イスラム教徒が豚肉と犬を嫌う理由(不浄)。猫を好きな理由

 

中学校の社会の授業で習ったと思う。

イスラーム教では、豚肉を食べてはいけない。
ヒンドゥー教では、牛肉を食べてはいけない。

両方の宗教で食べることを禁止しているけど、その理由は正反対。

イスラーム教では、豚は「不浄(汚れている)から」食べてはいけない。
ヒンドゥー教では、牛は「神聖な動物だから」食べてはいけない。

イスラーム教徒が豚肉を食べてはいけない理由は、クルアーン(英語読み:コーラン)にそう書いてあるから。

あなたがたに禁じられたものは、死肉、(流れる)血、豚肉、アッラー以外の名を唱え(殺され)たもの、絞め殺されたもの、打ち殺されたもの、墜死したもの、角で突き殺されたもの、野獣が食い残したもの、(ただしこの種のものでも)あなたがたがその止めを刺したものは別である。

ハラールとは

イスラーム教で豚が不浄の動物だということは、日本でもけっこう知られていると思う。
でもイスラーム教では、犬も同じように「汚れた動物」と考えられていて嫌われている。

このことはご存知でしたか?

犬にとっては納得がいかないだろうけど。

 

フランスに住んでいる日本人が犬の散歩をしているときにあることに気づいたという。

そのことがその人のブログに書いてある。

イスラム教では豚と並んで犬も不浄な生き物

犬と散歩していて分かる事。

それは、アラブ系とアフリカ系の人たちの犬に対する過剰なまでの怖がり方。

そして、犬への罵倒の仕方が半端じゃない!と以前から思っていました。

犬を過剰に怖がり、み嫌う。

日本人からしたら、「この異常な反応は、なんでだろう?」と思うのがふつうだろうね。
疑問に思ったその日本人が調べたところ、「イスラーム教徒にとって、豚と並んで犬は不浄なものだった」ということを見つける。

くわしくは先ほどのブログを読んでください。

 

 

ただイスラーム教の国といっても、国によって解釈は違っている。
だから、「いろいろなイスラーム教の国」がある。

イスラームの教えをとても厳しく守っている国もあれば、比較的ゆるい(ように見える)国もある。

たとえば、サウジアラビアやカタールでは、ポケモンは「反イスラーム的」として禁止されているけれど、マレーシアやインドネシアのイスラーム教では問題ない。

友人のインドネシア人のイスラーム教徒は、ポケモンGOが大好きだ。

サウジアラビアの特徴:国旗や厳しいイスラム教、ポケモン禁止

 

それにすべてのイスラーム教徒が、犬は不浄だと考えているわけでもない。
ドバイでは、ペットとして犬を飼っているイスラーム教徒も多いと聞いたことがある。

 

でもイランでは犬を不浄とする見方多く、とても厳しい対応をする。

犬を散歩させている人がいたら、「道徳警察」が警告をしたり時には犬を「没収」したりしてしまう。

日本の感覚からすると別世界。
いろんな考え方や価値観があるんですね。

イランでは今後、犬を飼っただけでむち打ち74回の刑に処されることになるかもしれない。改革派の日刊紙シャルグ(Shargh)によると、犬を自宅で飼ったり公共の場で散歩させたりすることを禁じる法案を、タカ派の議員たちが議会に提出したのだ。

犬を飼ったらむち打ち74回の刑、イラン議会に法案提出

犬を飼っただけで、ムチ打ちをされるというのはひどい。
イランにはイランの価値観と考え方があるんだろうけど。

それにしても、なんで74回なんだろう?
理由は分からないけど、これもきっとイスラーム教の教えによるもののはず。

 

イスラーム教では犬を「汚れた動物」だと考えられている。

ハディースでは、犬の唾液は不浄とされ体についたら七回洗うように指示されている。

不浄な生き物・イスラム教

ハディースは、クルアーンのようなアッラーの言葉ではない。
ムハンマドが言ったことやしたこと(スンナ)を伝えるもの。

でも、「イスラーム教徒が守るべきもの」であることには変わらない。

パキスタン人から聞いた話では、イスラーム教で「汚れている」とされているのは、犬というよりその「唾液」であるという。
狂犬病の犬を避けるために、こんな教えができたらしい。

これと同じことをイスラーム教徒のインドネシア人も言っていた。
彼は熱心なイスラーム教徒で、毎週日曜日には、クルアーン(英語読み:コーラン)の勉強会に行っている。
そんな彼もこう言う。

「犬にかまれると狂犬病になって死ぬ人がいたから、イスラーム教では犬を”汚い動物”として避けるようにした、と聞いたことがあります。たぶん、そうでしょうね」

 

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「ハラル」は、イスラーム教徒が安心して使うことができるものを示している。
「ハラル・フード」だと、イスラーム教徒が食べられる食べ物のこと。
もちろん、豚肉はダメ!

 

AFPの記事(2016年10月19日)で、「マレーシアでホットドッグは禁止」というおもしろいニュースがあった。

これは、ホットドッグを食べることが禁止されるのではなくて、食べ物にホットドッグという名前をつけることが禁止される、というもの。

ホットドッグはNG… マレーシア、「不浄」な犬含む食品名を禁止

イスラム教徒が多数を占めるマレーシアのイスラム開発局(JAKIM)は18日、ホットドッグなど、英語で犬を意味する「ドッグ」という語を名称に含む食品の改名を命じる方針を明らかにした。

 

先ほどから書いているけど、イスラーム教では犬を「不浄(汚れた)動物」とみる考え方があるため、食べ物の名称に「ドッグ(犬)」をつけることはふさわしくないという。

ホットドッグがダメなら、どんな名前になるんだろう?

 

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マレーシアの首都クアラルンプール

 

犬好きの人にとってはとても残念なことながら、イスラーム教では犬は嫌われている。

でも、猫はとても愛されていて、「イスラーム教徒にとっての真のペット」とまで言われている。

ネコはイスラム教において敬愛されている動物である。 預言者ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフに愛されていたということに加えてその清潔さから、ネコはムスリムにとっての「真のペット」とみなされている。

預言者ムハンマドは「ネコへの愛は信仰の一側面である」と言ったと記録されている。また、他のハディースによると、彼はネコを迫害することや殺すことを禁じていたと言われている。

(ウィキペディア)

 

イスラム教の伝統的な考え方では、ネコは「清潔」とされていている。
それでイヌとは違って、家やモスクに入ることも許されているとか。

 

イスラーム教の教えによって、犬は「汚れた動物」とされていて猫は「清潔で愛すべき動物」と決められている。

犬にとっては、にゃんとも理不尽な話だ。

 

 

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16 件のコメント

  • いろいろありますよ。
    前に富山県でイスラーム教の聖書を破った女性がいて大問題になりました。
    豚やアルコールはダメなんですけど、人によって厳しさは違いますね。
    ビールを好きなイスラーム教徒がいたり、アルコールはウェットティッシュもダメだったり。
    このことは記事で何回か書いたので、ぜひご覧ください。

  • 中世記…ササーン朝ペルシアがイスラムアラブに侵略されイランはイスラム化しました。
    それまでペルシアはゾロアスター教を国境としてゾロアスター教こそがペルシアの民族宗教でした。ゾロアスター教では犬は神の使いたる神聖な生き物として大切にされペルシア人達の多くが犬を飼い愛でていました。それを征服者のイスラムアラブが犬を不浄としてペルシア人たちから犬を無理矢理取り上げたのです。歴史は繰り返す…20世紀のイラン…パフラビー時代のイランでは多くのイラン人たちが犬をペットとして飼い可愛がっていましたがホメイニ革命に因りイスラム体制が敷かれると犬は不浄とされ飼えなくなり、人々は已む無く愛犬を捨てるしかありませんでした。なのでテヘランは捨てられた犬が野良化して野良犬だらけに…これらの犬たちは捕獲され大量に薬殺されました。そして多くの獣医たちが失職する憂き目にあったのです。
    ホメイニはムハンマドの一族の血を引いているので黒ターバンです。現在の最高指導者のハメネイも黒ターバン。ペルシア系イラン人の宗教指導者は白ターバンです。イスラム教開祖ムハンマドはアラブ人。つまりアラブの血脈の者が革命によってペルシア系の王様を追い出し最高権力者となった途端にイラン人は泣く泣く愛犬を手放し犬を飼う自由を失ったのです。本当に歴史は繰り返す…ですね。
    繰り返す…ですね。

  • なるほど。
    イランから犬が消えた原因はイスラム化だったのですね。
    最近のイランでは、犬を飼う人たちが増えています。
    くわしくは朝日新聞の「犬は不浄?それとも友達? イランでブーム、保守派反発」という記事をご覧ください。
    イスラム教を深く信じる人たちからは嫌われていますが、犬を愛でていたはるか昔の記憶が、イランに残っていたのかもしれませんね。

  • この記事書いた人サルーキを知らないんだろうな。
    イスラムだろうがイランだろうが猫が嫌いな者もいる。

  • イスラム教徒ではありませんが本能的に犬は汚くて汚いと感じています。
    当然のように犬を飼ってる人も犬と同列と考えています。

  • 考え方は人それぞれです。
    大好き人もその反対の人もいるでしょう。
    それにしても、「同列」ってのは厳しいっすね。

  • 流石にビール飲んでる人をムスリム扱いにするのはおかしいでしょ。明らかにクルアーンにアルコールダメって書いてるんだから、その人は自称ムスリムでしかないよ。

  • だれがイスラーム教徒かどうかはボクには関心ないです。
    本人がイスラーム教徒と思っていれば、それでいいのではと。
    友人のインドネシア人ムスリムは酒と豚を一切摂取しませんが、アチェの人から見たら本当のイスラーム教徒とは見れません。
    マレーシアに来て酒を飲むサウジアラビア人のイスラーム教徒がいる一方で、アルコール入りのウェットティッシュもダメなイスラーム教徒もいます。
    いろいろなイスラーム教徒がいますよ。

  • >>イスラム教徒ではありませんが本能的に犬は汚くて汚いと感じています。
    当然のように犬を飼ってる人も犬と同列と考えています。

    人間社会について行けず離脱した所謂落ちこぼれが陥る思考の典型的な一例。貴方がどんな人生を送っているか容易に想像ができる。

  • ちなみにゾロアスター教では猫が汚れた動物扱いだったらしい…そのせいかイランでは他のイスラム諸国ほど猫の地位は高くないそうです

  • イスラム教では、アルコールに対する考えが寛容な人もいますね。
    そもそもアルコール自体がダメ、という人もいれば、お祈りの時にアルコールが入っていたらいけないから、それまでに抜けていればOK、という人もいます。

    タバコも、クルアーンが完成した頃には存在せず、書いていないためOK、という人もいれば、依存性が強く、もしも昔に存在していたら禁止になっただろうからダメ、という人もいます。

    クルアーンの解釈も人それぞれな部分があるし、ポップイスラームという言葉もできるほど、信仰の深さに幅があります(国にもよりますが、)。
    信仰している人自身やそのご家族などが納得していれば、どのような形でも受け入れられるべきなのではないかな、などと考えさせられました。

  • そうなんですよね。
    わたしの経験でも「豚肉はダメ!」ということはみんな同じですけど、アルコールについてはモロッコ人やトルコ人のムスリムはOKと言って、バングラデシュ人やインドネシア人のムスリムはNGでした。
    ラマダンについても、いま自分は日本にいるから「旅行中」という解釈をして断食をしないムスリムもいて、けっこう幅や柔軟性があるな~と思います。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。