インドのぼったくり・韓国のぼったくり・日本の定価文化

 

はじめの一言

「この愉快きわまる国での思い出を曇らせるいやな連想はまったくない。来る日来る日が、われわれがその中にいた国民の、友好的で寛容な性格の鮮やかな証拠を与えてくれた。(オリファント 江戸時代)」

 

 

日本のいいところは、ぼったくりがないところ。

あるといっても、歌舞伎町などごく一部の話で、日本全体でみれば「ない」と言っていい。
日本人でも外国人でも、適正な値段でものを買うことができる。

これは、商品に「定価」があって値段が決められているのから。

ボクが旅した東南アジア・中東・西アフリカの国々では、こんな「日本の当たり前」がなかった。
商品はあるけど定価がない。
値段が決まっていないから、店員と交渉して「実力勝負」で値段を決めなくてはいけなくなる。

 

値段交渉がむずかしい。

日本で買い物をするときは、値札の金額を払うだけ。
値段交渉をする必要がない。
電化製品とか一部のものでは値段交渉があるけど。

ボクは日本で値段交渉なんてほとんどしない。
だから海外に行くと苦労する。

なかには、「値段交渉こそ、旅の楽しさだ!」という旅行者もいる。
「東南アジアの旅行では、現地の人と話しながら値段交渉をするのが好きなんですよ」という旅行者もいた。

日本でも「フリーマーケットで値段交渉をして買うのが大好きだ」という友人はいる。
そいつに言わせると、交渉自体が楽しいし自分が納得できる値段を決めるのも良いという。

 

「おまえ、それをインドでも言えるのかよ?」

そう言いたくなるほど、インド商人はタフな相手だ。
でもこれは、ボクだけじゃないはず。
「定価でお買い物」というぬるい環境で育った日本人がインドを旅すれば、きっと値段交渉で苦労する。

ボクが出会った旅行者は、「インドは『れる』『られる』の国です」なんてことを言っていた。
「ぼったくられる」「怒らされる」「騙される」といった感じに、インドを旅すると徹底敵に「受け身」になってしまう。
防戦一方になることから、インドは「れる・られるの国」になるのだとか。

 

言われてみれば、ボクもインド人に押されまくっていた。

インドの店には、商品に値札がないことがよくある。
とくにお土産屋で、値札なんて見た記憶がない。

お土産でお茶を買おうとしても、値段が分からない。
それで「ハウ・マッチ?」と店員に聞くと、逆にインド人の店員からこんな質問をされる。

「ハウ・マッチ・ユー・ウォント?(いくらならいいんだ?)」
「ハウ・マッチ・ユー・ペイ(いくらならおまえは払えるのか?)」

この逆質問にすごく弱い。
日本の店では値段が決まっている。
だから客であるボクが値段を決めることがない。

その値段が高いかどうかを判断して、買うかどうかを決めるだけですむ。
インドのように、自分が「鑑定士」になってその商品の良い悪いを判断する必要がない。
自分がものに値段をつけるというのはなかなか面倒くさい。

 

だから、この「ハウ・マッチ・ユー・ウォント?」「ハウ・マッチ・ユー・ペイ?」という攻撃にボクはとても弱い。
こんなぐあいで買い物をするから、同じ物を買っても人によって値段が違うことはよくあった。
同じような服を買っても、宿に戻ってから話を聞くと人によって値段が違う。

 

でもインド人に言わせると、これが「インドの当たり前」になる。
友人のインド人はこんなことを言っていた。

「日本人がインドで買い物をしたら、ぼられても仕方がない。オレだって、高く買わされるんだから。その点、オレの妻は買い物上手だ。オレが買うよりよっぽど安くなる」

インドでも、ショッピングモールに行けば定価があって日本と同じように買うことができるらしい。
でも、一般の店には値札なんてない。
そうした店でに買い物は、同じ物を買っても人によって値段が違うのが当たり前らしい。

 

だから友だちのインド人の場合でも、夫が買うより妻が買った方が安くなる。
同じインド人でも、地方出身かどうかで値段が変わってくる。
だから、外国人が現地の人と同じ値段で買うこことができないことは自然なことらしい。

そでにインド人の感覚では、人によって値段が変わってもそれはぼったくりにはならないらしい。
結局、これがインドの買い物文化なんだろう。

 

 

とはいえ、バンコクのカオサンロードのようなところも困る。

商品に値札があったとしても、それは適正な価格にいくらかを上乗せした「ぼったくり価格」だったりする。
これでは意味がない。
「言い値」のぼったくり価格を値札にしただけ。
だからそこが「スタート価格」になって、結局は値段交渉をしないといけない。

 

日本人がぼったくりにあわないためには、なにをすればいいか?

旅行前にガイドブックやネットで、どこで何に注意するかをチェックすることが大事になる。
でも、それは誰でもやっているだろう。
それでも、ぼられるときはぼられる。

 

ぼったくられたとしても、その後の対応がしっかりしていればまだいい。

インドや東南アジアでは、被害にあって警察に訴えても日本人が満足するような仕事はしてくれない。

「おまえは、いくら払うのか?」と、警官にワイロを要求された人もいる。
ぼったくられて警察に相談しても無駄なことも多い。
もう、「勉強になった」とあきらめるか泣き寝入りするしかない。
ボクも何度もしてきた。

 

日本人は、このぼったくりを警戒する人が特に多いと思う。

韓国旅行を考えているという友だちから、「韓国のぼったくり」について聞かれることがある。
確かに「韓国 旅行」でググってみると、「韓国 旅行 危険」「韓国 旅行 注意」と出てくるから、不安になるかもしれない。

でも韓国の場合、旅行者が多いからトラブルに会う人が多いだけで、発生率からいえば心配するほど高くはないだろう。

 

 

それに、韓国国内のぼったくり問題をよく分かっているのは韓国だ。

韓国でも、「外国人へのぼったくりが後をたたない!」ということが深刻な問題になっている。
韓国の新聞を読んでいると、「ぼったくり対策」の記事がたまにある。
韓国もぼったくりには真剣に対応している。

前に「面白い」と思ったことがある。
韓国ではぼったくりにあったときには、その損害を「補償する」というサービスを始めたらしい。

2014年のことだから今は分からないけど、韓国でぼったくられた外国人旅行者を助けてくれるサービスをおこなっている。

下は、Livedoor newsの2014年1月25日の記事になる。

「2014年1月22日、韓国・聯合ニュースによると、ソウル市観光局は、ぼったくり被害に遭った外国人観光客を救済するため、これを補償する制度を始めた。24日付で環球時報が伝えた。」

「ソウル市観光協会は今年1月から明洞、南大門などの観光特区7カ所でこの制度を試行する。ぼったくり被害に遭った観光客は、領収書などの証拠をそろえ、処理センターへ電話などで申告。観光警察などが調査したうえで、最大で30万ウォン(約3万円)まで被害を補償する。5万ウォン(約5000円)以下なら観光警察が直接処理するが、それ以上は審議委員会が判断する」

 

かなり面倒くさそうだけど、こんな「ぼったくり補償サービス」をしている国は他に聞いたことがない。

「いやいやそれより、ぼったくりをやめさせることが先だろ」という声もあると思う。
でも、それは観光局も警察もやってきている。
それでも、韓国からぼったくをなくすことはできなかった。

まあこんな「ぼったくり補償」を始めたということは、「もう韓国から、ぼったくりをなくすことはムリです」と、観光協会が認めたのかもしれない。

 

 

さっきも書いたけど、これは2014年のこと。

あれから、2年たった今はどうなったのか?
と思ったらこんな記事を見つけた。

ソウル市は24日、外国人観光客に対するぼったくりの根絶などを目指す「観光革新課題」を発表した。ぼったくりや劣悪な商品で嫌な思いをした外国人客が韓国を二度と訪れず、日本など別の国に足を向けているとの指摘を受け、対策を講じ

(朝鮮日報 2016/03/25)

 

やっぱりぼったくりは、今でも韓国の大きな問題のまま。
そして、ぼったくりのない日本に観光客の足が向かっていることも分かる。

こうしてみると、世界では日本のように「ぼられないのが当たり前」という国は少ないと思う。
日本にいる外国人に聞いても、日本人は「信用」や「信頼性」は高いと口をそろえて言う。
「誰でも同じ値段で買うことができる」という定価も、一つの日本の文化のあらわれかもしれない。

 

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2 件のコメント

  • 最近ではタイの市場に行っても定価のシールが貼られていることが多くなりました。

  • タイの市場でも定価シールですか!
    時代は変わりましたね。
    でも、その値段が言い値で、そこから交渉可能かもしれませんけど。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。