先週、久しぶりに会った台湾人の友人から、「これお土産です」とからすみをいただいた。
なるほど。
台湾でからすみは『烏(カラス)・魚・子』と書くのか。
もしこれを北京語でウーユーズーとか、台湾語でオーヒージーとか言われても意味不明だけど、同じ漢字の民として、文字を見ればからすみは魚の卵だから『魚子』はよくわかる。
漢字はとても有能で、音だけではなくて意味まで表すことができる。
だから日本人が中国や台湾へ行くと、漢字の印象に引っ張られ、勝手な想像をしてドン引きすることがあるのだ。
たとえばボクが台湾の食堂に入ったとき、メニューに『猫耳朶』と書いてあったのを発見。
烏魚子ならいいけど、さすがにこれは衝撃的だ。
台湾の人たちは猫の耳を切って食べるのか!
それまで感じたことのなかった動物愛護精神がふつふつとこみ上げてくる。
以下、そのときの葛藤。
だが待て。いくらなんでも、そんな食べ物があるのか?
さすがに猫の耳は食べないだろう。
いやマテ。「中国人は飛ぶものは飛行機以外、四つ足は机と椅子以外何でも食べる」というではないか。
*これは正確には広東省にある言葉。
台湾の食文化のルーツは中国料理で、かの地ではヘビやサソリ、カエルなんかも食べるのだから『猫耳』が食材になる可能性だってあるはずだ。
あとで台湾人にきいてみると、これは麵料理のひとつだった。
小麦粉を水で練(ね)った生地を小さく切って親指でつぶすから、猫の耳のように丸まった独特の形になる。
これをワンタンのようにスープの具にしたりして食べるのが『猫耳朶』。
この場合は『マァォアドゥオ』だったら問題なく食べることができたし、「猫の耳なんて食べるわけないじゃないですかっ」と台湾人に怒られないですんだ。
でもよかった。
もう少しでボクは台湾人を永遠に許さないところだった。
これがその猫耳朶
画像:Shizhao
台湾や中国にそんな耳料理があるのなら、日本には栃木県佐野市に『耳うどん』という郷土料理がある。
これも作り方は『猫耳』と基本的に同じで、小麦粉を水で練ったものを小さく切って、こんなふうな耳の形にする。
これも麺料理のひとつ。というかうどん。
中国・台湾料理の『猫耳』のネーミングは単純に形だろうが、佐野市の『耳うどん』にはこんな言い伝えがある。
これは悪い神の耳だから、その耳を食べると家での話を悪神に聞かれることがない(=気づかれない)から、一年間その家に不幸なことは起こらない。
そんなゲン担ぎや魔除けの意味があるという。
ところで中国人や台湾人が『耳うどん』の文字を見ると、永遠に日本人を許さないと思うのだろうか。
まぁ『猫耳朶』と食べ比べをするぐらいだろう。
台湾ではパイナップルを自分で切ることを『自殺』、店の人に切ってもらうことを『他殺』と表現するように、漢字の威力は本当に絶大だ。
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