害救助だけではなくて、国民の見えないところでも活動している。

それにもかかわらず、平和になると自衛隊のことを忘れてしまって、自衛隊をバカにするような空気がうまれてしまう。

晴れの日には、傘のありがたさに気がつかないようなもの。
これも一種の平和ボケ。

 

その最悪の結果として生まれのたのが、「陸上自衛隊が来たら、婦女暴行が起こる」「戦地で朝鮮人と性交していた日本兵が、靖国神社で『英霊』として祀られている」という言葉なんだろう。

平和ボケをなおすためには、どうしたらいいか?

外国人に話を聞いて、軍隊や平和への考え方を知ることはとても大切だ。
さらに、自分たちが平和ですごせる理由を考えることも大事なこと。

視野を広げて自分の目で世界の現実を見ることが、もっとも有効だと思う。

 

*もちろん、日本の平和が保たれているのは、自衛隊だけのおかげではないです。
日本の憲法やアメリカ軍のおかげでもあります。
ただ、この記事では自衛隊にフォーカスをおきたかったからこう書きました。

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。