日本の武神“金毘羅”のルーツは、インド・ガンジス川のワニ

 

歴史と宗教とカレーの国・インドには、「ヴァーラーナシー」という有名な聖地がある。
この都市が聖地と呼ばれている理由は、全ヒンドゥー教徒にとって神聖なガンジス川が流れているから。

その清浄なる水に触れるとすべての罪や穢(けが)れが消えて、天国に行くことができると言われているから、死ぬ前にガンジス川で沐浴したいと願うヒンドゥー教徒はインド中にいる。
知人のインド人は、「でもどうせなら若いときじゃなくて、死ぬ直前に沐浴したい。穢れを流しても、またついたらあまり意味がないからね」とわりとコスパを重視していた。

一生に一度は行きたい聖地ということなら、日本人にとっての伊勢神宮、イスラーム教徒にとってのメッカのようなところか。

 

北海道の右にヴァーラナーシーがある。

 

聖なる川で沐浴するヒンドゥー教徒

 

ここは日本人に人気の観光スポットとなっていて、ヴァーラーナシーで沐浴体験をする人はたくさんいる。
大学時代のボクもそのひとりで、宿のインド人スタッフに沐浴の注意を聞いたら、「おぼれて死ぬ人がいるから、絶対に深みには入るな。まぁあの川で死んだら、天国へ直行できるけどな。hahaha」という笑えない冗談のあと彼はこう言う。

「ガンジス川にはワニがいるから気をつけろ。あれに殺される人も毎年いるからな」

そうそうワニワニ…。
えっ、マジで?
ビックリした顔をすると、「冗談だよ、ブラザー」と宿のインド人が笑う。
桃園の誓いなんてしてねーし。

この話は半分ホントで、たしかにガンジス川にはワニが棲んでいるけど、人を襲うことはなくて、逆に人間を恐れて近づいてこないという。
でも水死体は食べるようだ。

 

ガンジス川にひそむワニ、インドガビアル
全長4~6メートルというから、見たらパニックになる。ワニだけに。

 

さて日本で毎月10日は金比羅(こんぴら)の縁日で、その1年の初めの日、1月10日は「初金比羅」の日になっている。
「こんぴらさん」の名称で、全国の庶民に親しまれている金毘羅(または宮比羅:くびら)なんだが、この武神は薬師如来十二神将という仏教の敵とたたかう戦闘集団のリーダーだから、その攻撃力と破壊力はすさまじい。

 

右下の腰をクネッとしているが金毘羅

 

十二神明王がひとり伐折羅(ばさら)、または迷企羅(めきら)

 

薬師如来を守る十二神将
昼夜の十二の時、十二の月、さら十二の方角を守ることから12体いるという。

 

全国的にも有名なこの神、金毘羅のルーツをたどると、ガンジス川のワニにいきつくのをご存じだっただろうか。
さっきのインドガビアルか別のワニかは知らんけど、ガンジス川に生息しているワニが神格化されて「クンビーラ(またはマカラ)」というヒンドゥー教の神となった。
さらにこれが仏教に取り入れられたあと、十二神将の筆頭・宮比羅(金毘羅)となって日本で信仰されるようになる。

クンビーラ(マカラ)はガンジス川を司る女神ガンガーのヴァーハナ(乗り物)でもあることから、讃岐国象頭山松尾寺金光院(現在の金刀比羅宮)では海上交通の守り神の金毘羅大権現として信仰されてきた。

金毘羅信仰

 

マカラの像とそれが描かれたレリーフ

 

 

四国の金毘羅宮の説明によると、「金毘羅大権現は歴朝の尊崇を受け、また、諸国の大名武将から一般庶民に至るまで」広く信仰された。
もともと水の神さまだったことから、特に舟乗りからの崇拝を集め、港を見下ろすような山の上に金毘羅宮や金毘羅権現社が全国各地に建てられた。

 

金刀比羅宮のキャラクター『笑顔元気くん』

これがガンジス川のワニの最終形態。

 

 

こちらの記事もいかがですか?

日本 「目次」

インド 「目次」

ガンジス川②神聖でも汚い理由。汚れと穢れの違い。動画付き

 

1 個のコメント

  • >この話は半分ホントで、たしかにガンジス川にはワニが棲んでいるけど、人を襲うことはなくて、逆に人間を恐れて近づいてこないという。(改行)でも水死体は食べるようだ。

    これ、必ずしも「だから安全」という話ではないみたいですよ。
    ガンジス川のワニが人を襲うかそれとも逃げていくかは、人間側の「数」によるのだという話を読んだことがあります。つまり、ガンジス川の沐浴も、あまり人のいないところで一人だけで行うようなことは危険かと・・・。
    まあただ、ガンジス川のワニに喰われたならば、天国or極楽へ行けることだけは間違いないのでしょうね。そのインド人の言うとおりです。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    アバター

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。