2年前の秋、3人(か4人)のインドネシア人と一緒に紅葉を見に行った。
インドネシアは基本夏しかないから、赤、黄、緑のカラフルに彩られたこんな自然は見たことないと言う。
「インスタ映え」ということばがインドネシア語にあるか知らんけど、その考え方は確実にあって、SNS用に映える画を撮ろうと、同じ木や葉を距離や角度を変えて何度も撮影する。
さてインドネシア国民のほとんどはムスリム(イスラーム教徒)で、女性は髪を覆うヒジャブという布を巻いている。
イスラーム教では「成人に達した女性は、ここを除きどの部分も見られてはならない、と言って預言者は顔と手を示された」といった教えがあって、髪を隠す女性が多い。
そのための布がヒジャブでこれはアラビア語で「覆うもの」という意味がある。このヒジャブをインドネシア語では「ジルバブ」という。
相手がインドネシア人なら「ジルバブ」でいいけど、一般的にはヒデブ、じゃなくてヒジャブで覚えたほういい。
これならモロッコ人にもバングラデシュ人にも、世界中のイスラーム教徒に通じるから。
このとき彼らと話をしていてなぜか忍者の話題になり、インドネシアでは女性がヒジャブを付けた姿を「ニンジャ」と呼ぶと聞いた。
いまや忍者は世界で最も有名な日本人なんだが、忍者ほど誤解にまみれている存在もない。
英語版ウィキペディアにある「Ninja」の説明をみると、彼らには超人的・超自然的な力があって、空を飛んだり透明になったり、変身したり複数に分身することができる。さらに、恐ろしい生き物を召喚することができる(クチヨセ)といった言い伝えがあると書かれている。
Superhuman or supernatural powers were often associated with the ninja. Some legends include flight, invisibility, shapeshifting, the ability to “split” into multiple bodies (bunshin), the summoning of animals (kuchiyose), and control over the five classical elements.
江戸時代にはすでに現実離れした忍者話があった。
これは自来也(じらいや)という空想上の忍者。
このときのインドネシア人もそんな感じで、忍者には超人的な能力があり、不思議な魔法を使うことできるといったイメージを持っていた。
実際の忍者は仕事の依頼がないときは、山奥で農業をしていたのだが。
日本のアニメやハリウッド映画などの影響で、ニンジャはインドネシアでも知らない人はいないほど有名らしい。
だから、ヒジャブをかぶった姿を見て「ニンジャ」を連想するのは自然なことだという。
でも決して、ホメことばではないとのこと。
ネットで調べると、20年ほど前にインドネシアの首都ジャカルタに住んでいた日本人が、ヒジャブを付けた女性が「ニンジャ」と呼ばれていたとブログに書いている。
ジャカルタでもイスラム系の学校の女性徒の制服はこのNINJA姿で、学校によってその色が違うので、「NINJA PUTIH(白忍者)」「NINJA ABUABU(灰色忍者)」と呼ばれています。
いまはわからないけど、インドネシアでは女子高生がニンジャと呼ばれていた。
現在ではヒジャブの下に付けるインナーを「ニンジャ」と呼んでいるようだ。
これで首や胸元が隠すことができて、あとはヒジャブを巻くだけで楽だから、ムスリム女性の人気アイテムになっているらしい。
インドネシアの通販サイト「HijUp」で販売されている「Ninja Inner」。
お値段、49,000ルピーなり
商品名をニンジャにするのなら、忍者に対してそれほど悪いイメージはないのだろう。
インドネシアのユニクロでもこんな「ニンジャ」が販売されているという。
いま思うと2年前に聞いた話もヒジャブを巻いた姿ではなくて、このインナーのほうだったかもしれない。
ガチの忍者とはかなり離れてはいるものの、日本文化が海外へ広がるのはいいことだ。
でもそのうち「Ninja」の元ネタが、日本の忍者と気がつかないインドネシア人が出てきそう。
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その黒いヒジャブですが、忍者にも似てはいますけど、何となく少し前に流行った女性芸人二人組の「やっほーやっほー、ヌー◯ラやっほー」みたいに見えます。色が違うか。
Ninjaが日本由来であることを知らないインドネシア人が増えたとしても、ま、しょうがないでしょうね。いいんじゃないですか、そのうち忍者漫画が日本でまた流行って、それが翻訳されて世界へ広がる日もくることでしょう、きっと。
そんなことより、「忍者の起源はウチの国だ!」などというデタラメ発言が、大規模に世界へ発信されるようなことに注意するべきだと思います。