異論反論はあるものの、いま日本社会は全体として性差別をなくす方向に大きく進んでいる。
LGBTといった性的少数者への配慮から、コクヨが性別欄をなくした履歴書の販売を昨年末に開始したのはその表れだ。
そんな履歴書が登場するなんて、20年前に誰が想像できたか。
でも、この動きは公立高校の入学願書のほうが早かったらしい。
朝日新聞の記事(2020年12月30日)
公立高願書の性別欄、41道府県で廃止「選抜に無関係」
記事によると、2年前に願書の性別欄をなくしていたのは大阪と福岡だけだったのが、2020年12月に確認したところ、41の道府県がなくしたという。
願書に性別欄があるのは山形、栃木、群馬、千葉、東京、静岡だけで、山形はなくす予定という。
全都道府県で性別欄が消えるのは時間の問題だろう。
これは時代の流れとしても、よく分からないのがファミマの展開する「お母さん食堂」をなくそうという動きだ。
この名称によって「料理をする人=母親」という印象を人びとに与え、性別によって役割が固定化されてしまう。それは男女平等の理念に反する。
ガールスカウト日本連盟が2019年の夏に行った、ジェンダー平等について考えるプログラムに参加した女子高生がそんな疑問をもって「お母さん食堂」に反対し、この名前を変える署名活動をはじめたという。
そしてガールスカウト連盟がそれを支援している。
このブランド名が性差別の原因となる、男女のどちらにとっても生きやすい社会にはならない、と思うかどうかは個人の主観によるけど、ネット掲示板の反応は極めてネガティブ。
・このような安易な言葉狩り・表現狩りでは問題の解決にならない
・グリーンカレーとかシュクメルリ作れるお母さんて多様性の象徴だと思うんだが
・この問題についてあえて取り上げるなら、お母さん食堂を否定するのでは無く、お父さん食堂を作ろうである。
そうでなければ、女性専用車両を否定する男達とやってる事は同じである。
・こんなのは、ファミマ叩きでもジェンダーでもなく
「お母さん」叩きじゃねーかよ。
・これからは、ベルトコンベア食堂と命名せよ
個人的には「お母さん食堂」が性差別につながるとは思えないし、問題はこの名称じゃない。この主張が広く共感を呼ぶとは思えないし、そのうち自然と消えるでしょ。
でも大きな反響を呼んだのだから、社会に一石を投じた意味はあった。
そんなことより、ガールスカウト連盟や女子高生はこっちを支援したほうがいい。
日本経済新聞の記事(2019年12月12日)
性同一性障害職員、利用トイレ制限は違法 東京地裁
経済産業省で働く性同一性障害の50代の職員が女性用トイレの使用を制限されていた。
おそらく本人の認識は女性だけど、見た目は男性だったからだろう。
それは違法だというこの職員の訴えが認められて、裁判所は女性用トイレの自由な使用を認めなかった人事院の判定を取り消して国に132万円の賠償を命じた。
経済産業省なら性差別をなくすための先頭にいる機関でもおかしくないのに、そこで女性が女性用トイレを使えなかったというのはビックリ。
男性職員がこれに反対するとは思えず、女性職員がこの職員と同じトイレを使うのを嫌がったのだろう。
いまの日本社会でこんな事例は経産省だけではないはず。
「お母さん食堂」をなくすことより、こうした差別的待遇を改善するほうがよっぽど重要だ。
「日本で性差別をするのはいつも男」なんて偏見をもっているわけでもないだろうし、ガールスカウト連盟はこっちに力を入れるべき。
> 経済産業省で働く性同一性障害の50代の職員が女性用トイレの使用を制限されていた。
> おそらく本人の認識は女性だけど、見た目は男性だったからだろう。
> それは違法だというこの職員の訴えが認められて、
この問題に対する現実的で妥当な解決方法は、現状のトイレをいくつか「男女の誰でも使える」トイレに変更するのが最も妥当でしょう。その程度の改修工事だったら、さほどの予算は必要ないですよ。さらにできれば、肉体的な身障者にも配慮したような個室型トイレに改修するのが望ましい。