もう去年のことだけど、ドイツ人とインドネシア人と一緒に焼津さかなセンター、清見寺、久能山東照宮と、静岡の食と歴史と文化を満喫するツアーに行ってきた。
2人とも日本の大学で学んでいた男子留学生で、いまはそれぞれ母国に帰って日本をなつかしく思っている。
ということで今回はそのとき彼らから聞いた話を書いていこうと思う。の第5弾。
前回までのはこれですよ。
焼津さかなセンターにある食堂で昼食を食べているときに、日本へ来た外国人にボクが必ずする質問「あなたが日本で驚いたことは何ですか?」を聞いてみた。
するとドイツ人が「これですよ!」と上の写真のしょうゆを指さす。
「ドイツで日本といったら、何といっても寿司のイメージがあります。それでドイツでもしょうゆは有名になってきているのですけど、日本ではしょうゆにいろんな種類があるんですね。刺身とねぎとろで、使うしょうゆが違うとは思いませんでした」
これはインドネシア人も同じで、別の日本料理店でも食べ物に合ったしょうゆが用意されていたのを見て、日本人の配慮やきめ細かさに感心したと言う。
日本のしょうゆで最古のものは縄文時代後期にあった「醤」(ひしお)と言われていて、当時から醤の種類には果物や野菜などを材料とした「草醤」、魚からつくる「魚醤」、さらに穀物からつくる「穀醤」の3つがあったという。
鎌倉時代にはしょうゆの元になったとされる調味料の「溜」(たまり)が登場して、その後もなんやかんやあって、日本はいまのような世界的なしょうゆ大国となった。
*しょうゆの歴史については、キッコーマンのHP「しょうゆWORLD(ワールド)」に詳しく書いてありますよ。
現在では濃口しょうゆ、淡口しょうゆ、たまりしょうゆ、さいしこみしょうゆ、白しょうゆ、だししょうゆなんかがあって、さらには各メーカーが創意工夫をこらしてそれぞれの料理に特化したしょうゆを作り出している。
刺身、ねぎとろ、TKG(卵かけごはん)用のしょうゆまで生まれたいまの日本は百花繚乱というか、もはや「しょうゆ戦国時代」に突入したと言っても過言ではない。
*百花繚乱(ひゃっかりょうらん) とは、様々な種類の花が色とりどりに咲き乱れる様子。多数の優秀な人々、独創的な人々が一堂に会する状況のこと。
ドイツやインドネシアにもいろいろな調味料があるけど、1種類がここまで細分化されているのは彼らにとっては驚き。
ドイツ人はしょうゆの工場見学に行ったとき、そこのしょうゆは数十年も継ぎ足しされていると知って、日本の歴史や文化に敬意を持つ彼はしょうゆづくりの背景や職人の思いに触れて深く感じ入ったと言う。
だから、「それはちょっと汚いですねー」と無邪気に笑うインドネシア人に、不快そうな視線を送ったのをボクは見逃さなかった。
江戸時代に兵庫で生まれたといううすくち醤油(左)と、江戸で生まれたこいくち醤油(右)
このときインドネシア人が母国にも、しょうゆのような調味料があると言う。
魚からつくる甘いソースと言っていたから、ケチャップマニス(kecap manis)のことだろう。
ケチャップといってもトマトケチャップじゃなくて、インドネシアではソース全般をこう呼ぶ。
マニスとはインドネシア語で「甘い」という意味。
しょうゆが日本料理のマストであるように、インドネシア料理にケチャップマニスは必須らしい。
ナシゴレン、ミーゴレン、サテ、ガドガド等、サンバルと共にインドネシア料理の調味には欠かせない調味料である。
これがケチャップマニス。
見た目はしょうゆにクリソツ。
ドイツ人にドイツ料理でよく使う調味料を聞いたら、「塩とコショウかな」とシンプルこの上ない答えが返ってきて「え?」と拍子抜け。
「塩・こしょう」といったら、ひょっしたら3種類の醤(ひしお)を使っていた縄文時代後期よりシンプルでは?
もちろんそんなことはないとしても、インドネシア人もボクも同じでこの答えには驚いていた。
でもドイツにはこんな「マギ」という有名なソースがあって、しょうゆみたいに肉や野菜の料理にかけるという。
でも130年ぐらい前にできた新しいソースでドイツ料理にとっては、日本料理としょうゆみたいな深いつながりはないらしい。
このドイツ人が言うには、一般的にドイツ人は料理にあまり関心がない。
こういう外国人からすると、日本料理の多彩さや細部へのこだわりは感動的だろう。
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>しょうゆが日本料理のマストであるように、インドネシア料理にケチャップマニスは必須らしい。
インドネシアには、タイで一般的な「ナンプラー」やベトナムの「ニョクマム」など、「魚醤」の類は存在していないのですか? これらの「魚醤」は、日本の醤油とはちょっと匂いが違うけど、全体的な味の傾向としては非常によく似てますよね。
>このドイツ人が言うには、一般的にドイツ人は料理にあまり関心がない。
あーこれ、全く同感です。ドイツ人(ゲルマン)だけでなく、イギリス人や北欧人などアングロ・サクソン系の人々も料理への関心が薄いと思う。概して、アルプス以北のヨーロッパにはまともな食べ物が少ないと、日本人なら誰でも感じると思いますよ。酒だって、ビールとウィスキーなど麦芽系のものばかり。でも、だからこそ、戦争には強いんだろうな。粗食に耐えられなきゃ戦争には勝てません。
米国も、主流派(WASP)はアングロ・サクソン+ゲルマンだから、国が大きい割にうまいものが少ないんだよな。(ただしNYとか大都会は別として。)で、やっぱり米国も戦争には強い。
それに比べて、スペイン、南仏、イタリア、ギリシャ、・・・など地中海周辺ラテン系の人々は、食とワインへの関心が高くて、実際にうまい食い物が多いです。米国だと、NYやモントリオール、それに南部諸州でうまいものが食えるのは、これもラテン系の人々のおかげだと思う。
日本もどっちかっていうと、戦争が得意というより、食に関心が高くてうまいものが多い国だと思います。
その方がいいです。
ケチャップマニスは魚醤の一種だと思いますよ。
たしかに地中海沿岸のヨーロッパ諸国はグルメ天国ですけど、お金にはだらしないイメージがあります。
ヨーロッパ北側の国に比べて借金が多いですし。
日本はその点、両立しているように見えます。
よく行く近所の海鮮居酒屋さんには卓上に醤油が3種類並んでいます。さしみ醤油に、だし醤油、それとおそらく九州のではないかと思うんですが甘口醤油です。ものすごく甘いです。
で、醤油の他には関西ではポン酢の種類が桁違いに多いです。スーパーの棚一面がポン酢やったりします。いろんなメーカーやいろんな味ので2、30種類並んでることもザラです。これは国内でも関西以外の人間が見ると驚く光景ですね。
しょうゆ3つなら浜松の飲食店でも見ますが、スーパーにポン酢30種類というのはないですね。
日本人でも驚きですから、外国人にはなおさらだと思いますよ。
知人は海外でワインの種類の多さに驚いたと言っていましたが。