中国の英雄・孫文はなんで日本人名の「中山」と「樵」なのか

 

10月10日を前にして、きのうネットで中国人がネットにこんな投稿をしてた。

辛亥革命記念日
清を倒し、中華の共和国を建てた義士へ敬礼‼️

1911~1912年の辛亥(しんがい)革命は中学校の歴史の授業でならうマスト事項で、革命家の孫文が清朝を倒して中華民国を樹立した。
ご先祖が創設した王朝を滅ぼされてしまった清にとっては、「心外革命」だったといえる。
この革命によって孫文が中華民国の総統になった一方で、清朝、いや中国最後の皇帝・溥儀が退位した。

ちなみに中国のラストエンペラーの大好物はチキンラーメンだ。

中国皇帝も愛した「チキンラーメン」、史上最高売上を記録

いまの中国で辛亥革命は輝かしい栄光だから、10月10日にはいろいろな記念イベントが盛大に行われるらしい。

で、話は辛亥革命の主人公・孫文だ。

 

 

中国に行ったとき「中山路」、「中山市」、「中山公园(公園)」など、やたらと中山の付く地名が多いことに気づいて、中国人の日本語ガイドに聞いたらそれは「孫文」のことだという。
日本では一般的に「孫文」といわれるこの英雄は、中国では「孫中山」といわれているから、彼にちなんで付けられたところは「中山」になる。
ちなみに欧米で孫文は、孫逸仙(いっせん)の広東語のローマ字表記で「Sun Yat-sen」となっているからややこしや。

中国と台湾は政治的に激しく対立していて、中国で尊敬される毛沢東は台湾では嫌われて、台湾で尊敬されている蔣介石は中国では嫌われ者になっていることが多い。
でも辛亥革命を成功させた孫文(孫中山)は、どちらからも敬意を払われている。
中国系フィリピン人も「He was China national hero!」と、昨日SNSで賞賛していた。

 

ガイドから孫文についての話をフンフンと聞いていて、「孫中山の「中山」って日本人の名前なんです」というところで「ええっ!」とビックリ。
なんで道路や都市の名称にもなっている、中国の国民的英雄が日本人名なのか?

清朝を打倒しようと活動していた彼は当然のこと、清朝からは見つけ出して抹殺すべき敵でしかない。
日本人はそんな彼を受け入れて、孫文は日本へ亡命することにした。
宮崎滔天・頭山満・犬養毅ら有力者の支援を受けていた孫文は、日本人女性の大月薫と結婚するなどかなり日本での生活になじんでいた。
そんな彼が東京に住んでいたとき見かけた「中山」という表札の文字が気に入って、日本での自身の名前を「中山樵(なかやま きこり)」とした。
その中山さんとは貴族院議員の中山孝麿事といわれるが、中山忠能(明治天皇の祖父)だったという説もある。

中国では孫文ではなく日本で使っていた名前が定着した結果、生まれ故郷である広東省の香山県は「中山市」に改称されたり、中国の名門大学「中山大学」ができたり、中国の南極大陸の基地が「中山基地」となった。

孫文・号の由来

 

そんな中国・台湾の英雄は1925年にガンでこの世を去る。
「革命尚未成功 (革命なお未だ成功せず:革命未だ成らず)」の遺言は超有名だ。

 

晩年の孫文(1924年)

 

亡命中の孫文が仮の名前として、中山樵という日本人名を使っていたのは分かった。

でもなんで吉田や久保、権田ではなく、数ある日本人名の中から「中山」をチョイスしたのか?
なんで「樵(きこり)」なのか?

そのへんは謎のまま。
だったんだが、きのう中国人がネットでそのワケを説明しているのを発見。
その中国人いわく、「中国的山樵」(中国の山樵)を省略して「中山樵」となった。
「山樵」とは山の中に住んで、きこりなどの生活をしている人のこと。
清朝の目の届かない場所で生活している中国人の自分を、孫文は「中国の山樵」と考えたという。

これはその中国人の意見だから完全に正しいのかは分からないけど、これなら「中山」を選んだ理由も納得できる。
おそらく「中山」の文字を見て、自分を「中国的山樵」と重ねたのだろう。

 

おまけ

辛亥革命が起こる直前の北京の日常

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。