【望み高すぎ】周庭さん・民主化運動が”嫌いな”香港人もいる

 

AKBの中国版で上海SNH48というアイドルグループがあって、その姉妹グループにJNR48ってのがあるらしい。
そのグループが中国共産党成立100周年を祝って、『没有共产党就没有新中国(共産党がなければ新中国はない)』という歌を公開している。

 

『自民党がなければ日本はない』というタイトルのMVを、日本のアイドルグループが公開したときの社会のカオスを見てみたい。

 

いまの中国政府(共産党)が歓迎するのはこんな女の子で、その反対にいるのが香港の周 庭(しゅう てい)さんだ。

 

 

1997年までイギリス領だったという特殊な事情から、中国政府は香港を併合したあと、「一国二制度」の原則から中国本土とは違う法律を適用し、共産党を批判するような表現の自由も認めるとしていた。
とはいえ相手は中国だ。
同じ国内にあって、本土と違う自由や権利が本当に認められるのか?

それについて質問された、共産党総書記だった江沢民氏はこう答えた。

「井水は河水を犯さず、河水は井水を犯さず」

井水(せいすい)とは香港、河水(かすい)とは中国のこと。
この2つの水は完全に別々であると、香港の自治を保障するような発言をした。

でもここ数年でそんな「1国2制度」は崩壊しつつあり、中国政府への批判は禁止されるようになってきた。
そんなとき登場したのが、香港の政治運動家で「民主の女神」と呼ばれる周庭さん。
日本でも積極的に活動していたから、彼女を知ってる人も多いはずだ。

2019年6月10日、日本記者クラブで単独会見し、6月12日に明治大学で講演した。翌13日には永田町でれいわ新選組代表の山本太郎と対談した。

周 庭

 

2019年の抗議デモを理由に警察に捕まり、去年12月に実刑判決を受け収監されていた周さんが、先日12日に出所した。
その直後、インスタに「辛かった半年と20日がやっと終わった。体がやせて弱くなったから、よく休みたい」といったメッセージとこんな画像を投稿。

 

 

この投稿をInstagramで見る

 

周庭 Agnes Chow(@chowtingagnes)がシェアした投稿

 

今後も別の罪で起訴される可能性はあるし、周さんの行動の自由はかなり制限されているはずで、民主化運動を続けるのは現実的に無理だろう。
気分としては闇で光が見えない。
かといって今さら「没有共产党就没有新中国」を歌って踊る方向転換はあり得ない。
結局、井水は河水にのみ込まれてしまった。

 

日本で中国政府の受けはハッキリ言って悪いし、自由と権利を求める声には共感するしかないから、周庭さんや民主化運動を支持する人が圧倒的に多い。
でも香港人の知人に話を聞くとそうではなくて、「『民主の女神』って何ですか?なんで彼女が日本でそんなに人気があるのか分かりません」と吐き捨てる。
日本でそんな意見はレアだから、これからその人の意見を紹介しよう。

その香港人は40代の女性で、自分は中国人ではなく香港人だと思っている。
その思いや誇りは強いから、本土から来た中国人に北京語で話しかけられると、広東語で答えることもあるとか。
大ざっぱいえば香港の若い世代では周庭さんや民主化運動を支持する人が多くて、年齢が高くなると、その割合が少なくなり、抗議運動による社会の混乱を嫌がる人が多くなる。

知人の香港人が周庭さんや民主化運動に見切りをつけたきっかけは、2019年の抗議デモのときに掲げられた次の「五大要求」だ。

・逃亡犯条例改正案の完全撤回
・普通選挙の実現
・独立調査委員会の設置
・逮捕されたデモ参加者の逮捕取り下げ
・民主化デモを暴動とした認定の取り消し

 

もともとは逃亡犯条例改正案の撤回を求めてデモを行っていたのに、それが達成されると、民主化グループは別の4つの要求を始めたという。
その香港人から見たらこれは絶対に不可能な要求だから、改正案が撤回された時点でデモは止めるべきだった。
デモは過激化していって、それに抗議する市民には殴りかかったり、催涙スプレーを噴射する人も出てきた。
地下鉄の運行がストップしたり店が営業できなくなって、香港社会の混乱は深まっていくばかり。
6歳の姪はテレビでその様子を見て不安になって泣き出した。
デモに参加しようとした13歳の子供のバッグを調べたら、火炎瓶が出てきた。
これは『民主の女神』というカリスマのせいでもある。

でもそんな話を若い人たちにすると、「生活の不便は『自由を守る対価』だからガマンしなければならない」、「そんなことを言うなんて、あなたたちは中国政府の犬だ」とか言われるから、相手を見てからでないとこんな話はできない。
民主化運動への反対は許さないなんて、これのどこが民主主義なのか。

 

これは知人から聞いた話で、すべて事実かどうかは分からない。
でも香港には周庭さんや民主化運動を支持する人も、それを嫌う人がいるのは事実だ。
日本では後者の意見を知る機会がほとんどないと思う。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

「おまえは中国人か?」香港人がジャッキーチェンに怒った理由

日本 「目次」

中国 「目次」

台湾 目次

 

2 件のコメント

  • > 民主化運動への反対は許さないなんて、これのどこが民主主義なのか。
    > これは知人から聞いた話で、すべて事実かどうかは分からない。
    > でも香港には周庭さんや民主化運動を支持する人も、それを嫌う人がいるのは事実だ。
    > 日本では後者の意見を知る機会がほとんどないと思う。

    ふうん、では返してあげましょう。
    民主化運動・民族独立を許さず、特定少数民族を弾圧して収容所に放り込むなんて、これのどこが近代国家なのか。香港だってそうなりかねない。でも高齢者はもうすぐ自然死するだろうからさほど危機感がないだろう。
    これは、世界のメディアから聞いた話ではあるが、すべて事実かどうかは分からない。
    でも世界には、中国政府のやり方に反対する人が多く、民主化運動への反対派を嫌う人が多数派なのは事実だ。
    香港では、後者の意見を知らない、特に年配の人間は自分たちが独立を捨てた責任者であることが後ろめたいからこそ、いまのこの体制に苦しみ反対運動に賛同する若者を邪魔者扱いする高齢者が、多いのだと思う。
    独立放棄を選択したのはあなたたち香港の高齢者だ。少しはそこを自覚したらどうなのか。

    「知る機会が少ない」と言うのであれば、それを知らせる具体的なデータを示すべきでしょうね。

  • これは香港の話でそれ以外は関係ありません。
    特に「なるなる論」で結び付けると、まったく別の話になります。
    「思う」のは主観ですから、客観的的なデータは必要ないです。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。