では、前回の続きですよ。
友人の黒人のアメリカ人は、「人種はない」という考え方をとても嫌っている。
彼女はアメリカで、こんなことを言う人に会ったことがあると言っていた。
「人種なんていうものは、本当はないんだ。人種とは、人間がつくり出した概念にすぎない。人間に違いなんてない」
人種差別があることを認めようとしない白人が、こういう言い方をすることがあるらしい。
現実のアメリカには、たくさんの人種の人たちがいて人種差別問題も起きている。
それにもかかわらず、そうした問題を否定する人を彼女は嫌う。
実際に存在しているにもかかわらず、考え方を変えて自分の頭のなかでないものにしたり、今アメリカで起きている人種差別問題から目を背けようとしたりする態度に腹が立つという。
実際、今のアメリカに人種差別問題があることは否定できない。
2016年だけでも、アメリカでは人種差別にかんする問題や事件がたくさん起きている。
たとえば、5月17日にはアメリカの裁判所で、「人種分離の撤廃」を命じる判決がでた。
米国の学校で人種による分離が撤廃されてから半世紀以上が経った今も、黒人と白人の学校が事実上分離されているとして、米連邦裁判所は南部ミシシッピ(Mississippi)州クリーブランド(Cleveland)市に対して人種分離の撤廃を命じた。
16日の米司法省発表によると、米国における人種分離教育に終わりを告げた1954年の「ブラウン対教育委員会裁判(Brown v. Board of Education)」の最高裁判決(ブラウン判決)が出てから約60年にわたって、人口1万2000人の同市の中学・高校では黒人と白人がおおむね分かれて学んできた。
このニュースを読んで、1954年から今までずっと、黒人と白人が分離されていたということを知って驚いた。
言うまでもないことだけど、この裁判所の判決はアメリカに人種や人種差別があることを前提としている。
「人種なんなものは存在しない」なんていうのは、あまりに現実離れしている。
ほとんど机上の空論。
きじょう‐の‐くうろん【机上の空論】
頭の中だけで考え出した、実際には役に立たない理論や考え。
デジタル大辞泉の解説
人種差別問題とは関係なく、人種という考え方を深く知っていくということに、どれだけの意味や重要性があるのかよくわからない。
難関大学の試験に受かった日本の大学生で、アメリカ人でも難しいと感じるような英文を読むことができるけど、幼稚園レベルの英会話ができない人がいた。
そんなアンバランスさを感じる。
nycは、「ニューヨーク・シティ」のこと
先ほどの黒人の友人は、ニューヨークに住んでいる。
前に、彼女からこんなことを聞いて驚いたことがある。
「ニューヨークでは、肌の色によって警察官に射殺される確率が違うの」
白人・ヒスパニック・黒人という皮膚の色の違いで、その確率は間違いなく違うという。
だから、黒人の自分には警察官がとても怖いという。
前から警察官が歩いてきたら、すぐに横道に入ってしまう。
射殺されるかもしれないから。
「本当にニューヨークで、警察官がそんなに簡単に黒人を射殺することがあるんだろうか?」
にわかには信じられない話で、半信半疑でこの話を聞いていた。
でも、今年の7月6日にアメリカのミネソタ州で、黒人男性が警察官に射殺された事件を知ってこの考えが変わった。
この黒人男性が車を走らせていたとき、白人の警察官が呼び止めてその黒人を射殺してしまった。
このときは彼の恋人が動画を撮っていて、それ全米に衝撃を与えて大問題になっている。
また警官が黒人を射殺。恋人が一部始終をFacebookライブで撮影 米セントポール
動画には傷口から血を流す男性が映っている。これは恋人が助手席から撮影したものだ。「警官はテールランプが壊れていたからって彼を3回撃った」と、撮影している女性の声が聞こえる。
これを見た多くの人は、アメリカでは警察が武器を持っていない黒人男性を日常的に殺害していることにショックを受けている。
このリンク先には、黒人が白人の警察官に射殺される動画がある。
自己責任で見てください。
この事件だけではなくて、アメリカでは黒人が白人の警察官から射殺されることがよく起きている。
こうした事実から考えたら、ニューヨークに住んでいる友人が警察官を怖がる気持ちや理由がわかってくる。
アメリカだけではないくて、世界には「人種」は存在しているし「人種差別」もある。
「人間を肌の色によって分ける人種という考え方はいけない」
「人種なんてものは、本当はないんだ」
そんな考えから、人種の話題をタブーにしてはいけない。
人種差別問題が起きているのに、「人種は存在しない」は通用しない。
人種について知識がなかったら、実際に起きている人種差別問題がわかるはずがない。
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