【超絶ラッキー】ノルマンディー上陸作戦で、2時間死んだフリ

 

きのう記事で、悲劇の少女アンネについて書いた。
第二次世界大戦中、連合軍があと少し早くオランダに到着していたなら、アンネは強制収容所で殺されることはなかったはずだ。
そんなユダヤ人とは反対に、同じころヨーロッパで、歴史に名を残す超絶ラッキーマンがいたのをご存知だろうか。

世界史にある無数の戦いの中で、最も有名なものの一つが「ノルマンディー上陸作戦」だ。
ちなみにこの正式な作戦名は「ネプチューン作戦」という。
さらにちなんじゃうと、フランス北部のノルマンディーに上陸してから、パリを解放するまでの作戦全体は「オーヴァーロード作戦(Operation Overlord)」だ。
もちろんアインズ・ウール・ゴウンは無関係。

第二次世界大戦の末期、ナチスとかいう悪魔に占領されていた西ヨーロッパでは、各地で「ユダヤ人狩り」が行われて罪のない多くの人が理不尽に虐殺されていた。
そんな悪夢を終わらせるためにも、米英仏を中心とする連合軍がナチスを駆逐して西ヨーロッパを取り返すべく、「オーヴァーロード作戦」を決行する。
その初戦、ノルマンディー上陸作戦は6月6日に始まった。

 

赤がドイツ軍の部隊

 

200万人もの連合国兵士がドーバー海峡を渡って、北フランスのノルマンディー海岸に上陸した。
人類の歴史でも最大規模となるこの上陸作戦は、どうしても下の写真のような海からの攻撃のイメージが強い。

 

 

でもこのとき連合軍の上陸を容易にするために、それよりも先に、アメリカ・イギリスの落下傘部隊(空挺師団)が海岸付近のドイツ軍に奇襲を仕掛けることにした。
この空襲(トンガ作戦)の主な目的は、ペガサス橋とホルサ橋を占領すること、そしてメルヴィル砲台陣地を無力化させること。
これに成功すればドイツ軍を混乱させて、連合軍の上陸作戦を成功に導く可能性が高くなる。
そんなことで6月5日の深夜(6日の0時過ぎ)、連合軍の空挺師団がパラシュートやグライダーを使って、闇夜に紛れてドイツが支配する街へ降ってきた。

 

作戦決行の直前、時計を合わせる空挺師団の兵士

 

飛行機で目地的上空まで移動して「幸運を祈る」、「オレにそんな必要ねぇよ」みたいなやり取りがあって、パラシュートを使って空から攻撃を仕掛ける展開はアニメやマンガでよくある。
そのまま着地して、敵との激しい戦闘が始まるのはフツウ過ぎ。
それでは編集者から「もっとひねれよ」と言われるから、建物に引っかかって着地できないウッカリさんを登場させることもある。(この発想もベタ)

ノルマンディー上陸作戦のいわば空バージョンのトンガ作戦でも、実際にそんな兵士がいた。
下のアメリカ人のジョン・スティール(Steele)二等兵だ。

 

 

降下する途中、彼のパラシュートは教会の屋根に引っかかってしまった。
宙づりになったジョンの眼下では、無数のドイツ軍兵士が空に向かって射撃している。
自力ではどうすることもできなくなって「あれっ? 超やべーじゃん、どうすんのオレ!」とパニック状態になり(想像)、とりあえず彼は「死んだふり」(pretending to be dead)をすることにした。

His parachute caught in one of the pinnacles of the church tower, leaving him hanging on the side of the church. Steele hung there limply for two hours, pretending to be dead,

John Steele (paratrooper)

現在その教会には、宙づりになったジョン・スティールの人形がある。

 

ドイツ兵に狙い撃ちにされて友軍が次々と死んでいくなか、自発的に「死体」となったことで、ジョンは数少ない生存者の一人となった。
このとき彼はうまくドイツ兵の目を盗んだと言われる。スティールだけに。
2時間後にドイツ兵に発見されて、

「えっ! アンタ生きてんの?」
「ええ、はい…」

といった会話が(おそらく)あった後、彼は捕虜となる。
でもジョンはそこから脱出することに成功すると、再び米軍部隊に参加してドイツ軍との戦闘を行った。
戦後、その勇気が評価されてメダルを授与され、彼の行動はノルマンディー上陸作戦の伝説的エピソードとなる。
ただ連合軍がもう少し早くノルマンディーに上陸していたら、救える命もあったのだけど。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。