クーデターから1か月:いまのミャンマー人の思い・国の状態

 

今回は、また闇に包まれたミャンマーの話。

日本での知名度はヤンマーのほうが圧倒的に上で、この国についてはあんまり、またはほとんど知らない人が多いと思われるので、まずは基本を確認しておこう。

ミャンマーはタイとインドの間にある国だ。

 

 

・面積:68万平方キロメートル(日本の約1.8倍)
・人口:5,141万人
・首都:ネーピードー
・民族:ビルマ族(約70%)、その他多くの少数民族
・言語:ミャンマー語
・宗教:仏教(90%)、キリスト教、イスラム教等

以上の数字は外務省ホームページ「ミャンマー連邦共和国 基礎データ」から。

 

ミャンマーは太平洋戦争のとき、インパール作戦が行われた地で日本との関係も深い。

 

20年ほど前、ボクが初めてミャンマーに行ったとき、この国に民主主義は存在しなかった。
選挙によって選ばれた国民の代表者ではなくて、強大な武力をもった軍部が支配する国だった。
民主化の希望の星だったアウンサンスーチー氏は自宅に軟禁された状態で、言論の自由を制限された国民は政治に意見することができない。
軍政を批判すれば政治犯として逮捕され、どこかに連行されて拷問が行われるという話をこのとき聞いた。
旅行をするだけならのんびりした雰囲気だったけど、国民はかなりの息苦しさを感じていたらしい。

当時、こうした人権侵害を理由に欧米を中心として国際社会が経済制裁をしていて、ミャンマーは世界最貧国のひとつだったというのに、軍の関係者は別世界に住んでいた。
特権的な立場にいた彼らは国の富を独占し、何不自由ない優雅な時間を楽しむ。

「こんなこと、ミャンマーのことばじゃ絶対に話せませんけどね」なんて言いながら、何人もの日本語ガイドが軍政への批判や不満をぶちまけた。

 

でも、必ず春はやってくる。
2011年に訪れた民主化の光が約50年にわたる軍政の闇を打ち消して、アウンサンスーチー氏は自宅軟禁から解放され政治活動を始めた。
しかしそんな時代は10年も続かず、ミャンマーはまた冬の時代に戻る。

 

左の女性がアウンサンスーチー氏で、右の男性は父親のアウンサン将軍
アウンサン将軍が身につけているのは日本軍の帽子と軍服らしい。

 

最近、知り合いのミャンマー人がSNSのプロフィール写真を一斉に真っ黒にした。

 

 

1か月ほど前、選挙結果に不満をもっていた国軍がクーデターを起こし、政権関係者を拘束して政治権力を奪った。

「ミャンマーを二度と地獄のような社会したくない」

そう考える人たちが立ち上がって抗議デモが全国に広がると、治安当局は実弾射撃でそれに応えたことで今月3日には数十人が死亡する事態が発生する。

犠牲者やこの「血塗られた日」に対する、黙とう・抗議・怒りの気持ちを「黒」で表したらしい。
知人のミャンマー人にメールできくと「これがいまのミャンマー人の思いです。ことばにできません。それとこの真っ黒な状態は軍政に支配されたいまのミャンマーです」と言う。

この闇は今度は一体いつ消えるのか。

 

 

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1 個のコメント

  • ミャンマーに関係して日本で知名度の高い単語と言えば、ヤンマー(?)以外にも、旧国名の「ビルマ」がありますよね。「ビルマの竪琴」という有名な小説・映画を知っている方も多いのでは。
    ただあの小説、とても感動的ではあるのですが、「ビルマで仏教僧となった旧日本兵が戦死者への鎮魂に竪琴を奏でる」という設定がデタラメ過ぎです。ミャンマーの人達にしてみれば「(上座部)仏教の僧が楽器を?とんでもない大嘘だ!」と怒るのではないかな。
    「済州島での慰安婦狩り」「悪魔の飽食」などと並んで、太平洋戦争に関係して、事実と異なる誤った概念を日本人の頭に植え付けたこれらの作品(?)の罪は大きいと思います。

    > でも、必ず春はやってくる。
    ミャンマーの人々のために、そう信じたいものです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。