きょう3月3日は、言わず最上もがのひな祭り。
そんなことを日本に住んでいたフィリピン人が思い出して、日本ではこの日、娘の健康や幸せを願ってひな祭りをおこなうとSNSで知人友人に紹介していた。
「Today is Hina Matsuri in Japan where Families celebrate The Happiness and Good Health of their Daughters.」
ということでこれから、この日本文化の由来をみていこう。
この日はグーグルにもお内裏様とお雛様
ひな祭りをずっとず~っとたどっていくと、2000年ほど前の中国、漢の時代におこなわれていた「上巳」(じょうし)という行事にいきつく。
上巳は3月3日の五節句のひとつで、この時期には桃の花が咲くことから「桃の節句」とも呼ばれる。
おっ、ひな祭りとの接点が見えてきた。
ちなみにあと4つの節句は人日(1月7日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)だ。
上巳という行事について、『後漢書』礼儀志上にはこう書いてある。
「官民皆な束流の水の上に潔し、洗濯祓除と日う。宿き垢痰を去りて大潔を為すなり」
立場に関係なく国民が水辺に行って身体のケガレを祓い(洗い流し)、心身ともにキレイさっぱりしたらしい。
時代とともにこの「祓除」の行事が変化していき、やがて宮中でより洗練された形式でおこなわれるようになる。
それが曲水の宴(うたげ)だ。
人工の流水をつくってその上に酒を入れた盃を浮かべ、酒を飲んでは漢詩をつくるという優雅な宴に変化した。
この曲水の宴は唐の時代になると、皇帝とその側近がおこなう宮中行事だけではなく、上流階級の人たちもお楽しみとして私的に開くようになる。
ただこうなると本来の禊(みそぎ)の意味はなくなっていく。
自然にある川へ出かけて行って、その水を身体に浴びるのがメンドーくさくなり(それに寒い)、上巳の儀式が簡略化・上品化したのだろう。
毎日新聞のコラム「余禄」は、曲水の宴が日本のひな祭りの由来になったという。(2020/3/2)
災いばらいの意味もあり、日本に取り入れられた後、紙の人形などを流すようになり、飾りびなにつながったという。先人たちは中国から政治制度や文化を学ぶ一方、独自のアレンジを施した。ひな祭りもその一つかもしれない
ひな祭りの由来は古代中国で…
下の写真は韓国・慶州にある「鮑石亭」という遺跡。
ここで古代韓国人も曲水の宴をしていたのだ。
曲水の宴で酒を飲むけれど、日本では和歌を詠み、災いばらいの意味で穢れを人形などに移して水に流すところが中国とは違う。
漢詩を詠んで酒を飲むというのは本当に中国的な宴で、穢れを祓い落とすというのは日本的な、神道的な行事だと思う。
ただ、もともとの始まりとなった上巳の行事は後者に近い。
むかしは子供がすぐに死ぬことがよくあったから、紙でつくった人形に不幸の原因となる穢れを移して水に流す「流し雛(びな)」が行われた。
ちなみにこの前インド人に流し雛の話をしたら、「それはヒンドゥー教徒がガンジス川で沐浴をするのと同じですね」と言う。
ケガレを移すという発想は違うけど、神聖な水でケガレを流し落とすという点では確かに似ている。
本日のまとめ
3月3日の桃の節句のとき、古代中国で上巳がおこなわれていて、それがやがて曲水の宴という宮中行事となり、日本へ伝わって流し雛となった。
そして紙人形が精巧な3次元の人形となって、流すものとは別に、家に飾るものとして「飾り雛」となる。
そして江戸時代になるとこれが庶民の人形遊びとなって、全国的な行事となり発展していった。
その結果いまでは、「Today is Hina Matsuri in Japan」とフィリピン人がSNSに投稿するようになる。
ちなみにこのコメントには「That’s awesome. I’m sure it was an unforgettable experience」(すごい!それは絶対に忘れられない経験になるね)という返信があった。
ただひな祭りの由来には諸説あるから、ここで書いたことはそのひとつと思ってほしい。
では、ハッピー・ひな祭り!
この人物は戦前の日本を代表する東洋史学者で、京大の学宝と呼ばれた内藤湖南(1866年 – 1934年)。
日本文化の特徴について内藤湖南はこう書いた。
日本には、文化の種が出來上つて居つたのでなくして、只文化になるべき成分があつた所へ、他の國の文化の力によつて、段々それが寄せられて來て、遂に日本文化といふ一の形を成したのでないかと思はれるのであります。
「日本文化とは何ぞや(其二) 内藤 湖南」
*來は来、只はただ、遂にはついに。
日本の文化には日本人が独力でうみ出したものもあれば、このように他国の影響を受け、独自の変化を加えてつくり出したものもある。
「中国から政治制度や文化を学ぶ一方、独自のアレンジを施した」というひな祭りも、いまでは日本を代表する文化のひとつだ。
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端午の節句(5月5日)はいちおう「こどもの日」となっていますが、男の子のお祝いの日であることは明らかです。なので男女平等の観点から、桃の節句(3月3日)も「ひな祭りの日」として祝日にすべきだと思うのですよ。
だけど、そうなると「LGBTの日」や「ジェンダーフリーの日」も祝日とする必要があるのかな?
鮑石亭遺跡、流しそうめんのための施設にしか見えない。
(ちゃんとしたやつじゃなくて、室内でやる様な代用品のですが)