日本で初めて「人造人間」を作ったという仏教僧・西行

 

日本がまた一歩、未来のとびらを開いた。かも。

岐阜大学の研究チームが、恋人と手をつないで歩く体験を提供してくれるハンド型デバイス「お散歩彼女 My Girlfriend in Walk」の開発に成功した。

itmediaの記事(2020年10月28日)

柔らかく人肌の温かさを持つこのデバイスは、握り返してくれ、手汗をかき、歩く時の呼吸や服の擦れる音、相手の匂い、引っ張る動作もあり、臨場感ある疑似体験を提供する。

「恋人つなぎ」で歩けるハンドロボット 手汗、匂いもある「お散歩彼女」 岐阜大学が開発

 

「相手がいないにもかかわらず2人で手をつなぎ歩いているような疑似体験が得られる」というこのロボットに、ネットの反応は厳しいというか悲しかった。

・心に風がふくだろう
・なんで作ろうと思ったの
・岐阜県民として情けないです
・これが発展し続けた先に私の望む未来があるのかもしれない
・VRの映画館で需要ありそうだな
彼女と手をつなぐシーンになったら座席横のこれを握って汗や温もりを感じられるとか

目的は別として、この「お散歩彼女」の製作に使われている技術はかなり高度なものだから、いろんな応用に効いて発展性や未来性はあるとは思う。

 

さて、ここからが本題。
いまでいう「お散歩彼女」のような“ヒト”を、はっきり記録に残る形で日本ではじめて作ったのが西行(さいぎょう:1118年 – 1190年)。

西行は日本を代表するような歌人で、小倉百人一首には「嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな」という和歌がある。

「嘆き悲しめ」と、月はわたしを物思いにふけらせようとするのだろうか?いや、そうではあるまい。(本当は恋の悩みなのに)まるで月のせいだというように流れる私の涙ではないか。

といった意味らしい。

 

 

平安から鎌倉時代を生きた歌人で、武士や僧侶でもあった西行には不思議な話があるのをご存じか。

月の夜に高野山にひとりでいた西行は人恋しくなって、鬼が人骨を集めて「ヒト」を作るように、自分も人造人間を作ろうと考え実行したという。

古くは、ギリシア神話のタロース、ユダヤ伝説のゴーレム、ギルガメシュ叙事詩のエンキドゥなどが挙げられ、日本でも鎌倉時代の説話集『撰集抄』巻五に、西行が故人恋しさに死人の骨を集めて復活させようとして失敗する話「高野山参詣事付骨にて人を造る事」がある。

人造人間

 

西行は死体を野原に並べて骨に砒霜(ひそう)という薬をぬり、反魂の術をおこなって人を作ろうとした。
一応は成功して、見た目は人であるモノを作ったけど、血相は悪いし声もか細く、魂も入っていなかった。
でもこれを壊すと人殺しになる気がする。とはいえ魂がないのだから、これは草木と同じではないか?外見は人間だから処分に困る。
そんなことを考えた西行は結局、高野山の奥に捨ててしまった。
このあと西行は再びヒューマノイドを作ることはなかったという。

夜の高野山でひとりでこんなことをするとか、西行は仏教僧というよりもはや悪鬼。

もともと西行は月を見て、恋の涙を流すようなロマンチストだった。
人造人間の製作動機も人恋しさだから、恋人つなぎで歩ける「お散歩彼女」とたぶん大きくは変わらない。
まぁこれは説話集の「撰集抄」にある話なので、信じるのなら自己責任でどうぞ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。