イスラム教徒が話す『ラマダン』は、意外とお得で楽しそう

 

このまえ知人のインドネシア人から、「今度スカイプで話をしませんか?」というメールがきた。
彼は日本の大学に通っていて、いまは母国のスラバヤに住んでいる20代の男性。
最近、妹が新型コロナウイルスに感染して大変だったらしい。

まぁそれはいいとして、日本語能力をキープしたいということでネイティブのボクにオファーを出したらしい。
ならば快諾だ。
曜日はいつでもいいけど、20時(日本時間の22時)以降にしてほしいと言うので、理由をきいたらラマダンだった。

世界中のすべてのイスラーム教徒には五つの義務があり、それを五行という。

信仰告白:「アッラーの他に神は無い。ムハンマドは神の使徒である。」と証言すること。
礼拝:一日五回、神に祈ること。
喜捨(ザカート):収入の一部を困窮者に施すこと。
断食:ラマダン月の日中、飲食や性行為を慎むこと。
巡礼(ハッジ):経済的・肉体的に可能であれば、メッカのカアバ神殿に巡礼すること。

ラマダンとは断食という意味ではない。
イスラーム教徒にとって特別な期間(月)の名前で、ことしは4月13日~5月12日がラマダン月になり、この間イスラーム教徒は食べ物はもちろん、飲み水も口にすることができない。
といってもそんな生活を1か月もしていたら、イスラーム教徒は滅亡してしまう。
断食するのは太陽が出ている時間帯だけで、朝日が昇るまえと日が沈んだあとなら、どれだけ食っても飲んでもOKだ。
だから実質的にはいつもより朝ごはんの時間を早くして、昼食はスキップし、あとは夕食まで空腹とたたかうようなもの。
夜にドカ食いをするから、断食月が終わるころには太ってたというワケワカラン現象もたまにあるようだ。

ということで現在その真っ最中にいる、インドネシア人のイスラーム教徒にラマダンについてきいてみた。

 

 

まず1か月の断食をどう思うかたずねると、「それはツライですよ~」と言うかと思ったら、「それはすごく楽しみですね」と笑顔を浮かべる。なんか悟空の「オラ、ワクワクすっぞ!」的な。

ラマダン月が近づくと、「さあこれから断食だぞ~!」という雰囲気が家族や友人からわき上がってきて、みんなが同じ経験をすることで一体感を感じ、きずなが強くなる気がする。
ラマダンの断食は毎年あって昼間の空腹にはもう慣れたから、全体的にみれば楽しいと思うことのほうが多い。
それで彼や周りのイスラーム教徒は「待ってました!」とラマダン月を迎えるらしい。

そういえば以前、インド人のイスラーム教徒がラマダンが始まるとSNSに「Happy Ramadan !! 」と明るくメッセージをしていたのを見て、「断食ってハッピーなんだ」と意外に思ったっけ。
ちなみに病気の人はこの義務を免除される。
だから、もし妹がいまコロナに感染していたら断食はしなくていいらしい。

 

ほかに彼がラマダンを好きなのは、この期間中にモスクへ行って祈ると、いつもの礼拝よりも多くの“ご利益”があるから。
この神聖な月にモスクでアッラーに感謝や祈りをささげると、神の特別な祝福を受けられるという考え方がイスラーム教にはある。
なのでラマダン期間中の礼拝は、彼にとって“お得感”がいっぱいだ。

いつもと同じことをしても、その期間中はありがたみが倍増するというのは、もはやゲームのボーナスタイムですか?
でもそういうメリットがあるから、いつもはモスクにいない知人がラマダン期間中に来ることもある。
そんな思わぬ再会や出会いも、彼にとってはラマダンの大きな楽しみや魅力のひとつ。

彼はラマダン中の礼拝を「ポイント5倍デー」と変な表現をする。
留学中に日本人の友人にラマダンについて説明したら、「つまりはお得なポイント5倍デーだな」と言われた。
考え方としては近いし面白い表現だったから、日本人にラマダンの話をするときにはこの言葉を使っていたと言う。

 

それはいいけど、なんかいい加減で軽いな。
と思ったんだが、考えてみたら日本の仏教も似たようなもんか。

例えば7月10日の「観音様の功徳日」は特別な日で、この日に参拝すると、受けられるご利益は通常の日の4万6000分(約126年分)に相当するという考え方がある。
ならこの日にお参りしたら、あとは一生手を合わせなくてもいいのでは?
そう思ってしまうほど、お得感満載の日が日本の仏教にはある。
信者に宗教施設へ足を運ばせるために、それぞれの宗教でいろんな工夫があるようだ。

でも注意がある。
もしラマダンについてイスラーム教徒と話す機会があって、「ポイント5倍デー」という表現を使うのなら、相手を見てOKそうか判断してからのほうがいい。
「そうそうそれ!」と笑う人もいれば、怒り出す人がいるかも。
個人的な見方だとイスラーム教徒はラマダンの1か月を苦行ではなくて、わりと楽しそうに過ごしている。

 

その日の断食が終わると、家族や友人と一緒にご飯を食べるのも楽しみだとか。

 

 

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2 件のコメント

  • > 個人的な見方だとイスラーム教徒はラマダンの1か月を苦行ではなくて、わりと楽しそうに過ごしている。
    正確に表現した方がよいと思いますが。たとえば下記のように。
    → 個人的な見方だと、自分の知人の範囲内のイスラーム教徒は・・・
    「わりと楽しそうに過ごしている」人が主流派であるとは、私にはとても思えないのですが。

    ラマダンの間に「日没後はいくらでも食べたり飲んだり」するような「不真面目な」イスラム教徒が、彼らの代表例になりますか? その考え方は、むしろ、世界全体のイスラム教徒に対して失礼じゃないですか?
    世俗派はもちろん存在しますが、決して主流派ではないと思う。

  • 日没後に食べるのは問題ないはずです。
    彼らを代表例とは言っていません。
    「ハッピーラマダン!」とみんな言いますし、苦行ではなくて喜んでいる人が多いでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。