日本に来た外国人は足元にこんなモノを見つけると、驚いて写真を撮ってSNSにアップすることが多々ある。
本来は汚い・臭いという下水道のイメージを一新させた、日本人のアイデアについては前回の記事で書きやした。
こういう「足元アート」は外国人をよろこばせるけど、でもそれは百発百中ではなくて、なかには不快にさせるモノもあるらしい。
さて話は変わって、インドというと日本ではカレー、カースト、仏教のいわゆる「CCB」が有名だ。
いまでも結婚相手は同じカーストの人を選ぶように、古代につくられたカーストという社会的身分はインド社会にまだまだ残っている。
日本に暮らすインド人さんに母国との違いをきくと、日本人の宗教心の薄さを指摘し、そのポジティブな面だと宗教の争いがないからとても気楽だと言う人がよくいる。
インドの宗教対立はホント半端ない。
それを象徴する事例としてよく挙げられるのが、1992年に起きたバーブリー・マスジド破壊事件。
インド北部の都市でヒンドゥー教の聖地でもあるアヨーディヤーには16世紀、「バーブリー・マスジド」というイスラム教のモスク(礼拝所)が建てられた。
でも、これに反感を持っていたヒンドゥー教徒の怒りが1992年、ついに爆発し暴徒化した集団がモスクを破壊する。これがトリガーとなってインド全土で暴動が発生して、1000人以上の死者を出す惨事となる。
このバーブリー・マスジド破壊事件を原因として、2002年にまた悲劇が起こった。
ヒンドゥー協会のメンバーが乗った列車がグジャラート州のゴードラー駅でイスラム教の暴徒に放火され、死者58人を出した。事件の翌日からグジャラート州内で暴動が多発し、死者は合計で800人を超えた。
こういう事件が起こらないのが日本という国。
そんな国からやって来たインド人カップルと数年前、静岡市にある「日本平夢テラス」という富士山がキレイに見えるスポットへ行った。
この2人に限らずインド人のみなさんはもれなく写真(自撮り)が好きで、先を歩いているボクがふと振り返ると、遠くで写真撮影をしている彼らを発見することもしばしば。
そんな「日本平夢テラス」を歩いていると、夫が「え?」とびっくりした顔をして立ち止まる。
その原因は足元にあったコレだ。
彼は日本に一年以上いるはずなのに、こういう足元アートを見たことないのか?
これぐらいなら日本人だと素通りするレベルで、実際、これを見てビックリして立ち止まる人は誰もいない。
でも初めて見た外国人なら、カラフル色使いに目を見張るかも。
そんなことを思って、日本では特に観光地ではお客さんを楽しませるために、オシャレでかわいいデザインのマンホールや消火栓のカバーがあると伝えると、「いや、それは知っている。そうじゃないんだ」とインド人。
アレ?
呆れたというか信じられないような顔をして、「日本の人たちはこれを見て、何とも思わないのか?インドではあり得ないよ」と言う。
さて上のデザインを見て、このインド人がビックリしたポイントはどこでしょう?
答えは神社。
静岡市にある観光スポットで家康公のお墓のある(中身は知らない)、久能山東照宮が描かれていることが彼には衝撃的だった。
インド人は一般的に無宗教の日本人と違って、めちゃくちゃ信仰深いし宗教に対してとても真面目。
宗教心の大きさを具体化すると、インド人のそれがヒマラヤのエベレストなら、日本人は大阪の天保山(標高4.53 m)といったところ。
とにかく宗教をとても大事に考えるこのインド人からすると、カバーに神社を描いて、日本人が平気でそれを踏みつけるのは信じられない。
これは神道への冒とく行為ではないかと言う。
そう言われてみれば確かにこれだと、神社を足裏で踏んづけることになるし良いことではない。
でもほとんどの日本人はそんなことには気づかないし、消火栓のフタに神社があっても気にしない。
だから前からこうしてここにあるわけで。
でも、このインド人夫婦にはその感覚が不思議のようだ。
インドで例えるならこれは、イスラム教徒がヒンドゥー寺院の写真や絵を踏みつけるようなもの(またはその逆)。
そこにはかなりの憎悪や敵意がある。
神や寺院、モスクの絵、またはクルアーン(コーラン)を地面に置くこと自体すでに大問題だ。
インドでそんなことをしたら怒り狂った人たちが暴徒化し、死者が出てもおかしくない。
こう話すインド人の感覚だとこの消火栓は、ヒンドゥー教徒がヒンドィー寺院の絵を踏んでるようなものか。
日本人は宗教心が薄いから、社会に宗教対立がない。
それはとても良いことだけど、あのデザインはダメだと言う。
これに関してはこのインド人夫婦の言っていることが正論。でも、これで特に問題にならないのだから日本ではこれが正解。
それにしても、「あれは神道への冒とくだ。良くないよ」とインド人が不快そうに言って、「こまけぇこたぁいいんだよ」と日本人がなだめるというのも変な構図だった。
カバーのデザインはかわいくてオシャレなら何でもいい、というワケでもないらしい。
おまけ
宗教なら踏んでもいいけど、歴史はダメらしい。
朝日新聞社の記事(2021/09/17)
地面に埋め込んだ歴史サイン「踏みにじられている」 一時撤去へ
多くの人に歴史に興味を持ってもらおうと、熊本市が「明治天皇行幸」や「加藤清正入国」といったプレートを地面に埋め込んだところ、「歴史が踏みにじられている!」などの批判が多く寄せられたことから撤去することにした。
この設置に約850万円かけて、これから約150万円かけて撤去するという。
熊本市民、激おこでしょこれ。
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