NHKの歌番組『みんなのうた』の歌『山口さんちのツトム君』ならネタにしてもいい。が、実在した山口 彊(つとむ:1916 – 2010年)さんだとそうはいかない。
こちらの山口さんは1945年、広島と長崎のそれぞれで被ばくした「二重被ばく者」なのだから。
長崎出身の山口さんは出張で広島に来ていて8月6日の朝、職場への通勤途中で米軍による原爆投下によって被ばく、左鼓膜が破れて左上半身に大やけどを負う。
そしてその後、長崎に戻ったあと9日にまた地獄を見た。
日本の歴史上、最大級の惨劇を2度も経験して、おびただしい数の死体や破壊を目撃した山口氏は、妻と子供をガン(原爆の後遺症とみられる)で先に亡くしたあと2010年に旅立った。
そんな山口 彊氏について、このまえ外国人がSNSでこう紹介しているのを発見。
In 1957 he was recognized as a hibakusha “explosion-affected person” of the Nagasaki bombing.. He died in 2010 at the age of 93.
寄せられたコメントを見ると、
・What an amazing man.
(なんとすごい人だ)
・God bless him.
(彼に神のご加護を。)
・He sure had a guardian angel! 🙏🙏
(彼には守護天使がいたんだね。)
・My deepest respect.
(心からの敬意を表します。)
・Never nuclear war again !!!
(核戦争は二度と起こしてはいけない!!!)
・Whenever I think my day is bad I am reminded of this story, just incredible
(イヤなことがあった日には、いつもこの話を思い出す。信じられない。)
・Good luck surviving 2 of the worst terrorist attacks back to back.
(テロリストによる2度の攻撃を生き延びるなんて、運がいいな。)
といった同情や敬意、平和やアメリカ批判について述べる人が多かったなかで、なかにはこういうヤツも少なからずいやがりました。
・そして彼は政府から、旅行することを禁じられたのだった…。
・彼は隔離されたの?
匿名のネット空間なら日本人でもいるだろうけど、二重被ばく者の山口氏を人生をジョークのネタにする外国人は多かった。
・That’s why we all eat sushi!! 😉😉😉
・It’s hard to decide if he is very unlucky or very lucky!!!
ほかにも「彼ならアベンジャーズのメンバーになれる!」、「ちょっと待て。彼は一度死んで、そのあと作り直されたんじゃないか?」と言う外国人もいた。
被爆者をやゆするコメントが続出したことから、ある人が「これを読め」とこんなリンクをはる。
山口氏が亡くなった2010年に、日本でいえばNHKのBBC(イギリス放送協会)がお笑いクイズ番組で氏を取り上げて、「山口さんが長崎に戻ったところ、再び原爆が投下された」と司会者が言うと観衆が大笑いするなど笑い者にした。
こんな発言から番組のようすが見えてくる。
「生き延びたから世界一運がいいのか、それとも運が悪いのか…」
「ずいぶん長生きだったから、それほど不運だったとも言えないね」
「明るい人だったんだよ」
「写真ではあんまり明るそうじゃないね」
「そう、二つのキノコ雲に挟まれてね」
「原爆が落ちた次の日に列車が走行しているのは、イギリスでは考えられない」
「要するにコップは半分空というか半分入ってるというか。どっちにしても放射能に汚染されてると。だから飲んじゃダメと」
被ばく者を笑いのタネにするこの番組を見た日本人が激怒。
在英国日本国大使館は、
「原爆投下の問題をコメディー番組で取り上げるのは極めて不適切で日本人の国民感情を無視している」
とBBCと製作会社に抗議し、日本政府でも前原誠司外相が「怒り心頭というか、強い怒りと不快感を持った」と憤激する。
これにはイギリス側も平謝り。
製作会社やBBCの広報責任者が「(日本の皆さまに)不快な思いをさせ、申し訳ない」と謝罪し、BBCのマーク・トンプソン会長の名で謝罪文が長崎市へ送られた。
くわしいことはここをクリック。
日本人にとって絶対にジョークのネタにしてはいけないのは、原爆被ばく者や被ばく体験だ。
何十万人もの市民が亡くなった出来事で、笑いをとるという発想は許せない。
でもネットで外国人のコメントを見ていると、原子投下とそれによる被害を気軽に考えて、日本人の心情を無視して笑いのタネにする外人はけっこう多い。
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