必ずしも「反日無双」ではない韓国。もっと大事なものもアリ

先日、韓国のソウルでこんなことがあったらしい。
朝鮮日報の記事（8/18）

デモで生きている魚を地面に投げつけた水産業者を動物虐待罪で告発　／ソウル

どんなデモかしらんけど、生きた魚を路上に投げて殺す（叩きつけてないか？）ってのはヒドイな。でも日本には１ミリも関係ないパフォーマンスだし、特にどうでもいい。
と思ったけど、一応読んでみると、昨年11月に行われたこのデモは日本に対する抗議でもあった。

韓国政府が日本産の魚を無差別に輸入したことで、韓国産の魚の値段が下がったと水産業者が怒り、抗議の意思を示すために日本産のブリとマダイを地面に投げて殺す。同時に通行人には、韓国の魚を振る舞うサービス精神を発揮する。
するとこれに、思わぬところから抗議がきた様子。
この抗議活動を見て動物愛護団体が激怒し、「生きている動物を虐待した」という理由でデモの関係者を警察に告発した。
韓国の動物保護法は「痛みを感じることができる神経体系が発達した脊椎動物」を動物と定義していて、食用の魚はこの対象外。
ということでいま警察関係者は「デモで使用された魚類を食用と見なすべきかどうか」についてのむずかしい判断を迫られているという。

日本のブリとマダイにとっては理不尽で不本意な結果だが、２年前の反日活動では、こんなふうに擁護してくれる韓国人は見なかった。
「ノージャパン」を叫ぶ市民団体が日本企業のロゴのある段ボールを踏みつぶしたり、日本製の飲料水を路上にぶちまけるパフォーマンスを行ったときは、それに反対の声を上げたという話は知らない。
日本製品ならどうなってもかまわないけど、生物には国籍がないから、これをひどく扱う人間がいると激怒する人も出てくる。

韓国というと、日韓請求権協定や慰安婦合意を破っても国民からは支持されるような、反日が法を越えて頂点にあるような社会のようにも見える。
実際、大統領選挙が近づくと昔は「反共産主義」が有効なアピールになったけど、いまでは相手候補に「親日」（＝売国奴、裏切り者）のレッテル張りをして、国民の反日感情を刺激するたほうが効果的だ。

中央日報日本語版の記事（2021.08.19）

韓国大統領選で「反共」より有効な「親日フレーム」

でもその例外もあって、今回のように動物愛護精神がその上をいくケースもあるのだ。
個人的に以前、そんな経験をしてかなり意外に思ったことがあり。

アメリカ人が作成・公開した日本の歴史を紹介するユーチューブ動画のコメント欄を見ていると、気を失うレベルのこんなトンデモ歴史を披露する韓国人を発見。

「日本の天皇は第二次世界大戦のとき、12歳の少女を含む20万人の朝鮮人女性を強制連行した責任者だ」
「日本軍は朝鮮の少女を性奴隷にし、飽きると容赦なく殺害して次の少女を連行した」

まず、そんな野蛮国家ニホンは存在しない。
「日本の天皇は第二次世界大戦のとき」の後はどこかの異世界の話だ。にもかかわらず、この話を「知らなかったよ。教えてくれてありがとう」と言う欧米人がいたとなると、黙ってはいられない。

「それが事実なら根拠を見せてくれ」と書き込むと、その韓国人は「これが日本兵に殺された朝鮮人女性だ」と、何人ものアジア人（らしき人）が折り重なって地面に倒れている白黒の画像をはる。
でもそれは、いつどこで、誰が誰を殺害したのかといった事実を確認できる情報がまるでない。
正体不明の画像だけではまったく根拠になってない。
あきれてそうコメントすると、「そうやって歴史の事実を否定する日本人がいるから、自分は真実を世界の人に伝えないといけない！」というコメが返ってくる。
反日感情むき出して、まったく話が嚙み合わない。

そんな彼にぶつけたのがAFPのこの記事。（2008年7月18日）

竹島問題、韓国で過激な抗議行動キジも犠牲に

日本の新学習指導要領の解説書に「竹島」が明記されると、これに激怒した団体がソウルの日本大使館前で抗議デモを行った。
問題はその「過激な抗議行動」だ。
その内容は、日本の国鳥であるキジの首を切ってその血を日本の首相の顔写真に塗る、そして「独島は我らの領土だ」と叫んでキジの内臓を食べるという理解不能なもの。
さらに法律を無視して日本大使館の敷地内へ侵入しようとする抗議者もいたから、機動隊が全力でこれを阻止。
さすがにこれはやり過ぎで、韓国国内からも批判が上がった。
知人のオーストラリア人がこのデモを知ると、「信じられない。韓国はもっと文明的な国と思っていたのに…」と顔を青ざめる。

そんな話を先ほどの韓国人にすると、「それは本当に恥ずかしい出来事だ。何の言い訳もできないし、わたしもそんなヤツラには腹が立つ」と言う。
それまで何一つ合わなかったのに、いきなり完全同意するから、「お、おう」とこっちが戸惑って返事に困った。

この経験からその後、ネットで反日感情をぶつけてくる韓国人がいたら、「こういうやり方は世界での韓国のイメージを傷つける」と返すと、「その通りだ。それについては、我々は反省しないといけない」と素直に認めて、ヒートアップしないで終わることがたまにある。
（もちろん相手の歴史認識は変わらない。）
日本人に比べて韓国人には、熱しやすくて冷めやすい、納得するとコロッと態度が急変するところがあると思う。
ただ上に書いた反応は例外的だから一般化できないとしても、「反日無罪」と日本でやゆされる韓国社会でも、「反日愛国」が必ずしも無双するわけではなくて、国家のメンツや動物愛護精神が上回ることもある。
こういう気持ちをいかして反日感情そのものを軽減できるといいのだが、そこまでは無理。