ことしの4月、隣国でこんなハッシュタグが作られたのをご存じか。
この少しまえに日本政府が、福島原発から出た放射線物質を含む汚染水を飲料水のレベルにまで浄化し、処理水に変えてから海に放出すると発表した。
それを受けて、韓国で誰かが韓国語、日本語、英語のメッセージとこんなハッシュタグを作って、国の内外へ拡散しやがりましたとさ。
これをソウルに住む知人の韓国人(女性)に見せたら、
「あっ!これ、わたしもSNSで見ました。そのままスルーしましたけど。どこの国だって、一定数のアホはいるじゃないですか。ほとんどの韓国人はこんなものは無視しますから、気にしなくていいですよ。」
と一笑に付す。
「ところで、よくこんなモノを見つけましたね」と感心する彼女に、日本でこれは全国メディアで紹介されたと伝えてみた。
それは「文春オンライン」にある、ジャーナリストの金 敬哲氏が書いたこの記事だ。(2021/04/24)
日本製品の不買運動も再び動き出し、インターネット上では「#日本人が地球の井戸に毒を入れた」というハッシュタグ運動が繰り広げられている。
「日本人が地球の井戸に毒を入れた」福島原発処理水放流で過激化する韓国の反日デモ〈東京五輪ボイコット、不買運動の再燃も〉
記事を見ると、このときは東京五輪を直前にして、あちらでは反日の機運がかなり盛り上がっていた。
首都にある外国公館の名誉を守ることはその国の義務で、その周辺でデモを行うことは法律で禁止されている、という国際常識が韓国の日本大使には通じないようで、警察の制止を無視してデモをする集団がいた。
日本政府が韓国政府や警察当局に、彼らの解散を求めるも状況は変わらず。
警察権力をもってしてもこの”不法デモ”を粉砕できないのは、韓国の与党議員が現場を訪れて、こうした連中の「不法集会を激励しており、警察による「強制解散」はますます難しくなっている」からだと記事にある。
日本大使館前ではこんな反日活動が行われていて、ネットでは「#日本人が地球の井戸に毒を入れた」が拡散されていたのがことし4月ごろのこと。
ほかにも「ユニクロ自警団」なんて組織があって、ユニクロの製品を買う韓国人をからかっていたらしい。
こういうことをするのは、文政権寄りの人たちだ。
「そういえば、スマホでそんな画面を見た」と思い出した知人にとっては、こんなことが日本の有名メディアに取り上げられて全国的に紹介されたことに、「えええっ!」とビックリ。
こんな反日キャンペーンは韓国ではよくあるけど、ほっとけばすぐに消える。
だから何も気にしてなかったけど、こんな小さな動きが日本でそんな大きく報道されるとはまったく想像していなかったらしい。
実際、こんなメッセージより、韓国人にはるかに大きな影響を与えていたのはキメツだ。
朝鮮日報の記事(2021/05/20)
『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』は今も平日3000-4000人、週末で1万人は観客が入っており、近く『ソウルフル・ワールド』の記録を上回るものと見られる。
コロナ禍でも韓国で観客200万人突破した『鬼滅の刃』
ただ、日本に住んでるボクからしたら、これは想定内。
良くも悪くも最近の日本で韓国の注目度が高いから、こういう小さな「反日」の芽が出たら、すぐに見つけてネットで拡散されることはよくあるのだ。
さらにこのときは日本でも、ボイコットをちらつかせて東京五輪に反対する韓国の動きへの反発が強かったから、「#日本人が地球の井戸に毒を入れた」なんてインパクトのある言葉を見つけたら、全国メディアがそれを見出しで使うことは十分理解できる。
実際、この記事はかなりの人に読まれた。
「こんな小さな動きを大手が取り上げるなんて…」と知人は驚いたワケだが、ボクとしてはこんな悪質な反日キャンペーンに国が乗っかった方がオドロキだ。
中央日報(2021.04.26)
汚染水放出は地球で最も大きな井戸である太平洋を汚染させる行為という「井戸汚染論」を繰り広げるための外交戦に出たといえる。
「地球で最も大きな井戸を汚染させる」 日本の海洋放出に対抗して韓-中南米が世論戦
このとき韓国の外交部(外務省)が日本の「福島汚染水海洋放出」に対抗して、太平洋に面した中南米国家との共同対応を急いでいた。
それで政府は外交部第1次官をコロンビア・コスタリカ・メキシコに派遣して、「汚染水放出」に関連した懸念を共有したという。
さすがに「毒」とは書いてないとはいえ、政府レベルで「井戸汚染論」を海外に訴えるという外交戦に出るとは思わなかったぜ。
一部のアホが「日本人が地球の井戸に毒を入れた」というハッシュタグを作ることより、「汚染水放出は地球で最も大きな井戸である太平洋を汚染させる」と国が海外へアピールすることの方がはるかに深刻だ。
日本の対応はIAEA(国際原子力機関)が認めた安全かつ常識的なもので、そもそも韓国も月城原発から処理水を出しているから、「地球で最も大きな井戸~」はブーメランでしかない。
「中南米3国も韓国政府の立場に共感を表して連帯を約束した」と記事にあるが、当事者に確認すれば「そんな話は知らない」ときっと言う。
日本に対抗して作られたという「韓-中南米」のラインがそのあとどうなったか、続報を一度も聞いたことがない。
最近、日本にいる韓国人と会ったとき、このメッセージについて聞いたら彼はまったく知らなかった。
「この文は悪質ですね。関東大震災のときに多くの韓国人が殺されるきっかけになった、「韓国人が井戸に毒を入れた」という日本人のデマを参考にしたものです。」
と言って顔をしかめる。
かつて日本人が流したデマを、100年後に形を変えて自分たちが流すのだからあきれる。
日韓の情報には割とくわしいと自負していた彼も、自分さえ知らなかったようなコトが日本の全国メディアで紹介されて、小学生も見るヤフーに載ったと知って驚いた。
でもこのメッセージが、どれだけ多くの日本人の怒りを呼んだかはだいたい想像がつく。
せっかく韓国文化が日本で受け入れられているのに、くだらんメッセージで嫌韓感情が大いに刺激されたら、その何%かが台無しになる。
そうなると、日本で生活している自分たちにとってもマイナスだ。
「あんなの取り上げる必要はないですよ」といっても、いまの日本社会は韓国で起きた小さな反日も逃さず、瞬時に伝わり拡散されるようになっている。
その需要はけっこう高いから。
情報をねつ造したら日本のメディアが悪いけど、一部アホがそういう悪材料を提供している以上、「無視してください」は通らない。
韓国内でこの動きをなくすことができない以上、日韓で負の連鎖を生むこの構造はもうどうしようもない。
だからそれはあきらめるとして、せめて政府がそれに乗っかるな。
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