いま韓国の人たちがご立腹らしい。
朝鮮日報(2022/01/29)
中国人が経営する「ニセ韓国料理店」、欧州で増加
フランス・パリの中心部に韓国式バーベキュー、韓国みそ鍋・プルコギ(焼肉)などの韓国料理を提供するレストランがある。
「私がこれまで行った韓国料理店の中で、味もサービスも最高の店」とフランス人から高い評価を受けるこのお店、中国人オーナーというのが韓国人としては不本意らしく、現地に住む韓国系の人は「あそこは本当の韓国料理店ではありません」と不愉快そう。
看板に韓国料理と書いて客を集めておいて、中国料理を混ぜて出しているところもカチンとくるはずだ。
こういう「本当ではない韓国料理店」はパリだけで20店ほどある。
中国人経営の韓国料理店はリヨンやマルセイユなどのフランスの都市や、ドイツやチェコの主要都市にも次々と登場している。
もちろんこれは、いま何が売れるかを敏感に感じ取った中国人のビジネス感覚によるもので、そんな状況を作ったのは、ヨーロッパでの「最近の韓流ドラマやK-POPの人気に代表される韓国文化ブーム」という。
韓国人としては、日本風にいえば「鳶(とんび)に油揚げをさらわれる」(横から大事な物を奪われる)といった思いか。
カネのかかった中国人経営者に躊躇(ちゅうちょ)はない。
店名に韓国を連想させる「K」の文字を入れたり、韓国語(ハングル)で「ソウルから来た」と宣伝したりと、韓国のブランド力を好きなだけ利用している。
でも、ただブームに乗っかるだけではなく、現地の人の舌に合わせて辛い韓国料理を甘辛の味にするとか、独自のアレンジを加えているらしい。
そして中国人オーナーは仲間にも稼ぎの機会を与えている。
料理で使う野菜や肉、トウガラシやしょう油などの調味料も中国系スーパーから調達していて、安定した食材供給ができるよう、フランス北西部に中国系のキムチ工場までつくったというから、中国人の行動力・スピード感・積極性は控えめに言ってさすが。
コロナ禍のいま、ウーバーイーツがヨーロッパでも活躍しているのは日本と同じ。
中国人の韓国料理店では「HungryPanda(熊猫外売)」や「ALORSFAIM(方円食里)」といった中国系デリバリー・アプリを積極的に利用しているという。
韓国が築き上げてきたものを土台に、中国人ネットワークを駆使して全体的に利益をあげているようだ。
本当ではないけどアグレッシブな韓国料理店に対して、ヨーロッパにいる韓国系の人たちはどう思うのか?
現在のところは、「韓国文化に対するイメージがアップし、地位が上がっているから起こっている現象だ」と大目に見ている(あきらめてる?)雰囲気のようだ。
でもやっぱり、
「中国系韓国料理店は『ニセ韓国料理』をヨーロッパの人々に出している」
「韓国料理の地位をおとしめ、本物の韓国料理を駆逐する『悪貨』になる恐れがある」
といった不安や怒りを感じる人はいる。
これは共存ではなくて、オイシイところを一方的に吸い取っているようなものだから、腹立つ人は多いだろう。
一方、遠く離れた島国の住人はこう思った。
・日本で日本人が中華料理屋を経営するようなもので、問題ないだろ?
・韓国人が経営するニセ日本料理屋はないのか?
・これのからくりズバリ言うわ
中国出身の朝鮮族の人
・パキスタン人がインドカレー屋やってもどうでもいいだろ
・外国人がやったら偽料理店になるなら、韓国人がやってる日本料理店は全部偽物だと韓国自身が認めることになるわな
個人的には、中国人が作る中華風韓国料理はかなり魅力的だ。
食に対する中国人の知識やスキルは実際すごくて、知人のニュージーランド人は「オレの人生の中で出会った最高においしいフィッシュアンドチップスは、中国人シェフの作るものだった」と言っていた。
だから韓国人が「ニセ韓国料理」と呼ぶものを、ヨーロッパ人が「私がこれまで食べた韓国料理の中で最高の味」と絶賛しても驚かない。ヨーロッパ人にとっては、誰が作っているかはまったくもってどうでもいい。
「韓国人が経営するニセ日本料理屋はないのか?」という日本人のコメントと表現は違うだけで、同じ内容のことを朝鮮日報の記事の中で韓国系住民も言っている。
「かつて日本料理が流行した時、猫もしゃくしも日本料理店を開業していたのと同じ状況だ」
20年ぐらい前に東南アジアへ行った時、「韓国人が経営する「ニセ日本料理店」、アジアで増加」という話をよく耳にしたから、この記事はボクにとっては、当時の記憶とピッタリ重なるデジャブ。
(デリバリーとか多少の違いはある。)
これには現地の日本人から、「日本文化の地位が上がっているから起こっている現象」という声のほか、「ニセもの」という非難や「日本料理の地位をおとしめる」といった懸念を聞いた。
日本料理に混ぜて韓国料理も出すから、あるタイ人の日本語ガイドは「いやソレ、違うから」と日本人にツッコまれるまでキムチを日本料理と思っていた。
アメリカやヨーロッパでも韓国人経営の日本料理店はよくあったから、同じ反応が現地の日本人からあったと思われ。
むかし日本人が経験したことをいま韓国人がしているというのは、国際社会で韓国の影響力が高まっている証拠だから、これは一種の有名税だ。
韓国人にとっては不愉快なのは分かるが、かといってこれに怒ると「ネロナムブル」(自分がすればロマンス、他人がすれば不倫=二重基準」の指摘は避けられない。
遠く離れた欧州の火事は日本人にはどーでもいいことだけど、日本料理の地位や人気は下がってないだろうか?
20年間は「ニセ日本料理店が増えてる!」と聞いて腹が立ったけど、そんな話を聞かなくなると、今度は何か不吉な予感がするとは。
まあ韓国の人たちも20年後に分かりますよ。
「飢え」が変えた食文化。日本と世界(ドイツ・カンボジア)の例
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