ヨーロッパ人の動物愛護:カニやエビを”安楽死”させるわけ

 

6月22日は「カニの日」だ。

まず50音で「か」が6番目、「に」が22番目にあるという強引な合わせ技と、星座占いの「かに座」の始まりが6月22日だったことから、かに料理の美味しさを広めることを目的に「かに道楽」がこの記念日を制定した。

だからこの日にはお得なキャンペーンをやっている。

 

画像はかに道楽のHPから。

 

東京五輪が終わると、今度は政治家にとって絶対に負けられない戦い「衆議院議員選挙」が行われるはず。
有権者にアピールするため、各党がいろんな公約を発表するだろうけど、2019年にイギリス労働党が動物愛護の観点から掲げたこんな公約は考えられない。

「カニ(やロブスター)を生きたままゆでる調理法を禁止する」

カニの美味しさは人類共通だから、世界各国のレストランで食べられている。
だから、カニの命が奪われることはどこの国でも同じなんだが、その奪い方は文化や価値観によって違う。
カニは痛みを感じということから、動物愛護者の多いイギリスではこんな主張が有権者へのアピールになる。

この感覚は日本人にはほぼない。
だから、カニやロブスターを気絶させてから、絶命することを国民に約束する政党なんてない。自民党から共産党まで、そんなことが有権者の判断材料にはならないことは分かっているはず。
なるとしてもネタぐらいだ。

 

でもこれはヨーロッパ人の動物愛護精神をくすぐるようで、スイス政府は2018年にエビやカニなどを生きたままゆでることを法律で禁止した。
スイス政府はエビやロブスターなどには感情があるから、不必要な苦痛を与えることがあってはならないと発表。
国内の飲食店から上がる反対の声を押し切って、これを法律として施行する。

その法律によるとカニ、エビ、ロブスターなどの甲殻類は冷凍、または冷水につけた状態で運ぶのはNGで、常温の水で輸送する必要がある。
そして甲殻類を調理するときには、必ず気絶させてから殺さなければならない。
「じゃあ食うなよ」というツッコミは禁止だ。

痛みを感じさせずに命を奪うのだから、これはカニやエビを「安楽死」させるようなもの。
ヨーロッパではこのときすでに、イタリアが同じような動物愛護の法律を施行していた。

スイス政府の決定を高く評価するイギリスの学者はこう話す。

アメリカCNNニュース(2018.01.13)

鳥類や哺乳(ほにゅう)類は保護してきたのに、エビやカニは無視している現状を疑問視し、生きたまま煮沸するのは非人道的だとも主張した。

生きたロブスターの煮沸を禁止、「痛み対策」 スイス新法

 

「かに道楽」をはじめ日本中のレストランでは、甲殻類を生きたままゆでているだろうから、スイスやイタリアの基準だとそれは違法行為になる。
さらに「非人道的」かも。
でもそのへんは、「進んでいる・遅れている」ということではなくて文化や価値観の違いだから、ヨーロッパ人はそれでいいし、日本人は日本のやり方をすればいい。
ただ欧米人と話す機会がある人なら、彼らのこんな動物愛護感覚は知っておいても損はない。
こういう視点や発想は日本人にはなかなかないと思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。