日本とインドのカレーの違いは「カレー粉・牛肉・福神漬け」

 

6月2日は「横浜カレー記念日」だ。
幕末に日米修好通商条約を結び、日本は長い長い”鎖国”という眠りから覚めて、翌1859年に横浜港が開港した。
この時に日本に初めてカレーが入ってきたという説があって、それにちなんでこの記念日がつくられた。

 

なでしこもこう言ってる。

ごめん。二期まだ見てないわ。

 

福沢諭吉が書いた「増訂華英通語」(1860年)に「Curry コルリ」ということばが出てくるから、開国してすぐにカレーが伝わったことは間違いない。
明治時代には日本で食べられるようになり、カレーが広く知られて人気が出てきたのは、20世紀のはじめごろに海軍や陸軍でカレーが採用されてから。

日本では一般的に、カレー・カースト・仏教の「CCB」でインドが完成されると言われている。(えっ)
しかし日本のカレーは独特。
日本で働いていたインド人がボンカレーを持ち帰って、家族に食べさせて感想を聞いたところ、「そこそこおいしい不思議な日本料理」でそれがカレーと気づいた人は誰もいなかった。

日本とインドのカレーはまったく違う。
まず日本のカレーではマストアイテムのカレー粉がインドカレーにはない。
日本のカレーはインドからではなくイギリスから伝わった料理で、小麦粉を使ってカレー粉を発明したのはイギリス人だ。

海軍料理研究家の高森直史氏がこう書いている。

イギリスはスパイス類を国内外で売るだけではなく、ターメリック(ウコン)等数種をブレンドしたカレー粉を考案する。インドではせいぜいガラムマサラという複合調味料しかなかったのでカレーの歴史としてのイギリスの功績は大きい。

「海軍カレー伝説 (高森直史) 潮書房光人新社」

 

ガラムマサラとはシナモン・クローブ・ナツメグなどを混ぜ合わせたミックス・スパイスのこと。
あえて言うならこれがカレー粉に近い。

 

ガラムマサラ

 

日本のカレーでは牛肉がよく使われている点も、インドとは大きく違っている。
日本人が昔からよく牛肉をカレーの具材にしていることには、イギリス人がよく作るローストビーフと関係があると指摘する人もいる。
インドの「CCB」のひとつ、カーストはヒンドゥー教の身分制度だ。
ヒンドゥー教で牛は神様と考えられているから、牛肉をカレーに入れるわけがないと思うじゃないですか?
基本的にはもちろんそうだけど、南部のケララ州のあたりではビーフカレーがあって、ヒンドゥー教徒がこれを食べることもある。

 

ちなみに日本初の西洋料理のレシピ本「西洋料理指南」(明治5年)には、カレーの具として赤ガエルがある。
いまのカレー屋のオーナーがこんな新メニューを出したら、それはチャレンジではなくて、従業員や家族が全身全霊で止めるような自殺行為。
でも、明治時代の日本人はカエルの入ったカレーを食べていた。
高森直史氏によると、これは中国人の影響かもしれない。
当時イギリス人がよく中国人のコックを雇っていたこと、そして中国でカエルはわりと普通の食材だったことから、日本のカレーではカエルが具材になってしまった。
これは仮説で実際のところはわからない。でもフランス人ならともかく、イギリス人がカエルを食べていたか?
でもすぐにこの具材は日本のカレーから消えた。

 

そして、日本とインドのカレーの最後の違いはコレですよ。

 

 

日本人のご飯の友・福神漬け。

この由来には、明治時代に東京・上野の漬物店の店主が開発して売り出したところ、評判となって全国に知れ渡ったという話がある。
これさえあれば他におかずはいらない、そのぶん食費が安くなってお金がたまるということから、まるで家に七福神がやってきたのようなシアワセ感があるということから、ある作家がこれを「福神漬け」と名づけたという。それとこの漬物屋の近くには、上野不忍池の弁才天があった。

福神漬けがカレーの友になっているのも日本のオリジナル。
大正時代に日本郵船の客船で、カレーライスにこれをつけたことから日本中に広まったという。
でも高森直史氏に言わせると、「福神漬は本来のチャツネに代わる日本人のアイデア」で明治時代に野田清左衛門という人物が考案して陸軍の必需副食となった。

どっちが最初かはいいとして、福神漬けがインドのチャツネに由来するという説に注目。
チャツネとはインドなどで使われているソースや調味料のこと。

 

 

どっちもチャツネ

 

 

インドではチャツネは付け合せ、薬味のような扱いで、カレーにチャツネを加えるのは日本独自の手法だ。と『食戟のソーマ』で言ってた。

ということで日本のカレーはCGF(カレー粉・牛肉・福神漬け)の3点でインドカレーと大きく違う。
それに、なでしこがインドカレーを食べるのを見たことない。
インド人家族が食べたボンカレーには牛肉と福神漬けは関係なかっただろうから、1859年から独自に進化した日本のカレーは本当に本場とは別物だ。

 

 

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2 件のコメント

  • > 日本とインドのカレーの違いは「カレー粉・牛肉・福神漬け」

    すばらしい。主張が見事に1文に要約されています。しかも語調がよい。
    ひと目で分かるタイトルは、科学論文のレベルですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。