安倍首相の真珠湾訪問②日本の国民とマスコミ(新聞)の反応は?

 

前回、安倍首相の真珠湾訪問に対する海外の反応を書いてきた。
今回は、日本国内の様子を書いていきたいと思います。

 

まず、日本の国民は、首相の真珠湾訪問をどう評価したか?

2016年12月30日の読売新聞に、世論調査の結果がのっている。

・75年前の旧日本軍による真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊した首相の訪問を「評価する」は85%に上り、「評価しない」は10%だった。

・首相が「不戦の誓い」を表明し、日米両国の「和解の力」を強調した演説を「評価する」と答えた人は83%、「評価しない」は11%。安倍内閣不支持が5割強を占める民進党の支持層でも、7割強が首相の演説を「評価する」とした。

首相の真珠湾慰霊、「評価」85%…読売調査

 

85%という圧倒的多数の国民が、首相の真珠湾訪問を評価していることがわかる。

 

次に、与党と野党の声を聞いてみよう。

下は、2016年12月29日の毎日新聞の記事。

28日(現地時間27日)の安倍晋三首相の真珠湾訪問に、野党からは不満が相次いだ。演説で首相が過去の「反省」に言及しなかったためだ。一方、政府・与党幹部は一様に高く評価した。

真珠湾慰霊 演説に「反省」なく野党不満 政府・与党は高評

 

まあ、「与党と野党が同じ評価だった」ということは、あんまりないけどね。

 

この与野党の評価と先ほどの世論調査と合わせると、大ざっぱにこんな結果になる。

与党の評価は、85%の国民と同じ。
野党の評価は、10%の国民と同じ。

 

では次にマスコミ(新聞)がどう評価しているか見ていきたい。

 

ここでは、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、読売新聞、産経新聞の社説を取り上げていく。

安倍首相の真珠湾訪問について、すべての新聞で大体同じ評価をしているところはある。

「和解の力」や「寛容の心」というキーワードや「戦争の惨禍は、二度と繰り返してはならない」という不戦の誓いについては評価している。
でも、その後が違う。

さっそく見ていきましょう。
*下の各社の社説は、すべて2016年12月29日(木)のもの。

 

朝日新聞の社説

真珠湾訪問 「戦後」は終わらない

アジアへの視線も希薄だ。

太平洋戦争は日米だけの戦争だったわけではない。米英などとの開戦は、満州事変以来の10年に及ぶ中国への侵略や、その行き詰まりを打開するための東南アジアへの武力進出から生まれた。アジアの人々にも悲惨な犠牲を強いたことを忘れてはならない。

 

朝日新聞は、アジアの人たちへの言及がなかったことを批判している。

それは、次の毎日新聞も同じ。

 

毎日新聞の社説

首相の真珠湾訪問 和解を地域安定の礎に

もう一つは、アジアへの視線が見られなかったことだ。昨年の米議会演説や戦後70年談話に盛り込まれたアジア諸国に対する戦争の加害者としての視点はなかった。

 

アジアの人たちへの視点の欠落については、東京新聞も同様に非難している。

 

東京新聞の社説

「首相、真珠湾で慰霊 和解の力、アジアにこそ」

日米開戦時点ですでに中国大陸への侵攻は続いており、真珠湾攻撃と同日にはアジア・太平洋各地域への攻撃を始めている。
日本が真に和解すべきは、安全保障や経済ですでに深い関係がある米国ではなく、中国をはじめとするアジア諸国だろう。
首相は、米国との和解に注いだ政治力と政治的資源を、アジア諸国にも同様に注ぐべきである。

 

以上の新聞に対して、読売新聞と産経新聞は別の視点からアジアをながめている。

 

読売新聞の社説

首相真珠湾訪問 日米は「和解の力」を実践せよ

アジアでは最近、多くの安全保障上の懸案が深刻化している。

中国は、急速に軍備を増強し、南シナ海の人工島の軍事拠点化など、力による独善的な現状変更を試みている。北朝鮮は、国際社会の制裁や警告を無視して、計5回もの核実験を強行し、多様な弾道ミサイルの発射を繰り返した。

 

読売新聞がいうアジアとは、中国や北朝鮮という東アジアのこと。
今の東アジアの動きから、日本の安全保障について考えている。

それは、次の産経新聞も同じ。

 

産経新聞の社説

真珠湾での慰霊 平和保つ同盟を確認した

この地域における最大の不安要因は、軍事的に台頭した中国の脅威である。慰霊に先立つ首脳会談で、中国の空母が西太平洋へ初めて進出したことが話題となり、その動向を注視すべきだとの認識で一致した点にも象徴される。

 

この2紙から逆に考えると、朝日、毎日、東京新聞には「日本の安全保障」という視点が欠落している。

 

前回の内容を読んでくれたら分かると思うけれど、読売新聞と産経新聞の「中国の脅威を警戒している」という視点はヨーロッパと同じ。

この点、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞は、韓国や中国の視点に近いことがわかりますね。

 

さて、この記事にはいろいろな「アジア」が出てきました。

そこで、それぞれの新聞がいう「アジア」ということについて、次回でもう少しくわしく書いていきたいと思います。

日本のまわりには、どんなアジアがあるのかな?

アジアは1つかな?

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。