きのう元徴用工訴訟で、韓国の地方裁判所が原告敗訴の判決を言い渡した。
日本企業への賠償を認めなかったのだから、これは日本にとってはエヴァンゲリオン(良い知らせ)だ。
反日より国際法を重視したこの判決を朝鮮日報などの保守系メディアが歓迎した一方、国民感情に反するとしてハンギョレ新聞は激怒、社説で政府をこう批判した。(2021-06-09)
被害者が実際に日本の謝罪と賠償を受けられるようにする外交的努力を十分には行わなかったという指摘を謙虚に受け入れ、よりいっそうの積極的な外交によって解決策を設け、韓日関係改善のための実質的な努力を続けていってほしい。
人権無視の判決では韓日関係は未来に進めない
いやいやいや、それは無理だって。
日本への謝罪・賠償要求と韓日関係の改善は完全に矛盾しているのだから。
前者については1965年の日韓請求権協定で両国政府が解決を確認したし、今回の地裁もそれを認めた。
なのに韓国側がこの合意を破って謝罪や賠償を求めてくるから、日韓関係はこれ以上ないほど悪化したのだ。
謝罪要求の努力を続けるのなら、関係改善はあきらめるしかない。
朝鮮日報はそんなハンギョレ新聞とは違い、歴史問題を利用して「選挙用反日」を行ってきた文政権には必然の結果だったと指摘する。
韓国政府の反日的言動には批判的な朝鮮日報も、4年前にはこんなコラムを載せていた。(2017/01/22)
ナミビア人に笑われる「謝罪するドイツに日本は見習え」論
ドイツは過ちを認めて謝罪したのに、日本は過去を否定して韓国への謝罪を拒否する。
そんな日本はドイツを見習えという主張は韓国では昔からあって、いまでは常識的な見方になっている。
ドイツがナミビア人にしたというのは、20世紀最初のジェノサイド(集団虐殺)と言われる「ヘレロ・ナマクア虐殺」のこと。
先住民を強制収容所に入れたり、強制労働をさせて8万人を虐殺したという。
ほかにもドイツはナミブ砂漠にある井戸に毒を入れたうえで、多くの先住民を砂漠に追いやって殺害した。
ということを前回書いたわけですよ。
朝鮮日報はこんな加害者のドイツと被害者のナミビアを、日本と韓国の関係に重ねている。
でも、日本が朝鮮半島でしたことはドイツとはまったく違う。
もちろん日本の統治を正当化するつもりはないし、それによって多くの朝鮮人が苦痛を感じたことは認めるとしても、この実態と「20世紀最初のジェノサイド」を同じと考えるのは不可能だ。
日本統治以前は進んでいなかったインフラストラクチャーの整備や、近代教育制度(朝鮮語は必須科目)や近代工業の導入など統治下に置いた朝鮮半島の開発に力を入れ、開発工事や運営の主な労働力を朝鮮人に求めることで雇用を創出した。
首に鉄の鎖(くさり)をつながれたナミビア先住民
それと同じころ、プサンでは多くの市民が海水浴を楽しんでいた。
ドイツは”強国”のイスラエルには頭を下げたけど、”小国”のナミビアに対しては虐殺を認めなかったし謝罪もしなかった。
韓国人はドイツを過去の蛮行を認めて謝罪した「模範国」と考えて日本に「見習え」と要求するけれど、朝鮮日報に言わせると、そんな認識ではナミビア人から笑われる。
アメリカの裁判所に損害賠償を求めて訴えるなどして、ナミビアが国際的に影響力を持ってきたことで、ドイツはやっと頭を下げたという。
だから日本に心からの謝罪をさせるには、まず韓国が国力を高めないといけないとコラムで主張する。
われわれが本当に満足できるような謝罪を受けるには、相手もそれだけの謝罪をする必要性を感じなければならない。
朝鮮半島の統一を成しとげれば将来、「日本はわれわれをこれまでとは違った目で見るようになる」から、それまでは誠意のない日本への「怒りや失望にも耐えなければならない」と朝鮮日報は言う。
いまは日本に強く謝罪を求めないほうがいいと国民に自制を訴えているのだが、この主張は根本的におかしい。
このコラムが書かれたのは2017年だ。
15年に日韓両政府が慰安婦問題の「最終的な解決」を確認し、それに基づいて当時の安倍首相が心からのお詫びの気持ちを表明して韓国側もそれを受け入れた。
なのに2年後にはもうそれが白紙になっている。
そして「ヘレロ・ナマクア虐殺」のようなまったく関係ないことを持ち出して、日本に謝罪させようとする。
こんなことを何度も繰り返しているから、日本では「韓国への謝罪はもはや無意味」という認識や“謝罪疲労”が広がっているのだ。
怒りや失望にも耐えてきたけど、いまはもうあきらめた。
ドイツがナミビアにしたことと、日本が韓国にしたことはまったく違う。
鉄の鎖と水着ぐらい違う。
これを「同じ」と考えたら、それこそナミビア人に笑われる。いや、怒られるだろう。
でも中央日報も同じ主張をしていた。(2016.01.11)
日本の否定的なイメージを強化するため、我々は「誠実なドイツ」という虚像を築いて見たいものだけを見ている。(中略)日本からきちんと謝罪を受けようとするのなら、我々から強くならなければいけない。
【噴水台】強者にだけ謝罪するドイツ
16年1月といえば、安倍首相からお詫びの気持ちを受け取った直後だろう。
なのに「日本の否定的なイメージを強化する」、「日本からきちんと謝罪を受けようとする」と言い出すから、日本では無力感が広がる。
世論調査の結果をみても、韓国による歴史問題の蒸し返しや繰り返される謝罪要求にウンザリしている日本人は山ほどいる。
これが関係改善をジャマする主要原因だ。
でも、ここ数年の日韓関係の超悪化から、朝鮮日報や中央日報もそのへんは徐々に認めているようで、「謝罪!謝罪!」とは言わなくなってきた。
ナミビアを例に出すような強引な主張も最近は見ない。
もちろんいまでも、「韓日関係改善のため、日本から謝罪と賠償を受ける努力を続けてほしい」と、アクセルとブレーキを同時に踏んで「前へ進め!」みたいなことを言うメディアはある。韓国社会ではこれを支持する人も多いはず。
ただ韓国社会には謝罪要求の気持ちがあっても、それを大声で主張するのは現実的ではないと考える風潮も増えているように思う。
きのう韓国の裁判所が原告敗訴を言い渡したのもその表れのひとつ。
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五輪参加決定なり、五輪終了後にはすぐに掌を返すのが関の山。これまでがそうだったし、これで関係改善に近づくとか思っている人は
> きのう韓国の裁判所が原告敗訴を言い渡したのもその表れのひとつ。
その判決を出した裁判官に対する弾劾を要求する国民請願が、わずか数日で「大統領府からの回答義務の基準」である20万人を超えたらしいですよ。国民全体の意識が変化する兆しと言うよりは、国民の分断が深まっただけのように見えます。
格差社会にはどうしてもそういう傾向が生じますね。米国も同様に「格差の大きい」社会ですが、韓国と違って分裂の方向が様々なので、かえって目立たない。特定民族への差別意識・攻撃意識に基づく偏見はやっかいですよ。