『動物虐待』についての、欧米人とアジア人の価値観の違い

 

東南アジアやインドでよく見るココナツはかなり優秀。

ココナツウォーターは安全な飲料水になるし、繊維は燃料として火を起こすために使えるし、ココナツの木や枝は家や船、家具の建材になる。
ヒンドゥー教徒は神様にココナツへのお供え物にしている。
「ココナツはすべて利用することができて、無駄なところがない!」とタイ人やインド人が話していたことはこの記事で書いた。

囲炉裏みたい?インド人とタイ人の『ココナツの使い方』

 

 

 

そんな生活必需品のココナツをめぐって、アメリカの動物権利擁護団体(PETA)がタイの企業に激怒した。

ココナツミルク製造でタイの会社がサルを強制的に使役しているとPETAが発表し、それをうけて米小売業大手「ターゲット」がこの企業の製品の販売を中止。

PETAが発表した、タイ企業による「サル搾取」の実態が米CNNの記事にある。(2021.01.30)

サルは強制的にココナツ収穫に駆り出され、古いタイヤに鎖で縛り付けられ、自分の体よりわずかに大きい檻(おり)の中での生活を強いられていることなどが判明したと指摘。

サルの「搾取」疑惑でココナツミルクの販売停止、米小売り大手

「コストコ」もきょねん、この会社のココナツミルクを売るのをやめた。

 

タイのココナツに関する産業では、こんな環境かは別として、サルを労働力として使うことはよくあるらしい。
でこのニュースに日本のネットの声は?

・人間の搾取はよくて猿の搾取はダメなの?
・トリュフに豚は許されるのか
・牛、豚、鶏、犬。俺たちも助けて!
・え?先進国だって後進国を搾取してんじゃん。
・じゃあ養蜂業も禁止にしないとな
蜂さんが可哀相だろ
・これがダメなら象使いもサーカスも犬のショーも鵜飼もトリュフ豚もダメ

 

動物の保護を訴えるドイツの切手

 

いまとなっては突っこむ気力もなくなるが、環境と動物の保護に限っては、ナチス=ドイツは模範的な政策を行っていた。

大規模な自然保護計画と現実の政治的介入の配慮を両立させた、世界初のものであると評価しているように、結果はどうあれ、多くの論者はナチス・ドイツの環境保護政策の水準の高さを評価している。

ナチズムと環境保護

 

ネット掲示板への書き込みだから層は限定されるけれど、こうした動物愛護・虐待の話になると、欧米人の価値観には距離を置いて、アジア寄りの見方をする日本人は多い。

個人的にも数年前、日本の鵜飼を「動物虐待だからヤメロ」と非難する欧米メディアの記事を見て、このへんの感覚は話して分かり合えるもんじゃねえな、と思った。

ネットでは犬猿の仲の韓国についても、犬肉食を非難する欧米メディアに、「犬食は支持しないけど、欧米人が他国の食文化に口出しすんな」と結果的に韓国を擁護する日本のネットユーザーはわりといる。
鵜飼いもそうだがこれには伝統文化の面があるし、それにかかわる人たちの生活もある。
だから単純に、正しい/間違いを判断することはできない。
ただこんな日韓友好は、慰安婦問題や徴用工問題の話になると消え失せる。

 

動物を保護する欧米の法令については、ここに日本女子大学の尾崎裕子教授の説明がある。

ペットをめぐる法律(2)海外編 

 

飼育員を殺したことで処刑されたゾウのメアリ(1916年・アメリカ)
この『ショー』も動物虐待の事例として知られている。
いまのやさしさは、かつて残酷だったことの裏返しか?

 

見方や価値観の違いはあっても、こういう動物の使い方ならアジア人も欧米人も人類が反対する。

毎日新聞の記事(2021年1月31日)

まさかそんな生き物が… 中東にうごめく「動物兵器」の実態とは

ウマやヒツジに盗聴器を付けて、敵の陣営に送り込んで情報をゲットする。

21世紀にそんな方法を使う国があるのか?
という疑問は素人のもので、専門家に聞くと「軍事のプロほど、まさかそんな原始的な手法で、と思われる作戦も軽視しない」と記事にある。
この日本人記者がシリアを取材したときには現地の人間から、「ロバやウシには絶対に近付かないように」と注意を受けた。
テロリストがロバに爆発物を載せて、テロを起こした事例があったという。

動物が『殺人兵器』として利用されるのは問答無用でダメだとしても、ココナツを取るサルについては、環境を良くしてごほうびを充実させたらOKでは?
それか人間の手の届くココナツをの木を開発するか。

 

 

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海外にはない!?日本人の信仰と動物愛護精神「ペット観音」

宗教 「目次」 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。