米国人が思う社会のちがい:便利でモロイ韓国と安定した日本

 

日本に住んでるイギリス人の女性が2、3年前に、友人のアメリカ人が住むソウルへ遊びに行ったんで、帰国してから感想を聞いてみた。
すると、「日本と韓国は似ているな~」というのが第一印象だったとか。
違うのはハングル文字の看板ぐらいで、街を歩いていると何となく大阪を思い出したから、外国に来たという感じはあまりしない。
つまり、大阪にある看板をハングル文字にすると韓国になるらしい。

日本に住んでいたことのある友人に「韓国って日本みたい」と言うと、社会の発展レベルは基本的に日本と同じぐらいだけど、やっぱり違うとアメリカ人が話す。
韓国のほうがIT環境は進んでいて、スマホがあれば買い物とか移動とか大抵のことはできるから、現金を持ち歩かなくなった。
でも社会基盤は意外ともろくて、日本ではなかったような苦労や不快な思いをすることもある。
数年前まで、トイレで紙を流せなかったというのはその代表例で、紙を便器の近くにあるチリ箱に入れないといけなかったのが辛かった。
特に夏はにおいがきつくるなから、あれは本当にカンベンしてほしい。
日本に比べて社会のインフラがしっかり整備されていないから、トイレがこんなことになるという話を聞いた。

韓国の情報サイト「KONEST」では、水に溶けにくいトイレットペーパーが使用されていることや、水周りのインフラ基盤が整っていないことから、紙を水に流すと便器が詰まってしまうことがあると指摘する。
ただここ数年でトイレ環境はかなり改善されて、いまではペーパーを流せるトイレも増えているという。
くわしいことはここをクリック。

韓国旅行の前に知りたい!韓国のトイレ事情

 

このアメリカ人はボクの友人でもあって、韓国での不満は他にも聞いたことがあり。
紙を流せないトイレ以上に、「これは無理っ」とアメリカ人が感じたのは2020年に起きた「幼虫水道水恐怖」。
ソウルなどで家の蛇口をひねると、水道水に混じってユスリカの幼虫のアカムシが出てきて国民がパニック状態におちいった。

 

アカムシ

 

ネットでは幼虫の写真や動画が次々とアップされ、恐怖におびえる市民に自治体はこう言って安心を呼びかけた。

中央日報の記事(2020.07.21)

ソウルや釜山(プサン)など全国に拡大しているが、正確な原因把握は遅れている。特に水道水から出るユスリカの幼虫をめぐっても、当局は無害だというコメントを出して、市民の不満が高まっている。

仁川で10日間「ユスリカ水道水」166件、韓国当局は「無害」のコメントだけ

 

行政がまるで頼りにならないから、自分の安全は自分で守るしかない。
このとき水道フィルターが爆売れしたのは必然だった。
日本だったらこんなことは絶対に起こらなかった、というアメリカ人の感想には日本人も納得するはず。

 

そんな韓国はいま、「尿素水がない!」と大騒ぎになっている。
ディーゼル車を走らせると有毒なガスを排出するから、それを無害化するために尿素水が必要になる。
これがなくなるとトラックなどが動かなくなって、建設現場や工場の生産ラインがストップしたり、公共交通機関が停止する可能性が出てくる。
物流は社会の血管のようなもの。
これが止まったら大混乱になるのは誰の目にも明らかだから、韓国政府は国際会議の場で諸外国に頼み込むほど必死になった。
中央日報日本語版の記事(2021.11.08)

尿素水大乱に…韓国、COP26で「尿素売ってほしい」と泣訴

 

朝鮮日報の報道は衝撃的で、事態はあまりにも深刻だから、政府は密輸された尿素水まで使うことにしたという。(2021/11/16)

尿素水4トンの密輸摘発、切羽詰まった韓国政府は押収品の市中流通を容認

 

もはや貴重品となった尿素水は、政府の管理下に置かれて事実上の配給制となる。
でも手に入らない。
だからガソリンスタンドにはトラックの長蛇の列ができるし、「尿素水はあるか?」という電話が1日で500本以上かかってきたガソリンスタンドもある。

朝鮮日報の記事(2021/11/17)

韓国政府緊急需給調整六日目…今も「尿素水求めて三万里」

尿素水は消防車や救急車にも必要だから、「すぐに救急患者を搬送できないという非常事態に陥る恐れがある」と記事にある。
政府の認識が甘く、対応が後手後手になった今回の尿素水騒動は、2020年のマスク騒動とよく似ているという。
つまり政府は同じような失敗を、同じようにくり返したワケだ。

この事態の原因は、韓国が尿素水の供給を中国だけに依存していて、自国で生産していなかったから。
いまの日本でこんなパニックが起きていないのは尿素水を戦略物資と判断し、中国に依存することなく、国内で生産できるように体制を整えていたから。
いまでは日本はこの分野で、世界最高の技術力を持っているという評価を受けている。
韓国の場合、自国生産では採算が合わないと判断して2011年にやめてしまい、尿素水のほぼすべてを中国からの輸入に頼るようになった。
重要な素材を中国に過度に依存していることは数年前から分かっていたのに、韓国政府はこれを放置してきたことも重大な原因だ。

「尿素水大乱」とは無縁の日本を持ち出して、「韓国政府の職務放棄と比較される」と中央日報がご立腹。(2021.11.15)

【コラム】必需品が不足しても放置した政府、これが国なのか=韓国

そもそも大統領府は尿素水の重要さが分かっていなかったようで、当初は肥料供給の問題だとカン違いしていたという。
これにはアキレル。

 

これに加えて、いま韓国社会を悩ませているのがコロナ禍。
感染拡大が広がっているなかで、日常生活での規制を少なくした「ウィズコロナ」をスタートさせたら、いまでは1日の新規感染者や重症者は過去最多レベルで推移している。
防疫当局は重症者の「最終防衛ライン」を500人と定めていたのに、それがやすやすと突破突されてもう522人に達した。
このままだと重症者が病室に入れず、廊下に横たわっているような修羅場になるかもしれないという指摘も出ている。

一方、日本はここ数か月で状況を劇的に改善させたから、韓国としては比較せざるを得ない。

中央日報日本語版の記事(2021.10.04)

1カ月間に感染者が10分の1に減少…「ウィズコロナ」で先を進む日本の秘訣

 

これとは別に、このまえ韓国で放送されたサッカーの日本対オマーン戦の試合でも、 日の丸ではなくて韓国の国旗を25秒も画面に写す放送事故が発生した。
それを知った日本のテレビ関係者は「信じられない…」と絶句したとか。
日本人からすると、「なんで?」と首をひねるような事故や事態が韓国ではちょこちょこ起きるのだ。

 

日本と韓国の社会を比べると、発展のレベルは基本的には似ている。
アメリカ人が指摘するように、IT環境など韓国がリードしていて便利に生活できる部分もある。
でも、韓国では考えられないような事態が何度も発生していて、社会基盤のモロさを露呈するから、日本社会の方が安定感はある。
日本は事前に十分考えていて準備をしているから、困ったときに困らないような体制ができているようだ。
それは表面的には見えないけれど、イザというときに残酷な差となって表れる。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

日本人と韓国人、考え方の違い。見た目か中身か?利益か基礎か?

4 件のコメント

  • > IT環境など韓国がリードしていて便利に生活できる部分もある。
    ははは、IT環境だけでしょ? 他に何かありますか? それだけで「発展のレベルが基本的に似ている」と?

    > ディーゼル車を走らせると有毒なガスを排出するから、それを無害化するために尿素水が必要になる。
    > これがなくなるとトラックなどが動かなくなって
    正確には、「尿素水が排ガス浄化装置(SCR)に供給されないと、(安全装置が働いて)エンジンが掛からないのでトラックなどが動かせなくなって」ですけどね。
    まあおそらく、いざとなったら、安全装置を解除して排ガスを浄化しないままディーゼル車を動かせるようにするでしょうよ。
    以前問題になった、ドイツ車の排ガス浄化装置(ボッシュ製)に不正な迂回スイッチがつけてあったのと、同じ方法です。

  • 大体共感します。日本に行ってみた韓国人なら多分大部分は共感するでしょう。
    “また違う韓国がここにいるね”という気がするほどです。そうするしかないのが、韓国の基本的な社会体制が日帝時代から築かれてきたからです。基本骨格がほぼ同じなのです。
    私が日本に行って思ったことは韓国とほぼ同じでしたが、物価がとても高いということでした。特に交通費は途方もなく高いですね。多分韓国の3倍程度になるようでした。それにもかかわらず、異質感よりは同質感の方が、大きく感じられました。

  • ほかにもあります。

    >正確には、「尿素水が排ガス浄化装置(SCR)に供給されないと、(安全装置が働いて)エンジンが掛からないのでトラックなどが動かせなくなって」ですけどね。
    韓国メディアの報道を見ると、そうでもないようです。

  • わたしは明洞を歩いていて日本の近い感じをしました。
    鍾路は雰囲気が違います。昔から韓国の市場だったからでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。