韓国が嫌いでキライできらいで、だれかが韓国語を使ったり、韓国をホメたりするのを聞くと怒り出すような日本人がいたとする。
でもその日本人がビビンバやキムチが大好きでよく食べていたとしたら、「コラコラ」というツッコミはもはや不可避だ。
韓国の全国紙・朝鮮日報にそんなコラムがある。(2019/06/15)
【寄稿】すしと反日
漢学者のホン・チャンユ氏(故人)は「徹底した民族主義者」で、教え子が日本式の言葉を使ったり、植民地時代に韓国の近代化がうながされたという話をすると、そのたびに厳しい態度を見せたとか。
反日を「生活化したと言っても過言ではなかった」というホン氏。
でも彼は寿司が大好物でよく食べていた。
それで教え子らは、「反日とすし好きは一見矛盾しているが、先生にその矛盾について直接聞くことはなかなかできなかった」という。
つまり、「オイオイ」とツッコミたいけど、偉大な先生にそれをするのはばかれると。
それでもある日、「日本を嫌いながらすしが好きというのは理解できません」と教え子が言うと、ホン先生は「朱子は曹操体を使った」と答えた。
はい?っていう顔を教え子はしたと思う。
儒教的な価値観を尊重する朱子にとって、皇帝を廃して自分がその座についた曹操とは奸臣の中の奸臣、悪党の中の悪党だった。
でも、朱子はそんな憎い曹操の字体を使ったという。
意味をつかみかねている弟子に、ホン先生はこんな説明をする。
「食べ物がおいしければおいしく食べるように、字体が良ければ自然にその影響を受けるようになる」
朝鮮日報のコラムはこの言葉をこう解釈した。
芸術作品を評価する際には政治や道徳といった作品以外の外的な要素ではなく、おそらく作品そのものの品格と芸術的境地をまずは見よという意味なのだろう。
えっと、はい?
コラムの筆者が言うには、日中韓の人間にはこんな特徴がある。
日本人:思弁性よりも具体性を重視する。
中国人:頭の回転が速くて実利に目ざとい。
韓国人:大義名分(行動の理由や根拠)を前面に出して、物事の定義に執着する傾向が強い。
韓国人はまず自分の正義を主張したり、相手の悪を指摘してから行動にうつす傾向があるということだろう。
上の場合、弟子たちはホン先生の「反日」のイメージにとらわれ過ぎるから、寿司好きということに矛盾を感じるけど、朱子が“敵”である曹操の字体を使ったように、日本のすべてを否定するのではなく、良いものは素直に認めて受け入れるべきだとホン先生は言いたかったらしい。
そんなホン氏の話を「実用主義的な観点」と高評価するコラムは、「一見相いれないことでもどこかに共通点を見いだそうとする柔軟性は、政治家だけに必要な素養ではないようだ」となんだかサトッタようなことを言う。
要は日本は嫌いでも、「ウマいものを食べたい」という人間の根源的欲求には逆らえないということだろう。
だから寿司に手を伸ばすけど、その行為は日ごろの自分の言葉と矛盾するから、偉大な朱子を持ち出して「それはオマエたちの見方が浅いのだ」と説教して自分を正当化する。
「中二病でも恋がしたい!」みたいに、「反日でも寿司が食べたい!」と素直に言えばいいのに、漢学者のメンツがそれを許さない。
「私のことは嫌いでも、AKB48のことは嫌いにならないでください」みたいに、部分否定と全否定を分けて考えるのは普通の思考法なのに、大義名分を大事にするから「作品そのものの品格と芸術的境地を~」と学問チックで大げさな言い回しになる。
だいたい日本式の言葉を使うだけで怒るのなら、「大統領」「芸術」「自由」といった日本語由来の韓国語を使うこともできなくなる。
ホン先生はそんな言葉を使わなかったのか?
これはこれで、「オイオイ」とツッコまれたら、リッパな説明でカウンター攻撃をするのだろうけど。
その点、韓国のネット民はすがすがしいほど率直で正直だ。
だから都合の良い「二重基準」には容赦がない。
2019年に韓国政府が「日本には二度と負けない!」と日本製品の不買をあおったのに、翌年になって日本の新型インフルエンザ治療薬「アビガン」が注目を浴びると、政府はすぐに輸入の検討を始めた。
朝鮮日報の記事(2020/02/25)
新型肺炎拡大の韓国 日本製「抗インフル薬」輸入検討
反日を叫んでいた政府が日本製品の輸入には前向きということで、韓国国民からは「出た!選択的不買運動ww」とやゆするこんなコメントが殺到。
・ノージャパンを扇動しておいて、薬剤だけは特例で輸入を検討wwwwwww
・どうしてそこまで言葉と行動が一致していないんですか?
・ノージャパンを叫んでいる人間は、最後まで投薬を拒否し、抗日精神をあの世まで保持し続けてください。
人間は「死にたくない」という根源的な欲求には逆らえない。
でも言動の不一致を突かれるとメンツを失うから、「柔軟性という素養」とか「朱子は曹操体を使った」みたいな遠回しで抽象的な説明をして、自分の自尊心や名誉を守ろうとする。
ずっとそんな態度だから、「日本が嫌いで不買はするけど、寿司や抗インフル薬は別」といった選択的反日(二重基準)はいつまでも変わらない。
でも、その辺の都合の良さやバカバカしさは国民には見抜かれているから、「抗日精神をあの世まで保持し続けてください」と笑われる。
韓国社会の大義名分と、ネットコメントのギャップはなかなかおもしろい。
「思弁性よりも具体性を重視する」という日本人はコトバより行動を重視するから、そんな柔軟性は信頼を失って「だったら、はじめからそんなコト言うな」となるはず。
「品格と芸術的境地をまずは見よ」とか言うよりは、いっそのこと「反日でも寿司が好き!」と素直に開き直った方がきっと好印象。
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> その点、韓国のネット民はすがすがしいほど率直で正直だ。
わはははは、それはネット民だけが率直で正直であるわけじゃありませんよ。
ネット上の匿名での発言は、他人に誰だか知られることなく発言できるからに過ぎません。
今日韓国人は激しい価値観の混同の中にいると言えます。
そのため、韓国人ですら、自らの考えを理解できないほど、思考の矛盾を経験しています。
「내로남불(NAERONAMBUL)」という言葉も生まれました。国民に反日意識を高めようと言う国家公務員が日本産ボールペンを持ってくることもありました。
このような偽善的思考が変わるには、多くの時間がかかると思います。
私がこの韓国人と話をしていて意外だったのは、日本に対してあまり関心がない韓国人が一番ということでした。
ソウルにいるアメリカ人も同じことを話していました。
ただ韓国紙の報道を見る限り、日本人の韓国に対する関心よりはずっと強いように感じます。