最近の日本と中国の関係は、政治的にはあまりよろしくない。
というかかなり悪化しているのが現状。
でも日本では昔から中国料理の人気は安定していて、数ある中国料理のなかでもトップクラスの人気を誇るのが春巻きだ。
ウマくて安いし、冷凍食品なら超簡単に作れる春巻きは弁当のおかずの不動の定番。
レストランの多国籍バイキング料理では、日本人の好きな中国料理の代表として春巻きと麻婆豆腐が鎮座していることはよくある。
さて、この食べ物の名前は「春を巻く」なんだが、なんで冬や夏ではダメなのか?
それは他の季節に対する差別では?
春巻きは英語でも「Spring roll」というから、まえに日本に住んでるイギリス人から「なぜ春なの?」と質問されたことがある。
「いや知らんし」と思ったけど、その由来を調べてみたら「春を巻く」という名前にはちゃんとした、春でないといけないワケがあった。
結論からいうとこれはもともと春のはじめごろ、芽吹いた植物を巻いて食べる料理だったから。
元々は、立春の頃に新芽が出た野菜を具材にして作られたところから「春巻」と名付けられた。
中国では季節と季節の境いとなる日を「節句」という。
五つの節句(五節句)はとくに有名で、これが日本にも伝わって桃の節句や端午の節句、七夕を祝う習慣はいまでもある。
節句はもともと邪気を祓うという目的から始まったといわれる。
くわしいことはこの記事を。
立春のころは節句でいえば中国の正月である「春節」にあたり、春の新芽を食べることには、季節の旬の植物からエネルギーをもらって邪気を祓うという意味があるのだ。
緑の食材には、冬に体内に蓄積された毒素を出す効果があると中国では考えられていたという。(いまもそうかも)
むかしの中国人は春になって出てくる植物に、瑞々(みずみず)しい生命力を感じたのでは?
春節に春巻きを食べる習慣はいまでもある。
日本で餅を食べるように、東アジアの大体の地域では年糕という餅を食べる。ほか、春巻や湯円なども食す。
春巻きを国民食とするベトナム人にその由来を聞いても、「そんなこと、考えたことがありませんでした」と言う。
その死角を埋めるべく上の話をすると、「ベトナムは千年間、中国の植民地でいろいろな影響を受けました。春巻きもその一つだったんですね」と納得したようす。
ちなみにベトナムの春巻きというと、(個人的に)下の生春巻きが頭に浮かぶのだが、このときいたベトナム人に言わせるとあちらでは揚げ春巻きが一般的らしい。
「陽のエネルギー」を吸収するため、邪気払いや縁起担ぎで春の新芽を食べることは、日本でいえば七草かゆを食べることと似ている。
「人日」の節句(1月7日)にその一年の無病息災を願って、体に良い春の七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ)を食べるこの伝統は、正月にごちそうを腹いっぱい食べて弱った胃を休めるためとも言われる。
ちなみにいまの時期には、秋の七草(ハギ、オバナ(ススキ)、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、アサガオ)がある。
ウマイ、安い、簡単に作れるというメリットのほかに、春の生命力を吸収するという意味が加わるとなると、春巻きの人気はさらに鉄壁。
邪気払いという縁起の良い由来を考えたら、花見や春のピクニックには最適解の一品だ。
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