世界最大級の歌の祭典にユーロビジョン(ユーロビジョン・ソング・コンテスト)がある。
これはヨーロッパ各国を代表するアーティストが参加して歌を披露し、参加国が投票して大会の優勝者を決定するというイベントで、全世界の視聴者数は1億人~6億人という。
くわしい内容はここを見てくれ。
友人のイギリス人が言うには、「フランスはイギリスが嫌いだから、ユーロビジョンでは絶対にイギリス代表に投票しない!」。でもどうせイギリスも同じでしょ。
2021年のことしはイタリアのロックバンド「マネスキン」が優勝し、授賞式でメンバーの一人が世界全体に向けて、「ロックは絶対に死なないぜ!」と叫んで話題になった。
ロックはもうダサいのか、それとも不滅か?
日本では内田裕也さんの死で大打撃を受けたことは間違いない。
ではここで、その内田さんが亡くなった2018年のユーロビジョンで優勝した、イスラエル代表のネッタさんによるパフォーマンス『Toy』を見てみよう。
見ての通りこのパフォーマンスには、招き猫や着物風の衣装など日本の要素が満載。
(歌詞には「ピカチュウを連れ帰る」のフレーズがあったらしい)
イスラエルの歌手がこれをしたということで、「彼女は日本文化を”盗んで”ユーロビジョンで優勝した!」という批判が殺到した。
これは英紙「インディペンデント」の記事(2018年5月13日)
Eurovision: Israel winner Netta accused of cultural appropriation over Japanese theme
*cultural appropriationは「文化盗用」のこと。
ネッタさんは日本文化に敬意を持っていて、自分はその大ファンだったからパフォーマンスに取り入れたという。
彼女はこのパフォーマンスで異なる文化を尊重することや、多様性を受け入れることの重要性をアピールしたかった。
でも「彼女は日本文化を自分の利益のために”盗んだ”」、「パフォーマンスの”小道具”として利用した」といった非難の声を打ち消すにはいたらず。
ただ外国人の理解には誤解がある。
招き猫はいいとして、2つの「だんごヘアー」(hair in two buns)は中国文化だ。
日本では「らんま1/2」のシャンプーや、「銀魂」の神楽ちゃんなどの中国人キャラでお馴染みのあの団子頭は、清朝の時代に中国で流行った髪型でいまの中国人はふつうはしないだろう。
これがネッタさんに寄せられたネガティブな意見。
Netta: “Celebrating diversity” – you do know that cultural appropriation is not diversity, right?
ネッタは多様性を祝福したいって言うけど、文化の盗用は多様性じゃないだろ?
israel winning with this cultural appropriation bullshit……. are you kidding me…… i watch eurovision one time and it’s trash
イスラエル人が文化盗用で優勝したって・・冗談でしょ・・まえはユーロビジョンを見てたけど、もうゴミね。
もちろんネッタさんを支持する声も多く、「これは過剰反応だ。本当にバカげている」、「日本人がジーンズを履いたら文化盗用になるのか?」、「じゃあお前らは、これからは寿司を食うなよ」といったコメントもある。
この件で、本来なら一番怒らないといけないのは日本人のはずだ。
でもこのとき、日本でこれを問題視した人なんて見たことない。
いっつも思うんだが、欧米での「文化盗用議論」は日本人の感覚とは大きくずれている。
「cultural appropriation」は人種差別に関係することだからアメリカでは特に厳しいけど、日本では、何が問題になるのかわからない人も多い。
日本文化の大ファンを公言する海外のアーティストがその要素を出してユーロビジョンで優秀したら、ほとんどの日本人は好意的にみるだろう。
むしろ日本の文化を広めてくれてサンキューと。
「彼女は日本文化を盗んだ!差別主義者め、謝罪しろ!」と叫ぶのは日本人の発想じゃない。
日本人の沸点は「桜や茶道はもともとわが国の文化だ」とかいうバカげた文化盗用だ。
先月、ジャスティン・ビーバーさんが髪型をこんな「ドレッドヘア」のようにしたところ、「それは黒人文化の盗用だ!」といった非難が殺到した。
すると今度は頭を丸刈りにした。
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これには「うっせぇわ!」という抗議の意味が込められているはず。
こういう抗議や抗議返しも日本ではなかなかない。
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「桜や茶道はもともとわが国の文化だ」
餅付きや日本刀、柔道、剣道、和紙等々、挙げたらきりが無い程だし。それだけ自国に文化が無い証拠。
欧米人が、最近すぐに「アジア・アフリカ諸国の文化を盗用するな!」とうるさく言うのは、たぶん、彼ら自身が自らのふるまいに自信を持てなくなってきているのでしょうね。度の過ぎた「日本文化盗用非難」に対して、日本人は、「こんなものは盗用でもなんでもない、日本文化を紹介してくれて感謝する」と明確に弁護のコメントを発信するべきでしょう。
本当に怒るべきなのは、「日本文化はすべて我が国から盗まれたものだ」と主張してはばからない国に対してです。