最近の韓国での反日・反中感情:理由や内容、強さの違い

 

数年前、ソウルに住んでいるアメリカ人と話をしていたとき、現地で感じた反日感情についてたずねてみると、意外なことを言う。

「日本が嫌いという話はほとんど聞いたことがないし、それは大した問題じゃない。でも中国に対する悪口はよく聞く。」

いやいやいや。
このころ日本政府が対韓輸出の厳格化を発表し、韓国では日本製品の不買運動が起こるなど大規模な反日運動があったはず。
だから、その話はどうも信用できない。
まわりの韓国人がそのアメリカ人に、日本への敵対感情を見せないだけだでしょ、と思っていた。
ちなみに当時の韓国人が中国を嫌っていたのは、太陽が見えないほどの深刻な大気汚染の原因を、国民は「中国のせい」と考えていたから。

 

でも韓国人の「反日<反中」の感情はデータでも証明されている。

中央日報のコラム(2021年5月19日)

「日本より中国が嫌い」「中国と関連すれば企業イメージに打撃」

韓国で行われた好感度調査の結果をみると、中国に対する敵対感は過去5年間で16.1%から40.1%に急上昇し、友好感は50%から20.4%に急落。
韓国人の中国選好度は10点満点で3.1点と日本(3.2点)よりも低く、「日本より中国が嫌い」という風潮がハッキリわかったという。

反中国感情の高まりの原因としてコラムは、韓国の政治的要因を指摘する。

発足以降ずっと親中性向を見せてきた文在寅政権に対する「中国に低姿勢」という反感が、韓国大衆の反中感情をさらに刺激しているということだ。

 

大気汚染が深刻だったときも、「なんで中国の責任をもっと強く追及しないのか?」という声はあった。
こういった前々からの不満+政府の低姿勢で、韓国人の間で反中感情が積み重なっていったのだろう。
それにこの間、国民が中国に好印象を持つような大きな出来事もなかった。

朝鮮日報のコラムはその2つに加えて、日常生活で接する中国人に対する“嫌悪感”を指摘。(2021/03/27)

【萬物相】韓国若年層の反中感情

まずコラムによると、現代の若い韓国人は「集団よりも個人の権利を大切に考え、人権・公正の価値に敏感」だ。
違和感を感じたら、朝鮮日報に問い合わせてほしい。ワタシはしりません。
いまの50代の韓国人が大学生だったころには反米・反日感情が支配的だった。
でもそれは歴史認識によるもので、日常生活でアメリカ人や日本人に不快感を感じたことはなかったという。
そもそも当時は米国・日本人の数が少なかった。

でも、いまの韓国社会に中国人は本当にたくさんいる。
2019年のデータで外国人の大学生・大学院生は約14万2000人で、このうちの半数(約7万人)は中国人が占めている。
ソウルにある大学で中国人留学生が1000人を超えるところは17校ある。
それで「若者たちの日常そのものが、中国人に悩まされることを避けようがない」という状態だ。
かつての反米・反日感情との違いをこう指摘する。

このところ20代の青年らの間で広がっている反中感情は、日常の接触を通して積もり積もったものという点で差がある。

 

具体的には、(韓国人から見ると)中国人学生は講義の最中でもうるさいし、食事をするなどマナーも悪い。
校内では中国人を避ける空気が広がっていて、「中国の学生が聴講する講座リスト」を多くの学生がゲットして重ならないようにしているという。
アパートを借りるときも、近くに中国人がいたら別の場所にする人もいる。

 

日本に対する反日感情なら、実際の日本人と接することで軽減することもある。
実際そういう韓国人は多いようで、日本を旅行して親切な日本人と会ったりして「想像と違った!イメージが変わった!」という人はよくいるという話は何度も聞いた。
でも反中感情の場合、これは期待できなそう。
政治に加え、現実の中国人と接する機会が増えたことで、“嫌”の感情が高まっているとなると、印象が好転する要素がなかなか見当たらない。

 

 

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日本 「目次」

中国 「目次」

 

1 個のコメント

  • > 韓国人の「反日<反中」の感情はデータでも証明されている。

    その理由が、このブログ記事に書かれていることの他にもう一つあります。
    それは、さすがの反日志向韓国人でも、このところ「韓国の主張よりも、日本の主張の方が事実に基づいていて説得力がある、もしかしたら日本が正しい?」ことに、(多くは口には出さないが)本音では気づいているということです。特にネットメディアとかで日本側の反応をダイレクトに知ることのできる若い世代がそうだと思います。
    が、しかし、だからと言って、彼らが今すぐ反日思想を放棄することにはつながりません。特に、若い世代の中でも比較的成績が良く「旧世代から有望とみなされている」高学歴層が、反日志向を保持しようとする強い傾向にあることからもそう予想されます。
    まだしばらく、少なくとも旧世代が現役から引退するまでは、現在の風潮は続くでしょうね。多分あと数十年はかかるだろうな。「反日は間違っている」ことを掲げて支持を集められる強いリーダーが韓国内に現れない限りは。そういう人は、これまでみな社会的に抹殺されてばかりですし。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。