きょう7月26日は日本の夏にぴったりの日、「幽霊の日」だ。
1825年のこの日、江戸の中村座で『東海道四谷怪談』が初めで上演されたことにちなんで、この記念日がつくられたとか。
夫の伊右衛門に惨殺されたお岩が、怨霊となって復讐するという恐怖の物語は「四谷怪談」で確認してくれ。
お岩と伊右衛門
さて、やってみるとかなり盛り上がってる東京五輪。
でも、そこまでの道のりは長く曲がりくねっていて、エンブレムのパクリ騒動から始まりまさにトラブルの連続。
開幕3日前には過去の「障害者いじめ問題」で開会式の音楽担当が辞任、前日には「ホロコーストいじり」で演出担当が解任されるという前代未聞の事態が起きて、日本のメディアでは「呪われた五輪」なんてささやかれるようになる。
となるとネットで、「もう坊さんを集めて読経するしかない」と除霊やお祓いを求める声が出てくるのは、日本人としては自然な発想。
なかには「将門の首塚動かしたからな」と言う人もアリ。
平安時代に謀反をおこして、死後は怨霊となったという平将門はいま、東京・千代田区の一等地にある将軍塚に眠っている。
都市開発がおこなわれてもこの空間はタブーで手を触れる人はいないし、将門の霊に手を合わせるビジネスパーソンも珍しくない。
くわしい話は「将軍塚」を見てくれ。
平将門の霊を祀る将軍塚
画像は菊竹若狭
怨霊や霊を信じるかどうかは別として、日本人がその影響を強く受けて、その存在を気にしていることは間違いない。
そんな日本には、事故物件を専門にあつかう『成仏不動産』という会社がある。
自殺や殺人などが起きた“不吉な部屋”を特殊清掃によってキレイにし、さらに「成仏認定書」まで発行してくれるのだ。
高い技術力での清掃と、神社やお寺でお祓いやご供養をしたことの証明書となります。お住まいいただく上での安心と新たな価値の提供を目的とした取り組みです。
具体的な値段はしらんけど、普通よりかなりお安く住みかが手に入るらしい。
自殺や殺人、さらに怨霊にどのぐらいの恐怖や不安を感じるかは個人によって大きく違うから、霊を気にしない人にとってはかなりのお得物件だ。
それでもやっぱり、部屋の除霊は必要になる。
では外国人はどうなのか?
上の話をアメリカ人にしたところ、もちろんあちらでも自殺・他殺の事故物件はあるけれど、除霊なんて儀式は聞いたことがないと言う。
アメリカ人もそうした死や不吉を避ける気持ちはあるから、一般的に墓地の跡地にアパートなどを建てることはない。
そうしたところに住むと、不幸なことが起こるという話は聞いたことがあるらしい。
「ただ日本でいう事故物件については『成仏認定書』の前に、入居者にそのことは知らせないと思いますよ~」といってネットでカチャカチャ調べると、そのへんの告知義務は州によって違っていて、例えばカルフォルニア州や南ダコダ州では客に伝えないといけない。
でも、その人が住んでいるジョージア州ではその必要はない。
事故が起きてから3年以内なら知らせる義務があるとか、州によって対応はさまざまのようだ。
でもネットで調べてみても、除霊をするという話は一切見つからない。
アメリカ人も普通は自分の部屋で人が死んだと知ったら、もちろん嫌な気持ちになるけど、だからといってお祓いや供養が必要という発想にはならないらしい。
その人の感覚ではそもそも除霊をしても無意味だし、そんな儀式を行っても何の効果もない。
日本に数年住んでいた経験から言うと、アメリカ人は日本人ほど霊の存在を信じないし気にしない。お札や除霊を必要とするほど恐怖を感じることもない。
そういえばイギリス人が「ロンドン塔には何度も行ったけど、一度も幽霊を見たことがない。すごく残念」と明るく話していたのを思い出す。
その人の話ではイギリスの幽霊は人を驚かすぐらいはしても、普通なら人を殺すことまではしない。
話をアメリカ人に戻すと、新しい家にキリスト教(たぶんカトリック)の聖職者を呼んで、聖水をまいて神の加護を祈るブレッシングという儀式をする人はいるらしい。
でもこれは除霊ではなくて、家全体を清めて邪悪なモノが入ってこないようにする魔除け。
ということでこのアメリカ人の見方では、大ざっぱに言って日本人は「事故物件」にひどく恐怖する一方、アメリカ人はそこまで強い気持ちはない。「なんか気持ち悪い」といった程度。
だから除霊なんて迷信深いことはしない。
このあとドイツ人と話す機会があったら、彼にも意見を聞いてみた。
するとアメリカ人の話とほぼ同じで、事故のあった部屋をリノベーションして、血の付着した物をすべて片づけるなどしてキレイにするだけで除霊なんてしない。
ボクから話を聞くまで、彼にはそんな発想もなかった。
ドイツ人なら部屋を借りるときにそんな不幸は気にしないだろうし、家を購入したあとに近所の人から、「実はあそこでこんな事件が…」と聞いたらイヤな気持ちになるけど、仕方ないと思うだけ。
アメリカ人が言ったように、ドイツ人も除霊の効果や意味をまったく信じないらしい。
そもそも死んだ人の魂はその場に留まらず、どこかに行くと思うから除霊の必要性を感じない。
ドイツ人もアメリカ人もキリスト教の価値観や発想から、こんな意見を述べたはず。
欧米のキリスト教のような一神教とちがって、日本の神道では、木や石などの自然物や偉大な人間を神として崇拝する。
身近ないろんなところに神や霊の存在を感じるから、そのぶん迷信深くなって、四谷怪談や将軍塚をわりとホンキで怖がるような考え方がうまれたのだろう。
そんな人たちには事故物件の除霊は欠かせない。
こちらの記事もいかがですか?
> その人の話ではイギリスの幽霊は人を驚かすぐらいはしても、普通なら人を殺すことまではしない。
> 話をアメリカ人に戻すと、新しい家にキリスト教(たぶんカトリック)の聖職者を呼んで、聖水をまいて神の加護を祈るブレッシングという儀式をする人はいるらしい。
> アメリカ人が言ったように、ドイツ人も除霊の効果や意味をまったく信じないらしい。
どうですかねぇ・・・?
イギリス、ドイツ、アメリカ、その他欧米諸国のいずれも「魔女」「狼男」「吸血鬼」「ブードゥの呪い」「悪魔祓い(エクソシスト)」「コンスタンティン」「ゴーストバスターズ」「ゴーストライダー」など、人に害為すお化けや幽霊と、その除霊を行う人々の話が、結構ポピュラーであるような気もしますが。
ただ日本と異なり、欧米では、キリスト教の見解が(現代では)そのような存在を認めておらず、いずれも「民間伝承」「迷信」「スリラー小説」「マンガ」「映画」の話である、つまり公式には「絵空事」であるとみなされているということですね。個人がどう考えようと、キリスト教会の見解が最終的には正しいとされる。
それが日本では、実際に除霊を行う商売が成立していて、それをあえて「そんなの迷信だ!」と非難する人々がほとんどいない、その点が違います。日本人の宗教感は、一神教のように窮屈でガチガチの教条主義ではないですから。
「狼男」「吸血鬼」「コンスタンティン」「ゴーストバスターズ」「ゴーストライダー」などは主に化け物やアニメの話で信仰とは関係ないですね。
「悪魔祓い(エクソシスト)」は除霊ではないですし、「ブードゥの呪い」は欧米社会の伝統ではありません。