近ごろ、大阪の海がキレイになったらしい。
でもその分、漁師のため息は重くなった。
読売新聞の記事(11/16)
大阪府漁業協同組合連合会の職員は、漁師からこんな嘆きをたびたび耳にする。大阪湾の海がきれいになりすぎて、魚がとれなくなったというのだ。
大阪湾の透明度、上がれば上がるほど漁獲量減…プランクトン減りすぎてエサ不足
高度成長期には工場排水や下水の流入で、大阪湾では植物プランクトンが異常増殖した。
その後、プランクトンの栄養分になる「栄養塩」を法で規制した結果、透き通った青い海が戻ってきた。
が透明度の上昇は魚のエサとなるプランクトンの減少の裏返しだから、海がキレイになるにつれ、イカナゴなどの漁獲量は減ってしまった。
ということで府漁連職員は、「海の栄養をあまりに規制しすぎて、大阪湾の恵みが細りつつある」とこぼしている。
同時に『海をきれいにしてほしい』という府民の声もたくさんあるから、関係者としては悩ましいところだ。
これにネットの反応は?
・道頓堀で競泳するって話もあったな
・東京湾、相模湾はクッソ汚いのに魚も少ない、良いとこなしだ
・護岸して水を綺麗にしたらそれはプールwww
・お好み焼きやたこ焼きでも流しておけ。撒餌みたいになるだろ。
・瀬戸内海もきれいだから汚す計画なんだろ、人間てアホだよな
・じゃあオリンピックのトライアスロン大阪で頼むわ
かつては「魚庭」(なにわ)と呼ばれた大阪湾はこれからどうなるか?
魚にとって海とは、そこで生まれ育って活動するところで、人間にとっては社会と同じ。
きれいな環境になると住みにくくなるという現象は人間社会にもあって、日本の歴史をひもとくと江戸時代に、社会が浄化されすぎて庶民が生きづらさを感じるという出来事があった。
18世紀の江戸時代中期、幕府の財政悪化を食い止めるため、田沼意次は老中となって大規模な経済政策をおこなう。
この人物を検索すると、「賄賂(ワイロ)」というダーティな言葉とセットになっていることが多い。
これが田沼意次に対する日本人のイメージだ。
田沼意次はそれまでの日本社会には見られなかった、商人の経済力を積極的に利用するといった政策を取って「田沼時代」と呼ばれる時代を築く。
でも、「カネカネカネ」の金がものをいう社会となって、ワイロの横行する政治腐敗が進んでいき、同時にそれに対する庶民の反発も生まれる。
それで当時の日本では「役人の子はにぎにぎをよくおぼへ」と、「にぎにぎ(賄賂を受け取ること)」を当然とする役人を批判する川柳がよまれたのだ。
ただこれによって経済活動は活発になり、芸術や学問が発達したのも事実。
やがて賄賂政治の田沼時代は終わりを告げ、クリーンな松平定信の時代(寛政の改革)になると社会は一変。
庶民が着る着物のデザインまで制限するほどの質素倹約な社会となって、江戸の景気は悪くなり、多くの商人や職人が生活に困ってしまった。
「松平さまの改革は厳しすぎる~。これなら、まだ田沼さまの時代のほうがよかったかも」と昔をなつかしむ人が増え、白川藩出身の松平定信と比較するこんな歌が人気を集めた。
・田や沼やよごれた御世を改めて 清くぞすめる白河の水
・白河の清きに魚も住みかねて もとの濁りの田沼恋しき
賄賂やなんかで汚れて濁った田沼の時代を改めて、松平の時代はキレイに浄化された社会になったけど、そうなってみると、いまは豊かだった田沼の時代が恋しくなる。
そう思った江戸の庶民はたくさんいたらしいようだ。
いま大阪湾にすむ魚介類がこの川柳を聞いたら、「それな」と共感するはずだ。
無能だけど心のキレイな政治家と、有能だけど汚職で心の腐った政治家の二者択一のようなもので、答えはむずかしいけど、どちらかといえば政治家は能力が優先されるべきだと個人的には思う。
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