はじめの一言
「頭をまるめた老婆からきゃっきゃっと笑っている赤児にいたるまで、彼ら群衆はにこやかに満ち足りている。彼ら老若男女を見ていると、世の中には悲哀など存在しないに思われてくる
(ディクソン 明治時代)」
「逝き日の面影 平凡社」
今回の内容
・タイ人には分からない日本の「戒名」
・日本の仏教界とお金
・日本仏教の「危機」
・タイ人には分からない日本仏教の「戒名」
タイ人にと日本の仏教の話をしていたとき、「何ですか?それ?」と、タイ人にはさっぱり分からなかったものがある。
それが「戒名(かいみょう)」。
戒名とは本来、戒律を守る証として、仏門に入った者に授けられる名前です。
決して死者に付けられる名前などではありません。
しかし、死後、浄土に行けるという浄土思想が一般的になったため、死者に授けられるようになりました。(池上彰と考える 仏教って何ですか? 飛鳥新社)
戒名の考え方はいいとして、日本でよく問題となるのがそのお値段。
よく葬式仏教への非難とセットで、一文字×十万円などという戒名料が話題にのぼりますが、本来、戒名に値段などありません。
(池上彰と考える 仏教って何ですか? 飛鳥新社)
タイの仏教では、亡くなった人に特別な名前をつけるという考えがない。
だから、タイ人の友人には、戒名の必要性が分からない。
さらに「それはおかしいですよ!」と彼が驚いたのが、この高額な戒名の料金。
「一文字×十万円」といったら、10文字で100万円かかることになる。
タイ人の友人は、この戒名という考え方がよく分からないし、お坊さんが高額の料金をもらうことには、すごく拒否反応を示していた。
ただ、日本では「戒名は問題がある」と思っても、自分の肉親が亡くなって、戒名をつけないのは申し訳ない。
さらに、戒名をつけるなら、1000円や2000円という「格安」の戒名だと、亡くなった人に失礼になってしまう。
タイの葬式でも、お坊さんを自宅に呼んでお経をあげてもらうという。
日本と同じように、その謝礼(布施)も払う。
けど、それは、本当に「気持ち」で少額でよく、お金がなかったら払わなくても問題はないという。
日本ではそうはいかない。
現役のお坊さんは、日本でのお布施について、こう言っている。
お葬式のお布施の全国平均は、「54.9万円」です。所要時間は「約1時間」。ということは・・・えっ!?じっ、時給50万円!?
(ぼうず丸もうけのカラクリ ショーエン)
これは、2008年のデータで、現在では、ネットを見ると15~50万円ぐらいとある。
この「ショーエンK」というペンネームのお坊さんは、「宗教とお金」をこう書いている。
宗教行為のすごさは、「価格競争」を完全に無視する力があること(同書)
この例としてこのお坊さんは、お寺にある「ろうそく」をあげている。
・日本の仏教界とお金
お寺に行くと、ろうそくを立てる「献灯台(けんとうだい)」がある。
今度お寺に行ったら、その値段を見てほしい。
大体100円だと思う。
これと同じろうそくをホームセンターで買うと、3円ぐらいだそうだ。
さて、ここで『算数』の問題です。
1本3円のろうそくを100円で売りました。
儲けはいくらでしょうか?そうです、97円の儲けです。
ということは・・・粗利97%!
小売業でも平均粗利は、中小企業庁の調べによると19%ですから、本堂前のろうそくは、ものすごく高い『利益率』なのです。
しかも、なんと!儲けに対して税金がかからない!(ぼうず丸もうけのカラクリ ショーエンK)
粗利97%の「商品」なんて、日本でどのくらいあるのだろう?
さらに不思議なのはこの後。
たとえば「お寺」といえど、3円のろうそくを4円で売ったら、その1円の儲けには、「税金」がかかるのですね。
しかし、100円で売って儲けが97円という高額のものになると、なんと税金がかからなくなるのです。
つまり、「宗教行為のぼったくりには税金をかけない!」というのが今の日本。(同書)
ここでいう「宗教行為のぼったくりには税金をかけない!」ということは、日本の裁判所でも認めているらしい。
何で、ろうそくを4円で売ると税金がかかって、100円で売れば税金がかからなくなるのか?
理由が分からない。
この辺が「宗教行為のすごさは、『価格競争』を完全に無視する力があること」ということなんだろう。
タイ人の友人の話を聞いている限りでは、ふつうのタイのお坊さんは、お金と縁がない。
タイと日本とでは仏教の考え方や社会が違うから、単純に「日本の仏教は悪」「タイの仏教は善」ということはできないけど、「仏教とお金」の点では、タイの仏教は、「クリーン」な印象を受ける。
ちなみに、この本は「暴露本」というものではない。
ふつうの日本人には、仏教やお坊さんについて分からないことが多い。
このことから「お坊さんに対して、不信感をもたれてしまうかもしれない」と危惧を抱いて、この本の執筆に取り組んだという。
お寺のこと、お坊さんのことをきちんと「知ってもうらう」ところからはじめなきゃ!(同書)
これが本を書いた動機になっている。
確かに日本の仏教の良いところもダークなところも知って、正しく理解することは大切だと思う。
・日本仏教の「危機」
この本は2009年に出版されている。
最近は、日本の仏教界も「価格競争」を無視できない事態が起きている。
イオンがお布施の「目安」を発表したときは、それに抗議して掲載を止めた。
それで一安心したと思ったら、今度は、アマゾンが「お坊さん便」を出して、これにも抗議をしている。
「ぼうず丸もうけのカラクリ」の本の内容は、今の時代とは違っていることもあると思う。
今では、日本のお坊さんにも「格差」が広がっていて、生活が厳しいお坊さんは、アマゾンの考え方に賛成しているという。
「アマゾンのやり方はおかしい!」と批判しても、富める僧と貧しい僧の格差対策をしないと、アマゾンの考え方に共感するお坊さんは後を絶たないと思う。
ただ、もう一つの危機を日本の仏教界は知らないと思う。
日本の仏教界にとって新しい危機が中国で生まれている。
北京郊外のお寺で、お経を読むことができるロボット僧がつくられたという。
なんでもお坊さんの指示で回転したり歌を歌ったりすることができるとか。
日本人の技術力をもってすれば、これぐらいの「ロボット僧」を大量生産することはまったく問題ない。
このロボット僧が、「葬儀用」としても一般の日本人にも受けいれられて、レンタル可能になったとき、日本の仏教は本当になくなってしまうかもしれない!
なんてね。
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日本仏教はプロテスタント的ですから。