【日本人と寄神】マンボウすら魔除け・海の向こうは神の世界

 

宮城、大阪、兵庫できょう5日から、新型コロナの「まん延防止等重点措置」、いわゆる「まん防」が始まる。
マスコミがこのことばをよく使うようになったことで、魚のマンボウが「風評被害」を受けて、それを”名産”とする宮城県気仙沼市は「まん防」の使用を慎重にしてほしいとの要望をだしたとか。

たしかにこれだと、思わず踊り出しそうなイメージがあるけれど、マンボウこそ新型コロナ対策にはちょうどいいという声もある。

日本で魚のマンボウはきょねん大ブレイクしたアマビエのように、「疫病退散」の魔除けの生物ともいわれているから。

マンボウの絵に「満方」「疫病除ケ」と書かれた江戸時代後期の木版画があって、それを所有する和歌山市立博物館が4月4日からこれを公開することを決定。
このリクエストは前からあって、昨年の8月や12月にもこの博物館で展示されたから、“第2のアマビエ”とウワサされるこの魚を見て、その力にあやかりたいと思う日本人は多いということだ。

 

 

 

 

日本人は珍しいものを見ると、特別視・神聖視することがある。
江戸時代にラクダがやってきたときは大人気となって、ラクダの絵がよく売れたという。
これを家にはって子どもに見せれば疱瘡(ほうそう:天然痘)よけになるという話が出回って、縁起担ぎかガチで信じた人たちがラクダの絵を買っていった。
こういうレアな動物は「霊獣」と呼ばれていて、見るだけでも魔除けの御利益があると考えられた。
マンボウもそんなめでたいものだと思われたのだろう。

強烈なビジュアルをもつこの魚について、はいろんなウワサがある。
港に持ち帰ると「祟(たた)りがある」という恐ろしい話があれば、この魚の泳いでいるところには「カツオの群れあり」とラッキーアニマルのような見方もあった。
昔の日本人はマンボウの肝油を「飲めば胃薬、塗れば傷薬」と考えていたようだ。
そんなことが産経抄(2021年4月11日)に書いてある。

 

島国の日本では海の向こうには神の住む「異世界」があって、海辺に流れ着いた漂着物を神がよこしたプレゼントと考えたり、それ自体を神(寄り神)としてまつる信仰があった。
たとえば岸に打ち上げられたクジラ(座礁鯨)は”偶然”とは考えず、それを神からの贈り物や神として「鯨 寄れば 七浦潤す」「鯨 寄れば 七浦賑わう」なんて言われた。
思わぬクジラの到来によって、飢饉から救われたという伝承は各地にある。
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えびす・寄り神(漂着神)

こういう寄神には流木や舟をはじめ,酒樽,ワカメ,鯨,タコ,白鳥などがある。
これを拾い上げるときには話しかけたり、大きさをはかるといったしきたりが各地であったという。

またクジラやジンベイザメなど珍しい生物が姿を見せると、豊漁をもたらすということから、それを「えびす」と呼ぶこともあった。

 

伊勢神宮の近くにある有名な夫婦岩は、人間と神の住む世界の境を表す鳥居になっている。

 

 

男岩と女岩を結ぶしめ縄はいわば「結界」。
岩の向こう側、太平洋の彼方には神の世界があって、このしめ縄はそこからやって来る神の依り代になっている、と現地の説明板に書いてあった。

 

 

海向こうには異世界があって、漂着物や珍しい生物は神様の贈り物、またはそれ自体が神であるという信仰が日本人にあったから、マンボウも魔除けの「霊魚」とみなされたのだろう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。