明治維新とフランス革命:欧米を驚かせた日本社会の急速変化

 

7月14日。
それはフランス人にとって1年の中で最も重要な日、パリ祭の日だ。
1789年のこの日、パリの民衆がバスティーユ監獄を襲撃したことでフランス革命が始まり、国民がギロチンで国王ルイ16世の首をはね飛ばしてブルボン王朝を終わらせた。
そしてフランスは王政から共和制の国(フランス第一共和政)となって現在にいたる。
ということですべての出発となった7月14日は、現在ではフランスの建国記念日になっている。

日本に目を向けると、7月14日は廃藩置県が行われた日。
1871(明治4)年のこの日、明治政府が全国に300ほどあったあった藩を廃止し、代わりに県を設置することにした。
この前段階にあるのが江戸幕府を滅亡させて、天皇を中心とする国民による政府を樹立したこと。
市民が旧勢力(フランスでいうならアンシャンレジーム)を崩壊させ、新しい政治を行ったという点で明治維新とフランス革命はよく似ている。
どちらも領主の権力を破壊し、商工業や金融業の実力者が権力を握ったという点もそっくりだ。
これ以上の情報はここで確認するとよろし。

フランス革命・明治維新との共和点

 

ところで1869年に「版籍奉還」ってのがあったんだが、これは廃藩置県とどう違うのか?

まず大政奉還によって将軍が政治の権利を天皇に渡して、鎌倉時代から続いた武士の統治が終わり、平安時代以来となる天皇による政治が始まった(王政復古)。
建武の新政とかいう一瞬の幻はここではスルー。
そして今度は全国の藩が土地(版)と人民(籍)を朝廷に返還した、1869年に行われたこの政治改革を版籍奉還という。
でもこのあとも各地の大名が藩知事となって相変わらず藩を統治していたから、版籍奉還は形だけのもので、実質的には江戸時代と変わっていなかった。
そこで廃藩置県を行って約300あった藩と藩知事(元大名)をなくし、明治政府から派遣された県知事が地方を統治することで、江戸時代を完全終了させて日本を中央集権国家にした。

 

そのころ、シドモアというアメリカ人女性が日本へやって来る。

 

桜をアメリカに紹介して、いまの「全米桜祭り」のきっかけをつくったのがこのエリザベス・シドモア。いまは横浜の外国人墓地に眠っている。

 

幕末から明治への日本社会の移り変わり、いわゆる明治維新についてシドモアは旅行記にこう書いた。

政治的にも社会的にも、日本人は西洋世界を手本にし、その結果による王政復古は、今世紀最大の驚異的政治問題を提示しました。

古い秩序の突然の放棄、そして近代的秩序の出で立ちで武装する国民皆兵が、直面する危機解決の最も現実的永続的手段としてただちに導入された事は、少なくても欧州の間ではたいへんな驚きでした

「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」

 

「古い秩序の突然の放棄」とは、徳川慶喜が政権を天皇に返した大政奉還のこと。
そして1870(明治3)年の徴兵規則によって一般国民による兵が組織され、その兵力でもって同じ年に廃藩置県を断行した。
そのあと1877(明治10)年に士族による最大の反乱、西南戦争が起きたから、必ずしもスムーズではなかったものの、江戸時代の旧勢力を打倒し、新勢力の明治政府が新しい日本の国づくりを始めたスピードは、欧米人にとっては驚異的だったようだ。
こんな魔法のような移行が成功した大きな理由に、江戸時代まで天皇は政治権力を持っていなかったこと、また国民の誰もが天皇に敬意を持っていたことがある。
そうでなかったらフランス革命や中国の辛亥革命で皇帝を廃止したように、天皇もなくなっていただろう。

 

 

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1 個のコメント

  • 最近の南アフリカ共和国での内乱状態とか、ミャンマーの政治状況とか、香港やウィグル・チベットに対する大陸中国による弾圧とか見ていると思うのですが。結局、自由民主主義という体制は、国民の「国を壊さないというある程度の合意」があってこそ、初めて成立するのだという気がします。
    日本人は昔から本気で争うことが苦手で、聖徳太子の時代から「和を大切にせよ」と教育されてきました。狭い島国の中で、多くの国民がこれまで対立したり協力したりを繰り返しながら生きてきたと思いますが、基本的には江戸時代から「秩序は大切である」というのが日本人の基本認識であったことはラッキーでした。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。