【日本人とカレー】肉食を嫌ったから、カエルを具材にした?

 

年齢、性別、宗教、右や左の政治思想に関係なく、全日本人から愛されているカレー。

この食べ物が「国民食」として鉄板的な地位を築いたきっかけは、いまから約40年前の1982年(昭和57年)、全国の小中学校でカレー給食が出されたことだ。
それがきょう1月22日だったからその日は「カレーの日」という記念日となって、いまではいろんなイベントが行われている。

ならばこのブログも乗らせてもらおう、そのビッグウェーブに。

 

 

カレーの本場はもちろんインド。なんだが、現在の日本のカレーはイギリス・カレーがルーツになっている。
19世紀後半、インドを植民地支配していたイギリス人が、現地の料理に刺激を受けてカレー粉を考案し、それを使ったカレー作りが明治時代の日本へ伝わった。

こうして日本で食べられるようになったカレーは20世紀のはじめ、海軍や陸軍のメニューとして採用されたことから人気が広がり、カレーは全国へ浸透していく。
*「脚気予防対策」として海軍の給食にカレーを取り入れた高木 兼寛(たかき かねひろ)は有名。

戦前は軍隊、戦後は学校給食のメニューになったのだから、これが国民食にならないはずがない。

カレーに入れる肉は、牛肉、豚肉、鶏肉は基本中のキホンで、ほかにもカツやソーセージもよくあるし、個人的に「こんなのもあるんだ~」と思った具材が砂肝。
海に囲まれた国らしく、サバ、カキ、エビ、イカといったシーフードも日本人はカレーにぶち込む。

 

先人たちの試行錯誤によって、いまの日本は「カレー戦国時代」。
そう言っていいほど全国各地にいろんな具材があるのだけど、カレーが登場したころの日本はそうでもなかった。
むしろ逆で、幕末や明治初期の日本には肉を食べる文化がなかったから、政府は国民に肉食の習慣を広げるためにいろいろと苦労をする。
「外国人はたたき斬れ!」という尊王攘夷はもう昔の話で、明治の日本は欧米人と付き合う必要もあって、食をはじめとした西洋文化を積極的に吸収していた。

でも、「肉食NG」の伝統が長くつづいた日本人はなかなか肉を受けつけない。
日本も欧米の価値観や習慣を取り入れるべき!と考えていた福沢諭吉も、変化を受け入れない当時の日本人の“頑固さ”をなげく。
「肉や牛乳を摂取することは体にいいんだ。だからみんな肉を食べようぜ!」と福沢が言っても、それを嫌がって拒否する日本人が多くいたと著書「肉食之説」に書いてある。

其肉を用ひ其乳汁を飮み滋養の缺を補ふべき筈なれども數千百年の久しき、一國の風俗を成し、肉食を穢たるものゝ如く云ひなし、妄に之を嫌ふ者多し。

*「數」は数、「妄に」はみだりに。

 

ポーランド人が「わけわからん!」と驚いた日本でのカレー体験

 

この時代には、肉を食べると心身が穢(けが)れると考える日本人が多くいた。これは仏教や神道の影響だろう。
といっても日本人が嫌ったのは豚や牛などの四足獣の肉で、魚や鳥は問題なかったから寿司や鴨肉は江戸時代に人気だったし、稲を食べる「害鳥」のスズメは焼き鳥にされた。
牛や豚を食べる人もいたにはいたから「完全禁止」というわけでもないけれど、伝統的に肉食の文化は日本の社会にはなかった。

日本で初めて西洋料理の作り方を紹介した本「西洋料理指南」には、カレーについてこんな記述がある。

鶏海老、鯛、蠣、赤蛙等ノモノヲ入テ能ク煮て後「カレー」ノ粉一匙ヲ入煮ル

キッコーマン国際食文化研究センター

 

鶏、海老、鯛(たい)、蠣(かき)はいいとして、赤蛙?
「カレー戦国時代」であらゆる具材のある現在の日本でも、カレーにカエルはありえない。
でも「西洋料理指南」は日本初の西洋料理のレシピ本だから、ここにある内容は当時の日本人の常識の範囲内にあって、その作り方は全国の“標準”となったはず。

カエルを具材にしたのは、牛や豚などの四足獣の肉を「穢れ」と考えていた影響があるのだろう。
でもいまの日本人とっては、カエルを食べることのほうが「穢れ」に感じるのでは?
少なくとも「ゲテモノ感」があって、とてもレストランのメニューには出せない。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

「飢え」が変えた食文化。日本と世界(ドイツ・カンボジア)の例

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東南アジア 「目次」

 

3 件のコメント

  • 今の日本じゃあり得ないかもしれませんが、ウシガエルだって、アメリカザリガニだって、元々は食用として日本へ持ち込まれた外来生物が野生化したものですよね。

  •  ウシガエルもアメリカザリガニもミシシッピアカミミガメも、ネギと生姜と味噌で炒めると美味しいです。まあ、ウシガエル以外は捌くのが面倒ですし食べるところも少ないんですけど。
     
     個人的に色々食べた経験からしますと、一番美味いのはカミツキガメです。また、甲羅も小さく捌きやすいのもgoodです。その他、ブラックバスなど外来動物は大体美味なので、kokontouzai様にも一度挑戦していただきたいですね。
     ※野生動物の肉は固いので、顎と歯の負担が大きいです。ご注意下さい。

  • 冒険者ですね。
    カミツキガメというのは初めて聞きました。
    わたしは蛇やカエルが限界ですね。
    海外でゲテモノ食いに挑戦しようとしましたが、見た目にやられました。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。