日本語を学んでいるフィリピン人が最近ネットで、母国と日本を比べてこんなグチをこぼした。
「実は日本の教育がうらやましいです…
なぜなら、日本語はすごく近代的な言語だから教育で英語を使う必要がありません。タガログ語は全然近代的な言語じゃないです。なので、タガログ語と社会科以外の教科は英語で教わります。
結果、英語が賢い人々の言語になって、フィリピン人がタガログ語を見下します。なお、よくフィリピン人がタガログ語の単語を忘れて英語でしゃべります。
タガログ語はすでに広範なのですぐ消えないかもしれませんが、だんだん英語に替えられます…」
タガログ語は1987年にフィリピンの憲法で定められた公用語で、
「フィリピン人が話す言葉=タガログ語」とイメージしてよろし。
上の嘆きに寄せられたこのコメントがタガログ語だ。
「Nakakalungkot lang na ang pambansang wika natin ay wikang Filipino, at hindi Tagalog.」
かつてアメリカの植民地だったフィリピンでは、(少なくとも日本よりは)英語が広く社会で通用していた。それを指摘する外国人もアリ。
「Japanese ppl use English words all the time! The difference is historical: Philippines was an American colony.」
(日本人もいつも英語の言葉を使っています。この違いは歴史的なものです。フィリピンはアメリカの植民地でした。 )
といっても日本人はハンバーガー、イベント、プライベートといった英単語を日本語の中にぶち込むだけで、フィリピン人のように英語で会話ができるワケじゃない。
1987年にタガログ語と同じように英語も公用語としての地位を獲得したことで、いまのフィリピンには英語を話す人は山盛りいる。
安く英語を学ぶことができるフィリピンは、若い日本人や韓国人の人気も高し。
日本の小中高校でALTとして英語を教えるフィリピン人もよくいるし、フィリピンは東南アジアの「英語大国」って言っていいでしょ。
では、上のグチを見た外国人のコメントを見てみよう。
・The difference between Japanese and Tagalog isn’t about modernity. It’s all about economic power. Japanese don’t need to go abroad to find good-paying jobs, hence no need to become fluent in another language. As an American, I marvel at multilingual Filipinos who speak English in addition to one or more native Filipino languages and learn the language of another country, such as Japan or Korea.
日本語とタガログ語の違いは現代性ではなく、経済力だ。
日本人は海外に出なくても給料の良い仕事を見つけることができるから、外国語を習得する必要がない。アメリカ人の私としては、母国語に加えて英語を話し、日本や韓国など他の国の言葉を学ぶマルチリンガルのフィリピン人には舌を巻くよ。
あとは日本語訳したもの。
・「英語を使う必要がない」じゃなくて「英語を使いたくない」という、昔の日本らしい考え方がいまだに残ってるからじゃないかと思う。
・タガログ語は素晴らしいです。
タグリッシュ(フィリピン人の話す英語)は、現在イギリスやアメリカで一般的に教えられている下品な言葉に取って代わる英語の標準(the Gold standard)になるべきです。
・私たちの言語を尊重してくれてありがとう。
私の国の中には英語を学べば、高い教育を受けた人間にみられると考える人もいた。悲しいことに彼らは、自分たちの言語を“格下”とみていたため、その言語は忘れ去られるしかなかった。
すべての言語は美しいのに。
これはオーストリア人やニュージーランド人が先住民に対して言った言葉か?
そしてこれは日本人の意見。
・理由はいろいろあると思いますが、「日本人は日本語という言葉を諦めなかったこと」と「懸命に日本語の現代化を進めてきたこと」の二点は挙げられると思います。
東南アジアでは英語がめっちゃ通じる国として知られている、シンガポールとマレーシアの都市部でも同じ問題があるようだ。
「Same problem with Singapore & Malaysia (city part). Most of my daily conversation is still in my native language though.」
この人はマレー人で、日常会話のほとんどは母国語のマレー語を使っているということだろう。
こんなフィリピン人の悩みは、日本人にとっては未来の悩みだ。
多くの日本人が日常的に英語を話すようになって、日本語を忘れてしまうという問題は「数世紀先に起こるかも?」というもので、いま国は国民の英語レベルを上げることに必死になっている。
「日本人の英語ベタ」は何十年も前から指摘されてるのに、このガッカリな状況は令和になっても変わらない。
日本の一般的な学校で、「国語と社会科以外の教科は英語で教わります」となるのは今世紀中にはムリでしょ。
「日本の教育がうらやましい」と嘆くフィリピンの英語レベルは、日本からすると理想に近い。「マルチリンガルのフィリピン人には舌を巻きます」という感想は多くの日本人も持つはずだ。
日本語が守られているといっても長所と欠点は裏表で、視点に応じてウラヤマシイの中身も変わる。
外国人の視点から日本を見るとよくそう思うのですよ。
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