ロシアが2月24日に、ウクライナへ軍事侵攻を行ってからもう10日ほどが経つ。
この暴挙に対して欧米を中心に世界中が怒りに包まれて、プーチン大統領らの資産を凍結する、ロシアの銀行との取引を禁じる、ロシアへの輸出規制を厳しくするといった、これまでに例のないような厳しい経済制裁が行われている。
スポーツ界もこの戦争は許さない。
国際サッカー連盟(FIFA)と欧州サッカー連盟(UEFA)は、ロシアのクラブ・代表チームの大会参加を禁止した。これによって、ことし行われるW杯カタール大会にロシアは出場できなくなったワケだ。
国際スケート連盟(ISU)もロシアの選手や役員を、主催する大会に無期限で参加させないことにした。
世界中のいろんな面で「ロシア排除」が進む中、すごく困っている国があるらしい。
今月はじめに開催された北京オリンピックに出席したプーチン大統領は、習近平国家主席と会談を行い、両首脳はNATO(北大西洋条約機構)のこれ以上の拡大に反対するという共同声明を発表した。
「中国側は、ロシアが提案している欧州における長期的で法的拘束力のある安全保障の形成について共感し、支持する」とロシア大統領府が発表したように、中国はロシアと共にあることを全世界に示す。
このあとロシアがウクライナへ攻め込む前、2つの州の独立を認めて実質的な支配下に置くと、強烈な不安を覚えた人たちが中国首脳部にいたという。
日本経済新聞(2022年3月2日)
ロシア大統領のプーチンがウクライナ東部2州で親ロシア派武装勢力が実効支配する地域の独立を承認し、侵攻に踏み切った頃、中国内では予想をはるかに超える心配の声が出た。
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世界の多くの国と同じように、中国も今回のロシアの動きを「侵略」と捉えるのか?
会見でそう質問された中国外務省の報道官は、「中国と西洋人は違う。中国人は結論を急がない」と明言を避ける。
中国は推すことはないけれど、一貫してロシアを非難していない。
国連安全保障理事会でウクライナ侵攻を非難し、ロシア軍の撤退を求める決議案が採択されると、中国は棄権して、ロシアが拒否権を使ったことで否決された。
この直後、国連総会で行われた即時撤退を求める決議でも、中国は棄権して立場をハッキリさせなかった。
国際社会がアウェーになっていく中で、中国としてはどこまでロシアと仲良くしていくべきか、「我々(中国の方針)はこのままで大丈夫なのか」とその距離感に悩んでいるらしい。
まあまさか、ここまで世界が「反ロシア」になるとは思っていなかっただろうし。
そして、これはとても中国人的な発想だな思ったのは、ウクライナ東部を独立させたロシアを「無理に『偽満州国』をつくったかつての日本と同じ」って考えたことだ。
これに日本のネットの声は?
・歴史ってそういうもんだろ
・どうせなら呉から荊州を奪った関羽と同じだぐらいのことを言ってほしい
・アメリカ先住民から土地と国を奪った
ヨーロッパの国々
・中国がロシア裏切る
・日本を絡めないと議論も出来ないんだな
満州国時代に、東京の上野駅をモデルにしてつくられた大連駅
上野駅とホントにソックリ
「ぎょうざの満洲」が象徴するように日本にとって満州は餃子のふるさとで、この言葉は今でもまったく問題なく使われているが、中国ではあまりよろしくない言葉らしい。
大連を旅行したとき現地の日本語ガイドから、「マンシュウは日本の言い方で、中国では東北部と言います。でもって、かつてあった満洲国は『偽満州国』と呼びます。」という話を聞いた。
あの時代の満州国は日本の強い影響下にあったしょせんは傀儡国家だから、本当の独立国ではなくて『ニセモノの国』という見方が中国では一般的だ。
当時は満州国皇帝の溥儀よりも、日本の南満州鉄道総裁のほうが強い影響力や決定権を持っていて、実際に国を動かしていたのは、日本政府の意を受けた満鉄総裁だったという。
でも名目上は「独立国」だ。
だから中国人の視点からだと、ロシアが独立を認めたウクライナ2州と満州国が重なって見える。
とはいえ日本による満州国建国は、NATOの拡大を警戒したいまのロシアの逆だ。
外満洲のニコラエフスクで、ソ連の赤軍による日本人虐殺事件(尼港事件)が起きたりして、共産主義が満州で拡大していくことを恐れ、日本は満州を中国(中華民国)から切り離して独立させて影響下に置いたのだ。
尼港事件について詳しいことはこの記事を。
「王道楽土」をスローガンとする満州国建国の経緯は複雑だから、詳細は 満洲国 で確認されたし。
ちなみに満州国の建国が宣言されたのは、1932年のきのう3月2日だった。
背景や目的は別でも満州国とウクライナ2州は、本当の主権は外国にあるという点で似ている。
これまで中国が『ニセの国』と批判してきたような状態を、中国政府が認めていいのか?
これだけでも迷うところだし、このままロシアを支え続けていって、国際的に孤立することも中国としては絶対に避けたいはずだ。
満州国をめぐって国際社会から締め出された、戦前の日本のように。
当時の日本は「満洲国の承認」を求めるも、国連で認められなかった。
1932年に国際連盟理事会で、13:1で満州国からの日本の撤兵が勧告され、33年にも国際連盟総会で、リットン報告書に基づく対日勧告案が42:1で採択された。
激怒した日本は国連を脱退し、世界の中で孤立していく。
その後、太平洋戦争を始めて原子爆弾を落とされたことは学校で習ったとおり。
中国はこの日本の闇歴史を当然知っているだろうし、いまの全世的なロシアへの制裁も見ているから、中国政府の悩みは深そうだ。
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