【受けて立つ】佐渡金山をめぐる歴史戦、日本と韓国の反応

 

新潟と佐渡市の20年以上にわたる悲願、それが佐渡金山の世界遺産登録。
この動きに隣国が「マッタ!」をかけて阻止しようとすると、日本ではそれを正面から受け止めようとする人たちと、今回は韓国との対決は回避して、登録を見送ろうとする人たちの2つの動きが出てきた。
前者の代表的な勢力は安倍元首相など保守派のみなさんで、韓国メディアもその主張が気になるらしい。

朝鮮日報(2022/01/28)

安倍元首相、佐渡金山問題で「韓国との歴史戦を避けることはできない」

自民党政調会長の高市氏は「国家の名誉にかかわる事態だ。必ず今年度に推薦を行うべきだ」と主張するし、林芳正外相も「韓国への配慮を行うことは全くない」と言う。
でも岸田首相は消極的で、韓国との歴史戦は避けようと登録を見送ろうとする。
が、最大野党の立憲民主党も世界遺産登録への推薦を「望ましい」と言うし、新潟県知事も政府に前向きな決断を迫った。結果、いろんな立場の人から促された岸田首相は推薦を止めるのを止めて、佐渡の金山を世界遺産としてユネスコに推した。

この一報に新潟県はHPで喜びを爆発させる。

 

 

「佐渡金山には世界的な価値がある!」と注目されたのは、独自の生産システムを開発して、17世紀には世界最大の金の生産地となったことが高く評価され、世界遺産の条件である「普遍的価値」を満たしていると考えられたから。
つまり対象の範囲は江戸時代のみ。
明治時代以降を取り上げて、「朝鮮人が強制労働させられた被害現場である」という韓国側の反発は意図的なポイントずらしで、さらに悪意の拡大解釈をしている。

それで岸田首相は、「いわれなき中傷にはき然毅然と対応する」と強調したワケだが、これで推薦を見送っていたら国民に「弱腰」、「口だけ」と叩かれるのは避けられなかった。

有言実行した岸田首相に、読売新聞は社説でこんなエールとプチ不満を示す。

「歴史問題に対する事なかれ主義を改め、対外発信を強化する契機とすべきだ。」
「韓国の不当な主張に積極的に反論する姿勢を見せなかったのは物足りない。」

産経新聞も全面支援だ。

「推薦を見送れば、朝鮮半島出身者が過酷な労働に従事したと反発する韓国の批判に屈することになった。」
「政府は誇りをもって推薦し、登録に全力を挙げなくてはならない。」

いったん見送りを示唆したとき、日本政府は韓国に配慮することはないと言っていたけど、国民の目には、配慮を通り越して「屈した」と映ってしまう。
韓国の主張がおかしいのは時期だけじゃない。
昭和15~17年に佐渡金山で働いていた朝鮮半島出身の労働者には、給料が支払われていたことが分かっていて「強制労働させられた」という批判は事実と敵対している。

とにかくこれでサイは投げられて、ルビコン川をぴょんと飛び越えてしまった。

歴史戦に応じた日本に韓国側は怒り爆発だ。

ハンギョレ新聞(2022-01-29)

韓日関係を再び「歴史戦」に追い込む無責任な行動だ。佐渡金山は太平洋戦争中に約2千人の朝鮮人が強制労働に動員された悲劇の現場である

[社説]日本は佐渡金山の世界遺産推進強行に伴う韓日関係悪化に責任を負うべき

 

「悲劇の現場」という感情的な表現はあるものの、その具体的な内容とそれを事実と裏付ける根拠は何もない。
でも勢いならある。

韓国政府、佐渡金山の世界遺産推薦に「強い遺憾」…日本大使呼んで抗議」(中央日報)

佐渡金山の推薦決定 国際社会に「強制労働の歴史」伝える活動へ=韓国」(朝鮮日報)

 

これから日本は21カ国で構成される世界遺産委員会で、登録に必要な3分の2以上の賛成を得ないといけない。一方、韓国側は全身全霊でそれを阻止するはずだ。
一度申請して世界遺産委員会から却下されたら、もう次の申請は認められないから、「佐渡の金山」にはこのワンチャンしかない。韓国も世界を舞台にして、日本に歴史戦で負けたらメンツ丸つぶれだ。
これは日韓の絶対に負けられない外交戦になる。

といっても目標は佐渡金山を世界遺産にすることで、韓国をやっつけることじゃない。
だから引けないところでは韓国と対峙して、でも時には友好的に接したりして、新潟と佐渡市の悲願を達成させてほしい。

 

 

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2 件のコメント

  • > 全国・国民的な盛り上がりでは、現時点では残念ながら日本が劣っているようだ。

    ははは、国民世論の「盛り上がり」の程度によって事の是非を今から判断しているようでは、かの国と同レベルですよ。そんな戦い方をしていれば他国からも同レベルの言い争いに見られるだけ。
    「問題視している時代が違う」「強制労働ではない、ちゃんと賃金が払われている」「併合されていた時代であり、自国民の労働であった」と具体的に証拠を提示することにより、冷静に、冷徹に、事実を突きつけていくべきです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。