【日本人の善意】平和を願う!→千羽鶴をウクライナ大使館へ

 

ロシア(プーチン大統領)によるウクライナへの軍事侵攻によって、多くの人が家を破壊され住みかを失い、ウクラナイの発表では子どもを含め2千人以上の市民が犠牲になった。
この戦争は現在進行形で、被害がこれからどれだけ拡大するかまったく想像できない。

 

 

いま世界中で反戦活動が起きているように、日本でもこう言って立ち上がる人がいた。

「私たちの声で今すぐ戦いを止めることはできないが、戦争は絶対に認めないと市民が意思表示をしていかなければ」

「日本も世界とつながって成り立っている。声を上げなければ何も変わらない」

「義を見てせざるは勇無きなり」、「やらない善よりやる偽善」といった言葉があるように、口で言うだけではなくて自分の意思を行動で示すことが大事。なんだけど、このやり方はどうなのか?

岐阜新聞(2022年3月6日)

参加者でウクライナの国旗カラーの折り紙で鶴も折った。千羽鶴を完成させて在日ウクライナ大使館に送る予定という。

ウクライナに平和を 有志が岐阜市で反戦訴え、ネットで賛同広げる

 

有志で千羽鶴を作って、ウクライナ大使館へ送り届けるという。
でもネットを見ると、戦争に反対してウクライナを支持することには賛成でも、この発想には違和感を感じる人が続出中だ。

・止めれ。
頼むから止めてくれ。
・これが効くのは
捨てきれない日本人だけなw
・病院に見舞いに行くんじゃないんだからさ
・日本人さんwwwwww
・作ってる時間に日雇いバイトしてその金寄付しろ

平和を象徴する千羽鶴なら、むしろ届け先はロシア大使館では?と思ったり、ぶっちゃけウクライナ大使館としては、千円札やドル紙幣で折り鶴を作ってくれた方が嬉しいのでは?と思ったり。

 

平和を願ったり困っている人を励ますために、千羽鶴を作って送る発想は昔から日本人にあって、この善意が時と場合によっては賛否に分かれる。
一切の悪意がなくて善良な意思の固まりだから、そのぶんタチが悪く、扱いに困ることがあるのだ。

東日本大震災や熊本地震以降、たとえ善意であっても処分するしかない千羽鶴を送られることは避難所での負担になるという指摘が被災経験者から行われるようになった。

被災地への送付に対する批判

 

あるテレビ番組で発表された「被災地いらなかった物リスト」には千羽鶴のほか、寄せ書き、生鮮食品、辛いラーメン、明らかな古着といった物があった。
善意で始めたことが不幸な結果で終わることもある。
たとえそんな美しい気持ちでされた行為でも、それによって思わぬ悪い結果を招くことを「地獄への道は善意で舗装されている」という。

 

困っている人に千羽鶴を作って送ろう!
日本人は善意にあふれていて昔からそんな発想があるから、いろんな機会に具体的な行動となってあらわれる。
共通する文化や価値観を持っている日本人同士でも賛否が分かるのに、今回と同じように外国人に対してこれを行うと、物議をかもすというか、ボクが見た限りでは批判の方が上回る。

2010年にハイチで、約31万6000人が亡くなるという空前絶後の大地震が発生した。
「家族を失い悲しむ人々に鶴を送ることで『貴方は1人ではない』との思い」を届けて、被害を受けた人たちに元気になってもらうために、「ハイチ大の被災者に激励の千羽鶴を贈ろう!」運動がSNSで盛り上がった。
その運動に参加した人たちは地震被害者のために心を込めて千羽鶴を折り、復興と回復への願いを込めて、羽の部分にローマ字で自分たちの名前を書いたという。
動機は基本的に今回と同じで、日本にいる自分たちにもできることを考えてのこと。

ただ、ハイチで援助活動中だった日本人は、医薬品などを運ぶ飛行機のスペースが千羽鶴に取られる心配があったり、たとえハイチの人たちが千羽鶴を受け取ったとしても、調理用の燃料として燃やされるだけだろうと話してこの運動を「足手まとい」とバッサリ切る。

「人種や宗教は違っても、人類はみんな同じ」という部分は確かにあるけど、外国人が日本人と同じ価値観や感覚を持っているワケがない。
だから自分のしたいことではなく、相手がしてほしいことをすることが大事。
千羽鶴を作って送るのなら、まずはその前に、相手がそれを必要としているか確認する必要があるのだが、岐阜新聞の報道ではウクライナ大使館に聞いた気配はない。
受け取って大使館側が喜ぶのならそれは善行になるし、そうでなかったら、善意の押し付けというありがた迷惑でしかない。
「現地へ送ってください」なんて気楽なメッセージがあったらオソロシイ。

 

もちろん千羽鶴が外国人に有効だった例はある。

2018年にイギリス・プレミアリーグの名門リバプールで活躍していたサッカー選手が、ひざを負傷してリハビリ生活を送っていたときに、日本のファンが作った千羽鶴をもらって大感激した。

日本の文化と情緒「千羽鶴」に、外国のスター選手も感激

こういう微笑ましい事例はある。
でも、基本的には相手の意思を確認することが前提で、自分の善意を最優先することはやめたほうがいい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。