東南アジアの人たちと日本人の違い:個と集団・時間と責任感

 

1月19日は空気清浄機の日。
「119」に「うき」をくっつけて「いい空気」にしたというから、これは語呂合わせを超えてもはやこじつけレベル。
でもせっかくだから便乗させてもらおう。

前に日本の大学で学んでいたベトナム人2人とインドネシア人2人、計4人の留学生から、日本人との価値観や文化の違いについて話を聞いたので、これからそれを紹介しようと思う。
全体的に言うと、日本社会ではみんなが協力して「いい空気」をつくるよう行動することが求められるけど、ベトナム人・インドネシア人ではそのあたりの感覚が違う。ゆるい。

タイ人やミャンマー人との付き合いをふくめた個人的な見方をさせてもらうと、東南アジアの人たちは、全体を考えてそれに自分を合わせることより、その時々の自分の気持ちや都合を優先する傾向が強い。
だから日本人には”自分勝手”に見える。(ことがある)

 

 

さて、話は4人の留学生の日本体験だ。
みんな大学の文化祭でいろいろな日本人と協力しながら、イベントの企画や運営をした経験がある。

あるとき文化祭の話し合いがあるということで、インドネシア人の学生が開始時刻の5分前にその教室に行ってみると、日本人学生はすでに全員席についていた。
「あれには驚きました」とインドネシア人が言うと、「それが日本人だよねー」とベトナム人も同意。
*そのあと何度か行われた打ち合わせでも、遅刻した日本人は1人もいなかったという。

彼らの感覚だと仕事の会議じゃなくて同じ学生同士の打ち合わせなんだから、5分や10分遅れても誰も気にしない。むしろそれを問題視するほうがおかしい。
でも日本人は違った。

そのときその場にいなかったのは彼の知り合いのベトナム人だけで、予定時刻を10分ほど過ぎたあとに、彼は歩いて部屋に入ってきた。
そして先に座っていた自分に気づくと「ヨオ」と笑顔であいさつをして、何も言わずに自分の席へ座る。
*ここではそのベトナム人を「グエン」としよう。

リーダーの日本人学生は「では始めましょう」と言うより先に、遅刻したベトナム人に向かって「グエンさん、予定の時刻は1時でした。いままで何をしていたのですか?」と問う。
思わぬ事態にビックリするグエンさん。
「友達と話をしていました(それが何か?)」とド正直に答えると、「みんなあなたを待っていました。打ち合わせはまたありますから、これからは時間に気をつけてください」とリーダーが釘を刺して、打ち合わせはスタートした。

 

このあと「10分遅れただけで、あの言い方はないだろう!」というグエンの不満から、ベトナム人のあいだで、日本人との価値観や文化の違いについての話し合いが始まった。
あの場で「スルー」ができなかった日本人学生の考え方は理解できるけど、みんなの前で遅刻をとがめ、理由まで言わせたのはやり過ぎだ、というのが彼らの見方。
リーダーの気持ちも理解できるとはいえ、やっぱりグエンの怒りに強い共感をおぼえる人が多かったという。

これは話を聞いたボクの想像。
その場にいたほかの日本人学生も「遅刻してきた人間が黙って座るのはあり得ない!」と内心で思っていたから、リーダーは立場上それを察して代弁し、謝罪させないまでもせめて理由ぐらいは言わせる必要があると判断した。
これをしないといまから会議をしたり、これから協力していく空気にはなれなかったと思ったのだろう。

 

この場合はインドネシア人もベトナム人と同じ考え方で、同じ学生同士の集まりで5分10分の遅刻はまったく問題ない。
インドネシアの大学だったら、30分遅れる学生がいてもふつう。下手したら1時間かそれ以上、最悪忘れてる。
それでもその間、ほかの人はおしゃべりをしたりスマホをいじったりして楽しく時間をつぶすから、遅刻してきた人に説明や謝罪を求めることはない。
開始時間は厳守ではなくて目安だから、「みんな来ましたか。では会議を始めましょー」と普通はなるという。

これも想像だけど、全員を10分待たせたあげくに何食わぬ顔で、自分には関係ないというように席に座るのは空気を読めないにもほどがある。
それでリーダーとしては責任感の強さから、ほかの人にも言い聞かせる意味で「時間厳守」を伝えたのだろう。ただ学生ゆえに経験が少なくて、言い方がストレートすぎた。

 

 

でもここはジャパン。
郷に入っては郷に従えで、日本では同じ立場の人間でも、一緒に活動するのなら5分前行動、少なくとも定刻通りという絶対順守のルールがある。
それを「文化の違い」を理由に否定していたら、日本人と何かを計画して進めていくのはムリ。

そんな話をインドネシア人とベトナム人にすると、「それは分かります。でもみんなの前で叱るような、相手のプライドを傷つけるようなやり方は厳しすぎると思います」という返事が返ってくる。
ではこの場合、何が正解だったのか?
インドネシア人ならその場では何も言わず、あとから個人的に本人に言うか、第三者を通して「今度から時間は守れよ」と伝えるのがいいらしい。
ベトナム人もそのやり方がいいと言う。

メンツを大事にするのは日本人も同じこと。
でも、ベトナム人&インドネシア人は他人の視線と自分の見た目をすごく気にするから、そこを傷つけられると急激に腹が立つのでは?
両国の研修生を見ていると収入のわりにはお高く高性能なカメラやスマホを持っていて、バランスが合っていないとよく感じる。
日本人は良くも悪くも「分相応」でそこまで見栄を張らないし、勝負は別のステージでする。

このときボクが、「グエンが遅刻したことは、会議を主催したリーダーのメンツをつぶすことになる」と言っても、「そうなんですか?」と彼らの共感を得ることはできず。

 

こんな文化祭の準備に限らず、グループでプレゼンテーションを行うときも、日本人は集団として活動することがとても効率的で上手だとベトナム・インドネシア人は感心する。
それぞれが与えられた役割をしっかりこなすから、全体としてすごくスムーズに計画が進んでいく。
これがベトナムやインドネシア人だけだったら、きっと予定に遅れる人間やいろんな言い訳が出てきて、能力か責任感のある誰かがそれをしないといけなくなる。

日本社会でいう「空気」とは物質ではなくて、それを乱すとみんなが不快になるという「調和」のことだ。
一人ひとりが時間やスケジュールをしっかり守るのも、ちゃんとその空気を読むから。
自分のせいで全体がストップしたり、迷惑をかけると浮いてしまう。
そうなると相手にされなくなるから、個より”和”を優先して、自分を集団や全体に合わせていく。

それに対して、ベトナム人やインドネシア人は”自分の気持ちや都合”をより大事にする傾向があって、みんながその考え方に理解を示すから、少しの遅刻や遅滞をとがめる空気はない。
日本に住んでいるタイ人やミャンマー人にきいても、この傾向は当てはまると言う。

相対的にみると日本人の協調性と責任感はすごいから、グループ活動をさせるとものすごく強い。
でも東南アジアの人から見たら、細かいし怒りっぽいからときどきイヤになる。
日本の集団主義は欧米人が見ても”異常レベル”だから、karoushiという日本語が英語や現地の言葉になる。

ということで本日のまとめ。

時間を守る感覚と責任感はベトナム人とインドネシア人ではかなり近いけれど、日本人とは銀河系レベルで違う。

 

 

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4 件のコメント

  • >1月19日は空気清浄機の日。(改行) 「119」に「うき」をくっつけて「いい空気」にしたというから、これは語呂合わせを超えてもはやこじつけレベル。

    冒頭のエピソードが爆笑ものでパンチ力あり過ぎ、本文の内容が全然頭に入りませんでした。

    時間厳守の傾向が昔よりも昨今の日本は社会的により強く求められるようになってきた気がします。日本だって少し前には、「沖縄時間」とか「名古屋時間」とかいう言い回しがあって、地方では中央の人間ほど約束の時間に厳しくなくて結構ルーズであることが認知されていましたよね。
    それが今では、レジャーや遊びの約束にまで「5分前集合」を全員がキッチリ守って、それを守らないと非難されるってのは、世界標準でも少し病的な感じがします。
    ロボット? あるいは働きアリやミツバチじゃあるまいし。(そう言えば最近の研究によると、アリやハチの世界にも「怠け者」が一定数はいるのだとか。)

  • 「沖縄時間」とか「名古屋時間」という言葉があったんですね。初耳です。
    昔に比べて日本人の価値観や行動は変わっていますが、たしかに時間厳守の感覚はむしろ強くなっていると思います。
    外国人と付き合っていると、ゆるくなってしまいますが。

  • インドネシア人で日本企業の会社員です。
    日本人は「時間厳守」に拘るわりには、「時間の効率」を全く気にしませんね。
    本題が30分で終わるべきの会議を、だらだらと1時間、2時間続くことも多く、まったく非効率です。
    無駄に細かい資料を作ったり、全員分プリントアウトしたり、(コロナ前だと)無駄に多いメンバーを全員同じ部屋にわざわざ集める。
    みんなの時間を大切にするなら、スタートの時刻を守るだけではなく、ミーティングの効率と会社全体の生産性も考えましょう。
    それが本当の意味での「時間厳守」だと思います。

  • あなたはインドネシア人ですか!
    日本語がめちゃくちゃ上手ですね。

    ご指摘はまったくその通りです。
    日本では会議が始まる時間は正確だけど、いつ終わるか分からない。
    そんな不満を言うアメリカ人、タイ人、インド人がいました。日本人でも嫌になる人は多いですが。
    これは改善しないといけませんね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。