博物館の“略奪”文化財:欧米&日本 vs エジプトや韓国など

 

まずはクエスチョン。
世界四大美術(博物)館といえばなんでしょう?
美術館も博物館も英語だと「museum」になって似たようなものだから、細かい違いは知らん顔する。

 

答えはアメリカのメトロポリタン美術館、フランスのルーヴル美術館、ロシアのエルミタージュ美術館、そして台湾の故宮博物院が、世界四大美術(博物)館に挙げられることが多い。
このへんは判断する人によって違うから、イギリスの大英博物館やスペインのプラド美術館が入ることもある。

きょうグーグルのトップ画面にメトロポリタン博美術館が出てきたから、何かと思ったら「メトロポリタン美術館 151周年」ということらしい。
ということで今回の話題は博物館(美術館)だ。

 

まえに韓国人と一緒に鎌倉の大仏を見に行ったとき、大仏の裏でこんな建物を発見。

 

 

日本の建物とはなんか違うと思って案内板を見ると、これは韓国の王宮・景福宮にあった建物だった。
なんでそんなモノがこんなところに?と純粋に疑問に思ったボクとは違って、それを知った韓国人が「なんで韓国の建物がここにあるんですか?」と静かに問う。

そのとき頭の中には「略奪」の文字があったはず。
韓国では日本統治時代に日本へ運ばれた文化財を、ハンギョレ新聞の記事(2017-04-11)のように“略奪”と呼ぶことがある。

“文化財略奪”日帝古美術商の「販売目録」確認

韓国人から鋭い視線を向けられて「うわっ、地雷踏んだ」とあせったものの、もう見なかったことにするワケにはいかない。
でもこういうことは世界中であるようだ。

 

まえにドイツ人と話をしているときに博物館の話題が出たから、「ベルリンにある有名なペルガモン博物館にはいつか行ってみたい」とボクが言うと、「そうだね。あそこはすごい。絶対行くべきだよ」と笑顔で答えることを予想したけど、実際はそうでもなく、ちょっと悲しいというか複雑な表情を見せる。
また何か踏んだ?
でも今回は心当たりがない。
話を聞くと、彼がドイツにいたとき、トルコ人からこんなことを言われたことがあるという。

「ペルガモン博物館にはトルコの文化財がたくさんある。あれはね、トルコのモノなんだ。ドイツはトルコに戻すべきだとオレは考えているんだ」

こんなことを聞かされて、彼は気まずい思いをした。

ペルガモンとはそもそもドイツ語ではなくて、トルコにあった古代都市のことだということをこのとき初めて知った。
そこにあったゼウスの大祭壇(ペルガモン大祭壇)をドイツに持ってきて、それにちなんでこの博物館の名前が付けられたという。
あの博物館では海外から集めたいろんな貴重品を展示していて、中にはかなり強引な方法で持ってきた物もある。
それをいま「ドイツの宝」として展示していることには、後ろめたい気持ちがある。
だからそこを突かれるとイタイ。

 

ペルガモンの大祭壇

 

先週イギリス人と話をしていたときに「ドイツ人がね~」と上の話をすると、ため息をついてそのイギリス人がこんな話をする。

「それは大英博物館も同じ。エジプトやギリシャとかいろんな国から、いまでは許さないような方法で持ってきた物を堂々と展示しているから、“盗品”と言う人もいる。でもその事情はルーブル美術館も同じだし、そんなことを言い出したらキリがない。まぁ自分には関係ないからどうでもいい」

 

盗み取ったものなら法律上は、どれだけ時間がたってもそれは元の所有者に戻さないといけない。
ということで文化財を奪われた国々はいまその返還を求めていて、欧米の博物館を悩ませている。

米CNNの記事で学術研究者のジェフリー・ロバートソン氏が、メトロポリタン美術館、ルーブル美術館、大英博物館などを例に出しこう非難する。(2020.06.12)

世界の巨大な美術館・博物館は、侵略戦争や窃盗などの犯罪行為によって奪われた他国の貴重な文化遺産を保管してきた。その多くは、今なら人道に対する罪とみなされる行為の過程で植民地軍によって奪われた

欧米博物館の「盗まれた」国宝、今こそ返還の時

 

でも美術館・博物館側は文化財の返還を拒否。
“略奪された側”の国の人たちは今日の「メトロポリタン美術館 151周年」を見てどう思ったか。

むずかしいのは当時の文化財の持ち運びが犯罪行為か合法かの判断で、ルーブル美術館はそれを理由にノンとクビを横に振る。

エジプトからフランスへ返還要求がなされている。しかしながらルーヴル美術館は、入手は合法なものであるとしてエジプトからの返還要求を拒否している。

ルーブル美術館・論争 

古代エジプトのデンデラ神殿の彫刻
エジプトに要求にルーヴル美術館は応じていない。

 

 

 

ここで、よいしょっと話を鎌倉に戻す。
この「観月堂」という朝鮮時代の建物は、正当な手続きで朝鮮半島から日本に運ばれたものだから、「略奪文化財」ではない。
だからこの件について、日本人が後ろめたさを感じる必要はない。
それ以外の物については、欧米の博物館の様子を見ながら適切に判断していくしかない。

 

 

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1 個のコメント

  • > この「観月堂」という朝鮮時代の建物は、正当な手続きで朝鮮半島から日本に運ばれたものだから、「略奪文化財」ではない。
    > だからこの件について、日本人が後ろめたさを感じる必要はない。

    それに対して、韓国の窃盗団が日本の対馬から盗み出した木造文化財は、明らかに不当な手続きで日本から朝鮮半島へ持ち出されたものだから、完全に「略奪文化財」です。この件について、韓国人は後ろめたさを感じる必要があります。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。