聞いたことがないとしても、名前を見ただけでこの人物の出身国が推測できるのでは?
その人の名は「ジョモ・ケニヤッタ(Jomo Kenyatta)」という。
日本でいえば明治~昭和の時代を生きたアフリカ人のケニヤッタさんは、生まれたときの名前はカマウ・ウェ・ンゲンギだった。
イギリスからの独立運動を始めた際に、 「ケニアの光」という意味のケニヤッタに改名したという。
1963年にケニアが独立を勝ち取ったあと、ケニヤッタは首相(1963 – 1964年)になり、さらに共和制になるとケニアの初代大統領となった。
イギリスの植民地だった国で反英運動のリーダーとなり、独立に貢献したという意味ではインドのガンディーに似ている。実際両者は1931年に会っているから、通じ合うものもあったのでは?
ケニヤッタもガンディーも、異民族による支配を経験したことのない日本にはいないタイプのヒーローだ。
でケニアってこんな国。
面積:58.3万平方キロメートル(日本の約1.5倍)
人口:5,257万人(2019年)
首都:ナイロビ
民族:キクユ族、ルヒヤ族、カレンジン族、ルオ族、カンバ族等
言語:スワヒリ語、英語
宗教:伝統宗教、キリスト教、イスラム教
国祭日:12月12日(独立記念日)
外務省ホームページ「ケニア共和国(Republic of Kenya)基礎データ」から。
ジョモ・ケニヤッタ
ボクがこんなケニアの英雄を知ったのは、歴史好きのアメリカ人がSNSで紹介したケニヤッタのこんな言葉が印象的だったから。
“When the Missionaries arrived, the Africans had the land and the Missionaries had the Bible. They taught how to pray with our eyes closed. When we opened them, they had the land and we had the Bible.”
「宣教師がアフリカにやってきたとき、われわれアフリカ人は土地を持っていて、彼らは聖書を持っていた。彼らはわれわれに目を閉じて祈ることを教えた。われわれが目を開いたとき、彼らは土地を持ち、われわれは聖書を持っていた。」
そのアメリカ人の話ではこれは、ヨーロッパからきた白人のキリスト教徒がアフリカで何をしたかを表現する、わりと有名な言葉らしい。
尊い神の教えを伝えるとアフリカにやってきて、現地の人をキリスト教徒にしてその地を植民地にしてしまう。
もちろんこれは一面的で一方的な見方。
でもアフリカ人からしてみたら、何の違和感もない常識的な発想だ。
とはいえケニヤッタは、現地住民のキクユ族に初めて教育を行った(読み書きの方法を教えた)のは宣教師だし、医療面でも貢献したと認めているから、白人キリスト教徒を全否定したわけでもない。
良いところは良いと認める公平さが彼にはある。
実際ケニヤッタは「We want to be friendly with whites. We don’t want to be dominated by them」と、白人とは友好的に付き合いたいが彼らに支配されたくはない、と話している。
この言葉を紹介したのはヒスパニック系のアメリカ人で、無宗教の彼は人種差別的な言動を行う白人を毛嫌いしている。
熱心な白人のキリスト教徒はトランプ元大統領の支持者に多いから、バイデン氏が大統領になって彼はいま心からホッとしているところ。
トランプサポーターはどちらかというと聖書を持ってきて土地を“奪った側”だから、ケニヤッタの言葉を嫌うらしい。
ケニアの首都・ナイロビにあるケニヤッタの像
ケニア最大の空港は「ジョモ・ケニヤッタ国際空港」という。
しかし権力は腐敗する。
長期間にわたって絶大な力を握っていると、感覚がマヒしてしまうようで、国の英雄が晩年を汚すことはよくある。
ケニヤッタは死後、2013年の「ケニアの真実、正義、和解委員会」の報告書で、大統領としての権限を利用し、自分と家族のためにケニアの多くの土地を割り当てたと非難された。
Kenyatta was accused by Kenya’s Truth, Justice and Reconciliation Commission in its 2013 report of using his authority as president to allocate large tracts of land to himself and his family across Kenya.
いまもそうだと思うけど、ケニヤッタ家はケニア最大の土地所有者(Kenya’s biggest landowners)のひとつだ。
「われわれが目を開いたとき、彼らは土地を持ち」という不満を、ケニヤッタ家に対して持つ人も多いのでは。
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