【カースト差別の打破】南インドの教育レベルが高いワケ

 

まえに4人のインド人と富士山を見に行ったとき、そのうち1人がいままで出会った日本人から、

「日本とインドのカレーの違いは何ですか?」
「インドではまだカーストってあるんですか?」

と何度も何度もきかれて「いい加減ウンザリです…」と言う。
他のインド人もうなづいているのを見て、これはボクの中で「在日インド人あるある」に認定。
でも「インド」と聞いたら、日本人ならカレーとカーストのことを知りたくなると思う。

さて今回の話は、同じ「C」でも食べ物ではなくて身分制度のほう。

中学校の授業で、「カーストにはバラモン(ヒンドゥー教の聖職者)・クシャトリア(王や貴族)・ヴァイシャ(市民)・シュードラ(労働者・奴隷)の4つの身分がある」と習ったあなたはもう古い。
むかし「カースト」と呼ばれていたものは、いまの学校では「ヴァルナ」と教えられているのだ。

でもここでは分かりやすく、カーストの呼称を使うことにしよう。

 

ダリットの人たち

 

この4つの身分の下に、「触れると穢れる」と蔑視・差別されていたダリットと呼ばれる人たちがいる。
13億のインドの人口のうち、ダリットは6分の1の約2憶200万人いるという。
いやいやいや。日本の総人口より多いんですけど。

インド憲法ではカーストによる差別は禁止したものの、カースト自体は否定していない。インドからこれを取り除くのは現実的に不可能だ。

かつてのインド社会ではこんな身分差別があったとAFPの記事がいう。(12/6)

上位カーストほど純潔だとみなす考えは、宗教的儀式や食習慣、差別的慣習を通じて長い間、ヒンズー教の中核を成してきた。ダリットは寺院や学校への立ち入りを禁止され、ごみ処理など「不浄な」仕事に就くことを強要されてきた。

インド企業社会、今もはびこるカースト差別

 

広大なインドは一般的には大きく南北で分けられる。

こんかい一緒に富士山を見に行ったメンバーは、北部出身のインド人が2人、南部が2人とちょうど半々という構成。
そんな彼らと話をしていると南北インドの違いが話題にのぼって、南インド人が「北に比べて、南インドは教育レベルが高いですね」と断言する。
でもそれには北インド人も同意。
現実的にそれは正しい見方で、読み書きのできる人は南に多いことは間違いないという。

 

では、何でそんな違いが生まれたのか?

もちろんその理由はいくつかあるけど、南インドのクリスチャン・スクールに通っていたインド人に言わせると、「それはイギリスの支配を受けたおかげ」だ。
ちなみにそのインド人は生粋のヒンドゥー教徒でバラモン・カーストの人間だけど、クリスチャン・スクールに通うことに何も問題はなかった。

北インドはイスラームのムガール帝国の強い影響下にあって、社会は大きく変わらなかった。
それに対して16世紀にヨーロッパ人がインド南部に到達し、そこに拠点にして支配を拡大していったから、南インドはヨーロッパ人の価値観や考え方の影響を強く受けた。

学校や教育制度もその重要なひとつ。

先ほどの「ダリットは寺院や学校への立ち入りを禁止され」という事態は南部では、カーストとまったく関係のないイギリス人によって大きく変えられて、ダリットでも学校への入学が認められた。
100年ほど前のインドで、内部からカーストを「解放」することは絶対に不可能と言う。
大英帝国というスーパーパワーによってインドの社会や人の価値観が変化していったことで、ダリットに対する差別意識が薄まっていき、そうした人たちも教育を受けられるようになる。
結果として南インドでは読み書きのできる人が増え、教育レベル全体が向上した。

ムガール帝国の影響の強かった北インドとは、この点が大きく違っている。という南インド人の指摘に北の人も素直に納得する。
多くの人に平等に教育の機会を与えることについていえば、ムガール帝国とイギリスでは比べられないらしい。

南インド人は、教育制度の確立でイギリス支配を高く評価する。
植民地支配は全体としては悪だけど、客観的な見方ができればたいていの場合、全面悪にはならはない。

 

 

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4 件のコメント

  • カースト制度というのは、身分制度だけでなく、ある種の職能相続制度みたいな点もあります。なので、王様に食事を用意するコックの一族は代々その仕事を引き継ぎ、一般人の食事の世話をするコックはやはり代々その仕事を引き継ぐこととなっているらしいです。
    この制度を、一種の「社会的な分業である」と捉えて、インドのカースト制度を肯定的に評価(!)していた文化人類学者の論が、一時期の日本でもてはやされました。確か、70年代だったかな?
    当時中学生だった自分はその論説を新書版で読んで、「どうして身分制度がインド社会において肯定的かつ合理的と考えられるのだ?」と疑問を抱いたものでした。まあ、今で言うところの「ルックイースト論者」「アジア志向」のはしりだったのでしょうね。インド社会の悲劇の実態を知りもしないで頭でっかちの学者が、軽薄で上滑りな主張をするとは。
    さすがに最近では、そんな無謀な論説を聞かなくなりましたが。

  • 同一カーストの集団が同じ仕事をするので、他のカーストからの参入を許さない機能があるとは聞いたことがあります。

  • インドといえばっていう単純な面もあるんだろうけど「差別からの犯罪」など差別=仕事上・友人関係上のリスクになるって部分もあるような
    カースト制度を容認=差別をしているってことではないのはわかりますが

    >ダリットは6分の1の約2200万人
    6分の1だと2.2億では?

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