【日本村と韓国コンビニ】政治は凍結中も、進む文化交流

 

10年ぐらい前に知人の韓国人(20代・女性)がワーキングホリデーで日本へやって来て、東京でバイトをしながら生活していた。
そのころ久々に会ったとき、

「浴衣はカワイイし日本らしいし、本当にほしいんですよー」
「買えばいいじゃん。ユニクロなら安いし」
「いえ、値段の問題じゃないんデス」

といったやり取りのあと、浴衣を買っても韓国に帰ったら、もう着る機会がないから意味がないと言う。
せっかく浴衣を着るなら外出したい。
でもあれで街を歩いていたら、変な目で見られたり嫌がらせを受けるかもしれない。
韓国には浴衣を着て行くところがないから、浴衣はとても魅力的だけど、「日本限定」と思うと買うべきかどうかのハムレット状態におちいってしまう。
このあと彼女が浴衣を買ったかどうかは知らない。

でもそんな10年前とは違って、いまの韓国には「ニジモリスタジオ」(東豆川日本村)がある。

 

 

ソウルから車で行くと、まずは大きな鳥居がお出迎え。
そこを通り抜けると、江戸時代か京都をイメージしたような日本の伝統家屋がならぶ街並みが広がっていて、韓国の人たちが着物姿で写真を撮って歩き、疲れたらラーメン店やお寿司店ののれんをくぐる。
コンビニでは日本酒や日本のお菓子も売ってる。
本屋・カフェ・雑貨屋の店員も日本の服を着ていて、『となりのトトロ』や『ハウルの動く城』の音楽が流れるこの「日本空間」に韓国語はほとんどないという。

なんでエロ本を置いてあるのか知らんけど、着物を着て鳥居や祭壇をバックに写真を撮るのを見ると、確かに「日本統治を象徴するアイテムに対して反感はないのか?」という疑問が湧いてくる。

でも中央日報の記事によると、「日本旅行ごっこ」の人気はかなり高い。(2021.12.23)

「2万ウォンで日本旅行」 韓国若者世代が集まるソウル郊外の奇妙な場所

ここで「日本体験」をするのはほとんどが20~30代のヤング(昭和感)で、週末には1日で2000人近くが訪れることもあるとか。
韓国の若者にも「映え」は大事で、インスタグラムにはすでに1万件を超える投稿がある。

上の記事では-8度という極寒のなかで、多くの韓国人観光客が着物姿で歩いていたというからビックリだ。
ほかにも鎧(よろい)のレンタルもあるらしい。
ここにある旅館はかなり強気の値段設定で、一泊50万ウォン(約4万8千円)からとなっているのに、週末に空室を探すのはむずかしいという。

もちろん、ネットには反日感情をむき出しにする人々も多い。
でもニジモリスタジオ側は、

「反日現象に対する恐れはあったが、実際に訪問客から抗議を受けたことはない」

と意に介さない。
日本に行きたくても行けない韓国のMZ世代(=若い人たち)を集めることができて、いまのところこの施設は成功しているようだ。

日本での反応は「日本の文化を好いてくれるのは普通に嬉しい」という意見もあれば、「No Japan じゃなかったんですか???」と受け止め方は複雑。
記事ではそんな事情に関係なく、

「日帰り日本旅行」
「車に乗って日本に来た」
「今日だけイエスジャパン」

といった韓国人のうれしそうなコメントが載っている。

 

こんな「日本ラブ」を見ると、激しい反日感情の高まりを見せていた2019年が遠くに見えてくる。
(もっとも「今日だけイエスジャパン」みたいに、明日からは「NO」と言うかもしれないけど。)
当時はノージャパンの直撃を受けて、韓国最大の日本旅行のオンライン・コミュニティ「ネイルドン」が、「2019年7月はかなり残酷な月として、永遠に忘れられない日になると思う」というメッセージを残してサイトを休業状態にした。
その2年後にはコロナ禍のなか、1日に2000人近くも日本村を訪れて、着物姿で鳥居の前で写真を撮っては、「車に乗って日本に来た」なんて投稿をSNSにアップするようになるとは。
韓国の人たちは、熱くなるのも冷めるのも本当に早すぎる。

半年ほど前、中国への反感から、チャイナタウン構想がつぶれてしまったこととは対照的だ。

中央日報(2021.04.26)

「反中感情」が広がり、江原道をはじめ、中国の文化体験空間を作ろうとしていた各地方自治体と民間企業は対応に追われている。

韓経:反中感情拡大に…収まらない「チャイナタウン」論争=韓国

 

韓国大統領府に「チャイナタウン建設を撤回してほしい」という国民請願が寄せられると、わずか1カ月間で67万人の賛同者が集まったという。
ここに中国資本は投入されていないし、韓国経済の活性化に役立つという説明もむなしく、中国風の建物などが国民感情を逆なでしたことなどですべてがストップし、この事業に投じた時間とカネは無駄となった。
こうした「反中感情」の広がりが、結果的に「親日感情」につながっていると思うのですよ。

 

日本は日本で「嫌韓感情」はあるけれど、それはほとんど政治に対するもので文化は別。
だから国内ではこんな韓国ビニ(韓国コンビニ)が各地にできて、韓国と同じものを手に入れることが簡単になってきた。

 

 

国民が相手の国の文化に慣れ親しむのは良いことだ。
でも政治はまったく別で、いまも冷戦状態にあって、韓国政府はいまも政治と経済などを切り離して考える「ツートラック」を主張している。

聯合ニュース(2021.12.23)

韓国外交部「米と供給網はじめ協力拡大へ」 対日はツートラック維持

歴史問題では日本に謝罪や賠償などを追求すると同時に、経済や安保では協力を求めるというツートラック戦略は韓国にとって都合が良すぎる。
だから、いまの日本政府は相手にしていない。
まずは韓国側が解決案を示さないと、日韓関係は何も動かないのが現状だ。
政治は相変わらず永久凍土だけど、国民レベルの文化的な触れ合いは何だかんだで進んでいるから、この「ツートラック」ならわりと順調だ。

 

 

日本中国韓国の食文化:正月料理「雑煮・餃子」の同じと違い

悪人に慈悲:日本人と中国人&韓国人のやさしさ・価値観の違い

中国人やインド人が見た日本人。「背筋が凍る」ほど信用重視。

日本 「目次」

中国 「目次」

 

2 件のコメント

  • 野球が好きな私と息子は2019年の冬に札幌旅行に行って札幌ドームを訪問して清宮幸太郎選手のユニフォームを購入しました。 その後、その年の夏には大阪へ旅に出て甲子園球場で巨人対阪神戦を観戦し、大阪桐蔭高校出身の根尾 昂(中日)選手のユニホームを購入しました。
    しかし、そのユニフォームは自宅で保管するのに満足しています。 もし野球試合を見に行くときに着て行くこともできますが、韓国人の反日精神のせいで非難されそうなので着て行けません。
    民間の交流は、最小限の日韓の絆をつないでいくために重要なことです。
    根尾 昂のユニホームを着て韓国野球場に入っても、非難されない日が来ることを願います。

  • 政治的にはここ数年、日韓の首脳がまともに会談を行えないほど悪化しています。
    でも、互いの文化に触れる機会はそれに反比例して増えています。
    政治と民間を分けて考えるツートラックは進んでいます。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。