ヒンドゥー教徒とガンジス川。コロナでもクンブ・メーラの沐浴

 

広大なインドを悠然と流れる川、ガンジス。

この川はインド人にとって『聖なる川』だ。というワケではないけれど、ヒンドゥー教徒にとってはそれで正解。

ヒンドゥー教の最高神・シヴァの身体をつたって流れるガンジス川は神聖で、その水で身体を清めるとすべての穢れや罪が洗い流されるという。
ヒンドゥー教にはそんなガンガー信仰がある。
でもそれは良いことばかりではないようだ。

信仰によりこの川で沐浴するために巡礼してくる信者も数多い。上記の聖地には沐浴場が設けられ、多くの信者が沐浴を行う。その反面、毎年この川で溺死する人の数も多いと言う。

ガンジス川・信仰

 

この信仰はヒンドゥー教のもので、イスラーム教やシク教などほかの宗教には関係ない。
これは有名な沐浴場所のヴァラナシも同じ。

 

 

沐浴する女性とおっさん

 

 

インド人が伊勢神宮の五十鈴川を見て、「これはヒンドゥー教徒にとってのガンジス川ですね」と言う。

 

ガンジス川で沐浴するには最高の時期がある。
それがヒンドゥー教の祭典「クンブ・メーラ」で、このときには全国から信者が集まり、ガンジス川やヤムナー川などの聖なる川で身体を清める“大沐浴祭り”が行われる。

2013年のクンブ・メーラでは日本の総人口の約8割、1億人の人出が予想されたというから空前絶後だ。

 

2010年にハリドワールで行われたクンブ・メーラ
すき間がないほどの密

 

ヒンドゥー教の聖人、ナガ・サドゥーの人たち

 

インドはいま、クンブメーラの真っ最中だ。

新型コロナウイルスの脅威でも信仰を崩すことはできないらしく、すさまじい数のヒンドゥー教徒が沐浴のためガンジス川に押し寄せたという。

AFPの記事(2021年3月11日)

沐浴の場所を確保しようと老若男女が、数キロにわたりひしめき合っていた。巡礼者らは流れの速い川に身を沈めると祝詞を唱え、花を散らした。

体に灰を塗りつけた全裸の聖人、ナガ・サドゥー(Naga Sadhus)数百人が現れると、沐浴は最高潮に達した。

ガンジス川で数十万人が沐浴 インド

イスラーム教徒やシク教徒などからしたら、「何やってくれてんだよ!」と怒り心頭かも。
日本人が無宗教でよかったと思える瞬間だ。

 

3月11日はクンブメーラ期間中でも縁起のいい沐浴日の一つ、「マハ・シバラトリ」に当たるということで、この日だけで250万人が沐浴したとか。

これだけいれば、なかには「それでもガンジスなら…聖なる水なら、きっとコロナウイルスを洗い流してくれる…」と思ってる信者がマジでいると思う。
でもインド政府の認識はそうじゃない。
まだコロナ禍は続いていると認識しているようで、政府はクンブメーラの規模を縮小したし、巡礼者には新型コロナの陰性証明書を取得するよう求めている。
また当局は、マスクの着用やソーシャルディスタンスを呼びかけているというが、ナガ・サドゥーを見て熱狂する信者にその声がどこまで届くか。

インドではここ数か月で新規のコロナ感染者が急減して、日常生活がほぼ戻ってきているから、マスクをしている人は「ごくまれ」だとか。
マスクなしの生活なんていまの日本人からすると、うらやましいこと限りなしだけど、この国のすることは絶対にマネできない。

 

このニュースに日本人の反応は?

・インド人最強
・すでに半分が抗体を持っていて集団免疫状態
コロナ対策に一番成功したのはインドだったね
・ひ弱な日本人はガンジスの水に触れただけで病気になるぞ
・最強の変異種が出そう
・インド人にとっては、コロナなんて数ある死因のうち、ひとつが増えただけのことだろ。
大したことない。

 

記事のなかで巡礼者のひとりクマールさんがこう語る。

「新型コロナの流行は恐れていないし、みんな自由に動き回っている。インドはすでに新型コロナに打ち勝った。何も心配すべきことはない」

さてガンジス川の神聖力か勝つか、回収不可能なレベルのフラグとなるか。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。